【1】書式概要
「キャバクラ営業における迷惑行為防止・補償示談書(保証人なし版)」は、キャバクラやホストクラブなどの接客を伴う飲食店において、客による迷惑行為やハラスメント行為が発生した際に、被害者と加害者の間で円満な解決を図るための法的文書です。
この示談書テンプレートは、実際の接客業の現場で起こりうるトラブルに対応するために作成されており、不適切な接触、SNSを通じた執拗な連絡、ストーカー行為、プライバシー侵害など、様々なケースに対処できるよう設計されています。
本テンプレートは主に被害に遭った従業員(キャスト)を保護する目的で使用され、加害者に対して具体的な行動制限を課し、金銭的な賠償を定めることで、将来的な被害の再発を防止します。法的に有効な形式で作成されているため、万が一加害者が約束を破った場合は、警察や裁判所への申立ての根拠として利用することができます。
また、保証人を立てる必要がない「保証人なし版」となっているため、迅速な解決が可能です。店舗管理者やオーナーの方は、このテンプレートを常備しておくことで、従業員の安全を守り、トラブル発生時の対応を効率化することができるでしょう。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(事実の確認)
第3条(謝罪)
第4条(接触の禁止)
第5条(接近禁止)
第6条(連絡の禁止)
第7条(第三者を通じた接触の禁止)
第8条(プライバシー保護)
第9条(肖像等の取扱い)
第10条(示談金)
第11条(損害賠償)
第12条(誓約事項の継続期間)
第13条(違約条項)
第14条(救済措置)
第15条(刑事告訴等について)
第16条(秘密保持)
第17条(通知)
第18条(完全合意)
第19条(管轄裁判所)
【2】逐条解説
第1条(目的)
本条項は示談書の目的を明確に定めています。甲(加害者)が乙(被害者)に対して行った迷惑行為について、両者間の紛争を平和的に解決することを意図しています。この条項により、示談書全体の趣旨と方向性が示されます。
第2条(事実の確認)
本条項では、加害者が行った具体的な迷惑行為の事実関係を確認します。日時、場所、行為の内容を明記することで、何について示談するのかを明確にします。また、加害者がその行為を認め、反省していることを文書化することで、被害者の精神的救済も図ります。
第3条(謝罪)
加害者からの明確な謝罪の意思表示を文書化する条項です。単なる謝罪にとどまらず、行為の社会的不適切性と人格権侵害の認識を明記することで、謝罪の真摯さを担保します。
第4条(接触の禁止)
将来的な被害防止のため、加害者が被害者に対して行ってはならない行為を具体的に列挙しています。暴言や暴力といった直接的な行為から、ストーカー行為など間接的な行為まで広範囲に禁止することで、被害者の安全を確保します。
第5条(接近禁止)
物理的な距離による保護を規定する条項です。被害者の自宅、勤務先、日常的に利用する施設への接近を具体的な距離(半径200メートルや100メートル)で制限し、被害者の行動の自由と安全を確保します。
第6条(連絡の禁止)
あらゆる通信手段を用いた被害者への連絡を禁止する条項です。電話、メール、郵便物、SNSなど、現代的な通信手段を網羅的に列挙することで、どのような方法であっても被害者への連絡が禁止されることを明確にしています。
第7条(第三者を通じた接触の禁止)
加害者が第三者を介して間接的に被害者に接触することを禁止する条項です。第三者への連絡依頼や動向調査の依頼など、迂回的な接触方法も具体的に禁止することで、抜け道をふさぎます。
第8条(プライバシー保護)
被害者のプライバシー情報の保護を規定します。個人情報、私生活情報、職業情報、事件に関する情報など、あらゆるプライバシー情報の第三者への開示・漏洩を禁止することで、被害者のプライバシー権を保護します。
第9条(肖像等の取扱い)
被害者の肖像や個人情報のインターネット公開を禁止し、加害者が保有している関連資料の破棄と報告を義務付ける条項です。デジタル社会における被害者保護として重要な規定となっています。
第10条(示談金)
加害者が被害者に対して支払うべき金銭的賠償を定める条項です。金額、支払期限、支払方法を具体的に定めることで、確実な履行を担保します。また、振込手数料は加害者負担とすることで、被害者の負担を軽減しています。
第11条(損害賠償)
被害者が被った具体的な実害(治療費、休業損害、その他の損害)を明確にし、それが示談金に含まれることを定める条項です。実害の内訳を明記することで、示談金の根拠を明確にします。
第12条(誓約事項の継続期間)
行為制限などの誓約事項の有効期間を5年間と定め、その後も被害者の平穏な生活への配慮を求める条項です。明確な期間設定により、いつまで制限が続くのかを明確にします。
第13条(違約条項)
加害者が誓約に違反した場合の違約金支払義務を定める条項です。これにより抑止効果を高めると同時に、違約金支払いが被害者の他の法的措置を妨げないことを明記し、被害者の権利を保全しています。
第14条(救済措置)
加害者が示談書に違反した場合に被害者が取りうる法的措置を列挙する条項です。警察への被害届、刑事告訴、民事訴訟など具体的な手段を明記することで、違反時の対応を明確にします。
第15条(刑事告訴等について)
被害者が加害者に対する刑事告訴等を控える条件として、示談書の誠実な履行を挙げる条項です。加害者に示談書遵守のインセンティブを与えると同時に、違反時の法的措置の可能性を明示します。
第16条(秘密保持)
示談内容の秘密保持義務を両当事者に課す条項です。プライバシー保護と再発防止のために、示談の事実と内容を第三者に開示しないことを合意し、その義務が終了後も継続することを明記しています。
第17条(通知)
示談書に関する通知方法を定める条項です。書面による通知を原則とし、住所変更時の通知義務も定めることで、確実な連絡手段を確保します。
第18条(完全合意)
本示談書が両当事者間の完全な合意を構成し、以前の合意に優先することを定める条項です。これにより法的安定性を確保し、過去の約束や合意との矛盾を防ぎます。
第19条(管轄裁判所)
紛争発生時の管轄裁判所を定める条項です。特定の地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることで、紛争解決の場を予め明確にします。
この示談書は、キャバクラなどの接客業における迷惑行為に特化した内容となっており、被害者保護のために必要な事項を網羅的に規定しています。保証人なし版であるため、シンプルな当事者構成で迅速に合意形成ができる利点があります。