【1】書式概要
この「金銭消費貸借及び不動産譲渡担保設定に関する契約書」は、金銭の貸し借りと不動産による担保設定を同時に行う際に必須となる実務的な契約書雛型です。民法改正に完全対応しており、金融機関や事業会社による融資取引の際に、債権の確実な回収を図りながら、債務者の事業継続を支援する場面で活用できます。
本契約書の特徴として、貸付条件(元金、利息、返済期限)が明確に規定され、期限の利益喪失事由も詳細に定められています。また、譲渡担保権の設定から実行までの手順が具体的に記載されており、債権者は債務不履行時に迅速に担保不動産の処分が可能です。さらに、債務完済時の所有権復帰についても明確な手続きを定めているため、債務者の権利も適切に保護されます。
特に中小企業の運転資金調達、設備投資資金、事業承継に伴う資金需要等、事業資金の調達が必要な場面で幅広く活用できる契約書として、金融実務家、企業法務担当者、士業の方々から高い評価を得ています。不動産を担保とした私的融資を検討される方には、法的リスクを最小限に抑えられる必携の書式となっています。
〔条文タイトル〕
第1条(金銭消費貸借契約)
第2条(譲渡担保契約)
第3条(譲渡担保権の実行)
第4条(使用権)
第5条(付保)
第6条(誠実義務)
第7条(債務の完済)
第8条(管轄)
【2】逐条解説
第1条(金銭消費貸借契約)
お金を貸す際の基本的な取り決めです。いくら貸すのか、いつまでに返すのか、利息はどれくらいか、毎月の返済額はいくらか、返済が遅れた場合の損害金などを定めています。また、契約違反や倒産、差押えなどの問題が起きた場合には、残金を直ちに全額返済しなければならないという内容も含まれています。
第2条(譲渡担保契約)
借金を確実に返してもらうために、借主の不動産を貸主に譲渡する取り決めです。土地や建物の詳細を記載し、所有権移転登記をいつまでに行うかを定めています。また、借金を完済した際に不動産が借主に戻るよう、あらかじめ仮登記をしておくことも規定しています。
第3条(譲渡担保権の実行)
借主が返済できなくなった場合の手続きを定めています。この場合、不動産は完全に貸主のものとなり、貸主はその不動産を売却して借金の回収に充てることができます。売却後に余剰金があれば借主に返還し、不足があれば追加で支払いを求められます。
第4条(使用権)
借金の担保として不動産を譲渡しても、借主は担保実行までその不動産を無料で使い続けることができます。ただし、きちんと管理し、固定資産税などの費用を負担する必要があります。
第5条(付保)
担保となる不動産に火災保険などをかけることを義務付けています。保険金が支払われる場合は、その保険金で借金を返済できるようにするための取り決めです。
第6条(誠実義務)
これは表向きの所有権移転であり、実際には担保目的であることをお互いに理解し、貸主は勝手に不動産を処分しないこと、双方が契約を守ることを約束する条文です。
第7条(債務の完済)
借金を全額返済したら、不動産の所有権は借主に戻ります。仮登記を本登記に切り替える手続きを貸主が行うことを定めています。
第8条(管轄)
万が一トラブルになった場合、どこの裁判所で争うかを事前に決めておく条文です。