【1】書式概要
この「軒先シェア(土地使用)賃貸借契約書」は、キッチンカーや簡易店舗などの移動型ビジネスを展開する方と土地所有者の間で交わす賃貸借契約の雛型です。改正民法に対応済みで、法的に安心してご利用いただける契約書となっています。
この契約書テンプレートは、飲食ビジネス起業家や移動販売を検討している方、また遊休地や空きスペースを有効活用したいと考える土地所有者の方に最適です。近年人気の高まるキッチンカービジネスやポップアップストアなど、短期間・期間限定の商業利用において明確な取り決めを行うことで、トラブルを未然に防ぎ、双方が安心して取引できる環境を整えます。
契約書には賃貸物件の詳細、使用目的、営業日時、契約期間、賃料、敷金、光熱費の負担方法など、必要事項が網羅されています。また禁止事項や原状回復義務、反社会的勢力排除条項など、現代の取引環境に即した条項も盛り込まれています。
実際の使用場面としては、駐車場の一角でキッチンカーを営業したい場合や、空き地を活用して週末マルシェを開催する際、商業施設の敷地内で期間限定ショップを出店する時などが考えられます。土地オーナーにとっては遊休地の活用で新たな収益を生み出せるメリットがあり、出店者にとっては固定店舗より低コストで事業を始められるメリットがあります。
必要な項目に記入するだけで簡単に契約書が完成するため、法律の専門知識がなくても安心してご利用いただけます。移動販売や期間限定店舗の増加に伴い、このような明確な契約関係を結ぶことの重要性は今後ますます高まることでしょう。
〔条文タイトル〕
第1条(賃貸物件)
第2条(賃貸借期間)
第3条(賃料)
第4条(敷金)
第5条(光熱費等)
第6条(遅延損害金)
第7条(使用上の制限)
第8条(禁止事項)
第9条(維持管理)
第10条(修繕)
第11条(損害賠償)
第12条(免責事項)
第13条(反社会的勢力の排除)
第14条(契約解除)
第15条(原状回復)
第16条(協議事項)
【2】逐条解説
第1条(賃貸物件)
この条項では契約の基本となる賃貸物件の詳細を明確にします。所在地、図面で示された使用区画の面積、キッチンカーや簡易店舗などの具体的な使用目的、そして営業可能な曜日と時間帯を明記します。これにより、どこの土地のどの部分を、何の目的で、いつ使用できるのかが明確になり、後のトラブル防止につながります。特にキッチンカー営業では、営業時間の制限が近隣トラブルの防止に重要です。
第2条(賃貸借期間)
契約期間と更新方法、中途解約についての取り決めです。一般的に1年契約とすることが多いですが、キッチンカーや期間限定ショップなどの場合は、より短期間の設定も可能です。更新条件と中途解約の際の通知期間(1ヶ月前)を明記することで、双方が先の見通しを立てやすくなります。土地活用と事業計画の両面から適切な期間設定が求められます。
第3条(賃料)
賃料の金額、支払期日、支払方法を定めています。特に振込手数料の負担者や日割計算の方法を明記することで、金銭トラブルを未然に防止します。キッチンカーなど移動販売の場合、週末のみの営業や月に数日のみの利用など、特殊な使用形態に応じた賃料設定も考慮すべきでしょう。天候不良による営業中止の場合の賃料調整についても検討の余地があります。
第4条(敷金)
契約時に預ける敷金の金額と、契約終了時の返還条件を規定します。敷金は未払い賃料や原状回復費用に充当できることを明記し、また敷金返還請求権の譲渡禁止により権利関係の明確化を図っています。移動販売や簡易店舗では、固定店舗に比べて敷金が少額に設定されることが多いですが、土地の状況によっては適切な金額設定が必要です。
第5条(光熱費等)
電気・水道などの使用料金の負担方法と支払い方法を定めています。移動販売車などでは、専用メーターがない場合の料金算出方法を別途協議することが重要です。キッチンカーでは水道・電気の使用量が営業形態によって大きく異なるため、定額制や実費精算など、適切な方法を選ぶことがポイントになります。
第6条(遅延損害金)
賃料等の支払いが遅れた場合の遅延損害金の割合を定めています。法定利率や商取引の一般的な遅延利息率を参考に適切な率を設定します。移動販売や季節営業など収入が不安定になりがちな業態では、支払遅延のリスクも考慮した契約内容が求められます。
第7条(使用上の制限)
契約で定めた目的以外の使用禁止や法令遵守義務、必要な許認可の取得義務、近隣への配慮義務などを規定しています。特にキッチンカーなど飲食業では、食品衛生法上の許可や消防法の規制など、様々な法規制に対応する必要があります。また、騒音や臭い、ゴミ問題など、近隣トラブルの原因となりやすい事項について明確なルールを設けることが重要です。
第8条(禁止事項)
転貸や契約上の地位の譲渡の禁止、無断での工作物設置禁止、迷惑行為や危険物持込みの禁止など、賃借人が行ってはならない行為を明記しています。移動販売の場合、友人や知人に場所を貸すといった安易な転貸が生じやすいため、明確に禁止することが重要です。また、テント設置やデッキ造作など、どこまでの設置物が許可されるかを明確にしておくことでトラブルを防止できます。
第9条(維持管理)
賃借人の管理義務、清掃やゴミ処理の責任、破損・故障時の報告義務を定めています。特に屋外での営業が多いキッチンカーなどでは、天候による影響や衛生管理が重要となるため、具体的な管理方法を決めておくことが望ましいでしょう。使用区画外のゴミ拾いなど、周辺環境への配慮も営業イメージに直結します。
第10条(修繕)
土地の修繕責任と費用負担、修繕工事への協力義務を規定しています。アスファルト舗装の補修や排水設備の修繕など、土地そのものに関する修繕は原則として所有者の責任となりますが、賃借人の過失による場合は例外となることを明記しています。定期的な点検と早期の修繕対応が、安全な営業環境の維持に不可欠です。
第11条(損害賠償)
賃借人の過失による物件や第三者への損害の賠償責任を明記しています。特に移動販売車の火災リスクや、来客による近隣への迷惑行為など、営業に伴う様々なリスクに対する責任の所在を明確にすることが重要です。必要に応じて賠償責任保険への加入を検討することも賢明でしょう。
第12条(免責事項)
盗難や火災などにおける貸主の免責範囲を定めています。屋外での営業が主となるキッチンカーや簡易店舗では、天候リスクや防犯面での課題も多いため、どこまでが自己責任となるかを明確にしておくことが重要です。ただし、土地の瑕疵に起因する事故などは貸主の責任となる可能性もあります。
第13条(反社会的勢力の排除)
契約当事者双方が反社会的勢力でないことの表明保証と、違反した場合の解除権を規定しています。これは現代の契約書では標準的な条項となっており、健全な取引環境の確保に不可欠です。特に公共性の高い場所でのキッチンカー営業などでは、反社会的勢力との関係遮断は社会的信用の維持にも直結します。
第14条(契約解除)
貸主が契約を解除できる条件と、解除時の違約金について定めています。賃料滞納や契約違反、許認可の取消しなどが解除事由となります。特に許認可が必要なキッチンカービジネスなどでは、営業許可の取消しが即座に契約解除につながることを理解しておく必要があります。違約金の設定は、突然の解約による貸主の損害を担保するものです。
第15条(原状回復)
契約終了時の原状回復義務と費用負担、賃借人が原状回復を行わない場合の代行権を規定しています。特に簡易舗装や看板設置など、使用期間中に何らかの造作を行った場合、どこまで原状回復が必要かを事前に明確にしておくことがトラブル防止に有効です。長期使用による通常損耗と、過失による損傷の区別も重要なポイントです。
第16条(協議事項)
契約に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の協議解決条項です。どんなに詳細な契約書でも想定外の事態は発生するものであり、そうした場合に誠意をもって協議する姿勢が重要であることを確認しています。キッチンカーや期間限定店舗など新しいビジネスモデルでは、前例のない問題も生じやすいため、柔軟な対応と相互理解が求められます。