【1】書式概要
お子さんが不登校や登校しぶりの状態にあるとき、保護者から学校に対して「こういった配慮をしてほしい」という希望を書面で伝えるための申入書テンプレートです。口頭でのお願いだけだと、言った・言わないのトラブルになったり、担任の先生が異動した際に引き継ぎがうまくいかなかったりすることがあります。この書式を使えば、保護者の希望を書面という形で残せるので、学校側との認識のずれを防ぎ、継続的な対応につなげることができます。
書式の中身としては、まず対象となるお子さんの基本情報(学年・組・担任名・欠席の開始時期など)を記入する欄があります。次に、別室登校・保健室登校・時短登校・特定の授業のみの参加・付き添い登校・教育支援センターへの通所など、希望する登校のかたちをチェックボックスで選べるようになっています。さらに、学習面の配慮(プリントの提供、テストの別室受験、成績評価の相談など)、学校生活面の配慮(登下校時間の調整、居場所の確保、給食の対応など)、心理面の配慮(スクールカウンセラーとの面談、クラスメートへの説明方法の相談など)、そして連絡・情報共有の方法まで、幅広い項目を網羅しています。
お子さんの不登校がはじまったばかりの時期、少しずつ学校に行けるようになってきた段階、あるいは進級・クラス替えなどの節目に学校と改めて話し合いたい場面などで活用いただけます。Word形式ですので、お手持ちのパソコンで自由に編集でき、お子さんの状況に合わせて不要な項目を削除したり、独自の要望を追記したりすることも簡単です。学校の受領欄も設けてありますので、提出後の記録としても機能します。
【2】条文タイトル
この文書は条文形式ではなく、番号付き項目の構成です。以下のとおりです。
- 第1項(対象児童・生徒の情報)
- 第2項(希望する登校形態)
- 第3項(配慮を希望する事項)
- 3−1(学習面の配慮)
- 3−2(学校生活面の配慮)
- 3−3(心理面・対人面の配慮)
- 3−4(連絡・情報共有の方法)
- 第4項(現在の状況および補足事項)
- 第5項(配慮の開始希望時期)
- 第6項(面談の希望)
【3】逐条解説
第1項 対象児童・生徒の情報
この項目では、配慮をお願いしたいお子さんの基本的な情報を記入します。氏名や学年・組に加え、担任の先生の名前、欠席がいつ頃から始まったのか、現在どの程度学校に行けているのかを書くようになっています。 たとえば「昨年の秋頃から徐々に欠席が増え、現在は週に1日だけ保健室に顔を出している」といった書き方が考えられます。学校側がお子さんの現状を正確に把握するための出発点になる項目ですので、できるだけ具体的に記入するのがポイントです。担任が変わった直後などは特に、この情報がしっかり書かれていると学校側の対応がスムーズになります。
第2項 希望する登校形態
お子さんにどういった形で学校に通ってほしいと考えているか、保護者の希望をチェックボックスで選ぶ欄です。別室登校、保健室登校、時短登校、特定の授業だけの参加、遅刻しての登校、早退前提の登校、保護者が付き添っての登校、教育支援センター(適応指導教室)への通所など、かなり幅広い選択肢が用意されています。 実際の場面では、「まずは週2回、3時間目から保健室で過ごすところから始めたい」とか「図工と体育だけ教室で受けたい」といった希望が多いです。複数にチェックを入れることもできますし、選択肢にない場合は「その他」の欄に自由に記入できます。お子さん本人の気持ちも聞きながら選ぶと、学校との話し合いがより実りあるものになるでしょう。
第3項−1 学習面の配慮
学習の遅れは、不登校のお子さんや保護者にとって大きな不安材料です。この項目では、欠席中に学習プリントを提供してもらえるか、授業の進み具合を定期的に知らせてもらえるか、テストを別室で受けられるか、提出物の期限を柔軟にしてもらえるか、成績のつけ方について相談できるか、そしてICTを使った自宅学習を出席扱いにしてもらえるかどうか——こうした項目を確認できます。 文部科学省は2019年の通知で、ICTを活用した自宅学習を一定の条件のもと出席扱いにできるとしています。こうした制度を知らない先生もいらっしゃいますので、書面で希望を出すことで学校側に検討を促すきっかけにもなります。
第3項−2 学校生活面の配慮
教室に入ること以外にも、学校にはお子さんにとってハードルになりやすい場面がたくさんあります。たとえば、登下校の時間帯にほかの生徒と顔を合わせるのがつらいというケースは少なくありません。この項目では、登下校の時間帯をずらす配慮、使う教室や居場所の指定、対応してくれる先生の固定、給食の提供・停止の切り替え、行事や校外活動への参加方法、靴箱やロッカーの場所の変更などについて希望を出せるようになっています。 「昇降口で同級生と会うのがどうしてもつらいので、職員玄関から入りたい」「給食は食べられる日と食べられない日があるので、当日の朝に連絡する形にしてほしい」など、細かいことでも書面に残しておくと、先生ごとの対応のばらつきを防げます。
第3項−3 心理面・対人面の配慮
不登校の背景には、友人関係のトラブルやクラスの雰囲気への不安、先生との関係など、心理的・対人的な要因が絡んでいることが多いです。この項目では、スクールカウンセラーとの定期面談、登校を再開したときにクラスメートにどう説明するかの事前相談、気持ちが苦しくなったときに逃げ込める場所(クールダウンスペース)の確保、特定の生徒との接触を避ける配慮、先生からの声かけの仕方についての相談といった希望を伝えることができます。 たとえば、「久しぶりに教室に行ったときに先生が大げさに『おかえり!』と言われると逆にプレッシャーになる」というお子さんもいれば、「何事もなかったようにさらっと迎えてもらえるとうれしい」というお子さんもいます。こうした繊細な部分こそ、書面であらかじめ共有しておく意味があります。
第3項−4 連絡・情報共有の方法
学校と保護者のあいだの連絡方法や頻度について希望を伝える項目です。定期面談の頻度、連絡手段(電話・メール・連絡帳など)の指定、毎朝の出欠連絡のやり方の変更、お子さん本人への連絡や声かけの頻度、そして医療機関や外部の支援機関と情報を共有することへの同意を確認できます。 「毎朝電話で欠席連絡をするのが精神的に負担になっている」という保護者の声はよく聞きます。メールやアプリでの連絡に切り替えてもらうだけでも、日々のストレスがかなり軽減されることがあります。また、お子さんが心療内科などに通っている場合は、医師の見解を学校と共有することで、より適切な対応につなげられます。
第4項 現在の状況および補足事項
不登校に至った経緯、いまのお子さんの様子、病院に通っているかどうか、お子さん自身がどう思っているかなどを自由に記述する欄です。チェックボックスの項目だけでは伝えきれない背景事情や、保護者としての思いをここに書くことができます。 書き方に決まりはありませんが、「いつ頃からどのような変化があったか」「きっかけとして思い当たること」「本人は学校についてどう話しているか」「主治医からはどのような助言があるか」などを整理して書くと、学校側も状況を理解しやすくなります。
第5項 配慮の開始希望時期
配慮をいつから始めてほしいかの希望を伝える欄です。具体的な日付を指定するか、「できるだけ早い時期に」「学校と相談して決めたい」の三つから選べるようになっています。 新学期のタイミングに合わせたい場合は日付指定が便利ですし、まだお子さんの気持ちが定まっていない段階であれば「学校とご相談の上決定」を選んでおくのがよいでしょう。柔軟に選べる設計になっているので、状況に応じて使い分けてください。
第6項 面談の希望
申入書を提出したあと、どのような形で学校とやりとりしたいかを選ぶ欄です。対面での面談を希望する場合は希望日時を二つまで記入でき、書面での回答を求めることも、電話での相談を選ぶこともできます。 書面だけのやりとりだと細かいニュアンスが伝わりにくいので、可能であれば一度は面談の場を設けることをおすすめします。ただ、仕事の都合などで学校に出向くのが難しい場合は電話でも十分です。連絡可能な時間帯を書いておけば、学校側も配慮してくれるはずです。
【4】FAQ
Q1. この申入書に法的な拘束力はありますか?
この書式はあくまで保護者から学校への「お願い」であり、法的な強制力はありません。ただし、書面で正式に要望を伝えることで、口頭のお願いよりも学校側に真剣に受け止めてもらいやすくなります。学校の受領欄に記入してもらえば、いつ・誰が受け取ったかの記録も残ります。
Q2. 学校に提出するタイミングはいつがよいですか?
大きく分けて三つの場面が考えられます。一つは不登校が始まった初期の段階、二つ目は少しずつ登校を再開しようとする段階、三つ目は進級・クラス替え・担任交代などの節目の時期です。いずれも、学校との面談の前に送付しておくと、話し合いの土台になります。
Q3. 担任の先生に直接渡せばよいですか?
担任の先生経由でも問題ありませんが、校長先生宛にしておくと、学校として組織的に対応してもらいやすくなります。この書式では宛先が校長先生になっていますので、担任を通じて校長先生に届けてもらうか、副校長(教頭)先生に手渡すとよいでしょう。
Q4. 全部の項目にチェックを入れる必要がありますか?
いいえ、必要な項目だけにチェックを入れてください。お子さんの状況や段階によって必要な配慮は異なりますので、すべてに記入する必要はありません。Word形式で編集できますので、不要な項目は削除してからお使いいただくこともできます。
Q5. 学校が対応してくれない場合はどうしたらよいですか?
まずは面談で具体的にどの部分が難しいのかを確認してください。学校側にも人員や施設の制約がありますので、代替案を一緒に考える姿勢が大切です。それでも対応が不十分だと感じる場合は、教育委員会の相談窓口や、教育支援センターに相談することも一つの方法です。
Q6. 私立学校でも使えますか?
はい、使えます。公立・私立を問わず、保護者から学校への配慮依頼として活用できます。ただし、私立学校は独自の対応方針を持っていることがあるため、学校の規定やルールを事前に確認しておくとスムーズです。
Q7. 医師の診断書も一緒に提出したほうがよいですか?
必須ではありませんが、お子さんが心療内科や小児科に通院している場合は、医師の意見書や診断書を添えると、学校側がより具体的に配慮内容を検討しやすくなります。特に、ICTを活用した自宅学習の出席扱いを希望する場合などは、医師の所見が後押しになることがあります。
Q8. 一度提出した後に内容を変更できますか?
もちろんできます。書式の末尾にも「現時点での希望であり、本人の状態や学校側のご事情に応じて柔軟に相談したい」と記載されています。状況が変わったら、改めて修正版を提出するか、面談で変更点を伝えてください。
【5】活用アドバイス
① 提出前にお子さん本人の気持ちを確認する
保護者の希望だけで書いてしまうと、お子さんの実際の気持ちとズレが生じることがあります。「別室登校なら行けそう?」「保健室なら安心?」など、本人に選択肢を見せながら一緒に考えると、お子さん自身が「自分で決めた」という感覚を持てて、登校へのモチベーションにつながることがあります。
② コピーを手元に残しておく
提出する前に必ずコピーを取っておきましょう。後日の面談時に「あのとき何を書いたか」を確認できますし、状況が変わって内容を更新する際の下書きにもなります。デジタルデータはWord形式のまま保存しておくと便利です。
③ 面談とセットで使う
書面だけで済ませるよりも、面談の場を設けたうえで「事前にお渡しした申入書をもとにお話しさせてください」と切り出すのが効果的です。先生側も事前に目を通しておけるので、面談の時間を有効に使えます。
④ 段階に応じて更新する
不登校の回復は一直線ではなく、進んだり戻ったりするのが普通です。最初は「保健室登校・週2回」で始めて、慣れてきたら「別室で一部の授業参加」に変えていくなど、段階ごとに申入書の内容を見直して、学校と共有し直すとよいでしょう。
⑤ 学校の受領欄を活用する
書式の末尾に学校記入欄があります。提出時に「受領日と受領者名を記入してください」とお願いしておくと、きちんと受理されたことの証拠になります。万が一のトラブル時にも、書面のやりとりがあったことを証明できます。
⑥ 不要な項目は思い切って削除する
項目が多いので、すべてを残すと学校側も「どこが重要なのかわからない」となりかねません。お子さんの状況に関係ない項目は削除して、本当に伝えたいポイントを絞ったほうが、学校側にも伝わりやすくなります。
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