【1】書式概要
この契約書雛型は、自社ブランド製品の製造を他社に委託するOEM取引の際に必要となる契約書です。委託者(発注側)にとって有利な条件で設計されており、製品の品質保証や知的財産保護、秘密保持などの重要事項をしっかりと規定しています。
本契約書は、特に自社ブランドで製品展開を行いたい企業が、製造設備を持たない場合や、コスト削減のために生産を外部委託する場合に適しています。改正民法に対応しているため、契約不適合責任についても現行法に沿った規定となっています。
製造物責任や競合禁止条項、商標の取り扱いについても明確に定められているため、委託者の権利が守られる内容となっています。また、個別発注の方法や納品・検査・支払いのプロセスも詳細に規定されており、取引の透明性と安定性を確保できます。
発注数量の非保証条項があるため、市場の需要変動に応じて柔軟に発注数を調整できる点も、委託者にとって大きなメリットです。紛争解決の際の管轄裁判所を委託者の所在地としている点も、委託者有利な特徴の一つです。
OEM取引を検討している企業の法務担当者や経営者の方々に、安心してご利用いただける内容となっています。必要に応じて各社の取引実態に合わせて修正することで、より実用的な契約書として活用できるでしょう。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(仕様)
第3条(個別契約)
第4条(商標)
第5条(納入)
第6条(受入検査)
第7条(保証)
第8条(所有権及び危険負担)
第9条(支払方法)
第10条(取引非保証)
第11条(競合禁止)
第12条(秘密保持)
第13条(製造物責任)
第14条(契約解除)
第15条(有効期間)
第16条(管轄)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条項は契約の基本的な目的を定めています。甲(委託者)が販売する製品の製造を乙(受託者)に委託し、両者で事前に協議して作成する仕様に従って製品を製造することを明確にしています。また、甲が完成した製品を乙から買い取る義務を負うことも規定しています。
第2条(仕様)
製品の仕様決定プロセスを規定しています。甲乙協議の上で甲が仕様書を作成して乙に交付するという流れを定めています。また、仕様変更の必要が生じた場合のプロセスも明確にしており、甲が乙と協議した上で仕様変更ができることを規定しています。
第3条(個別契約)
具体的な取引条件を定める個別契約の成立方法について規定しています。甲が注文書を発行し、乙が注文請書で承諾することで個別契約が成立する流れを定めています。また、乙の回答期限(5日以内)と、期限内に返答がない場合は承諾したとみなす規定も含まれています。これにより、円滑な取引の進行を確保しています。
第4条(商標)
甲の商標に関する取り扱いを規定しています。乙は甲の指示に従って商標を表示する義務があり、甲の承諾なく商標を本契約目的以外に使用することや、甲の商標を付した製品を第三者に販売することを禁止しています。これは甲のブランド保護のための重要な条項です。
第5条(納入)
製品の納入に関する義務を定めています。乙は甲の指定する期日・場所に製品を納入する義務があり、それができない場合は直ちに甲に通知し、指示に従うとともに損害賠償責任を負うことを規定しています。これにより、納期遵守の重要性を明確にしています。
第6条(受入検査)
納入された製品の検査方法と合否判定のプロセスを規定しています。甲は納入後直ちに検査を行い、5日以内に結果を乙に通知することになっています。検査合格をもって引渡完了となり、5日以内に通知がない場合は合格とみなされます。不合格の場合の対応についても明確に定めています。
第7条(保証)
製品の品質保証について規定しています。乙は製品が仕様に完全に適合し、契約不適合がないことを保証します。検査後1年以内に契約不適合が発見された場合の対応と、損害賠償責任についても明確に定めています。改正民法に対応した「契約不適合」の用語が使用されている点も特徴です。
第8条(所有権及び危険負担)
製品の所有権と危険負担の移転時期を明確にしています。検査合格時点で乙から甲に移転することを規定しており、責任の所在を明確にしています。
第9条(支払方法)
代金の支払条件を規定しています。毎月末日までに検査合格した製品の代金を、翌月の指定日までに乙の銀行口座に振り込むことと、振込手数料は甲負担とすることを定めています。
第10条(取引非保証)
甲は乙に対して最低発注数を保証しないことを明記しています。これは市場状況に応じて柔軟に発注量を調整できるようにするための、甲に有利な条項です。
第11条(競合禁止)
乙が甲以外の第三者に同一または類似の製品を販売することを禁止する条項です。ただし、甲の事前の書面による承諾がある場合は例外としています。これにより甲の市場における競争上の優位性を保護しています。
第12条(秘密保持)
相互の秘密情報保護について規定しています。取引を通じて知り得た営業上・技術上の秘密情報の漏洩禁止や、契約履行以外の目的での使用禁止を定めています。契約終了後も2年間有効であり、義務の例外事由も明確に列挙されています。
第13条(製造物責任)
製品の欠陥による第三者からの損害賠償請求に対する責任分担を規定しています。基本的に乙の責任と負担で解決することを定めていますが、甲の責めに帰すべき事由がある場合は例外としています。
第14条(契約解除)
契約解除事由を詳細に列挙しています。契約義務違反、営業停止、破産等の法的手続開始、強制執行、支払停止、解散・合併等の事由が生じた場合に、相手方は通知催告なしに契約解除できることを規定しています。
第15条(有効期間)
契約の有効期間と自動更新について規定しています。期間満了の1か月前までに終了通知がない場合は1年間自動延長される仕組みとなっています。
第16条(管轄)
紛争発生時の管轄裁判所を規定しています。甲の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることを定めており、これも甲に有利な条項となっています。