【1】書式概要
こちらの請負契約書テンプレートは、2020年の改正民法に対応した内容で、請負人側に有利な条件設定となっています。建設工事や製造業務、システム開発、デザイン制作など様々な請負業務で使える汎用性の高い書式です。
特に個人事業主やフリーランス、中小企業が依頼者と契約を結ぶ際に、自らの立場を守りながら適正な契約関係を構築するのに役立ちます。契約不適合責任の期間制限や支払条件、解除条件などの重要項目が請負人視点で設計されているため、トラブル時のリスク軽減につながります。
契約書作成の手間を省きながらも、専門的な内容を押さえた実用的な一枚です。実際の使用にあたっては具体的な業務内容や条件に合わせて空欄部分を埋めるだけで簡単に利用できます。
【2】条文タイトル
第1条(本件仕事の完成)
第2条(代金の支払い)
第3条(本件仕事完成前の終了と請負代金の支払い等)
第4条(危険の移転)
第5条(注文者による本契約の解除)
第6条(解除)
第7条(損害賠償)
第8条(契約不適合)
第9条(合意管轄)
第10条(協議)
【3】逐条解説
第1条(本件仕事の完成)
この条項は契約の根幹部分を定めています。請負契約の本質である「仕事の完成」について明記し、具体的な業務内容、納期、報酬額という三要素を規定しています。例えば、ウェブサイト制作を依頼する場合なら、「コーポレートサイトのデザイン及び構築」といった具体的な内容を記載します。納期は明確な日付で、対価も消費税を含めた金額で明記することで、後々のトラブル防止につながります。
第2条(代金の支払い)
報酬の支払方法を定める重要条項です。前払い、中間払い、完成後払いなど、支払いのタイミングや分割方法を細かく規定できます。例えば「着手金として30%、中間成果物確認後30%、完成引渡し時に残金40%」といった形で記載するケースが多いです。フリーランスや小規模事業者にとって資金繰り面で有利な支払条件を設定できる余地があります。
第3条(本件仕事完成前の終了と請負代金の支払い等)
請負人に有利な条項として特に重要です。仕事が完成前に終了した場合でも、進捗度合いに応じた報酬を受け取れる権利を保護しています。さらに前払いを受けていた場合にその返還を不要とする規定も含まれており、請負人の経済的リスクを軽減します。例えば、システム開発が途中で中止になった場合でも、すでに開発した部分の対価を請求できる根拠となります。
第4条(危険の移転)
成果物の引き渡し時点で危険負担が依頼者側に移転することを明確にしています。引き渡し前の天災などによる滅失・毀損リスクについての取り扱いも規定しており、請負人の責任範囲を明確に限定しています。例えば、完成した家具を納品直前に地震で破損した場合の責任関係が明確になります。
第5条(注文者による本契約の解除)
民法の規定に基づき、依頼者側からの任意解除権を認めつつも、その場合には損害賠償が必要である点を明記しています。請負人の既に投下した費用や得べかりし利益の保護を図る条項です。突然のキャンセルにも対応できるセーフティネットとなります。
第6条(解除)
契約を即時解除できる事由を列挙しています。特に反社会的勢力排除条項を詳細に規定している点が特徴です。取引の安全性確保と社会的責任の観点から、近年の契約書では必須となっている条項です。例えば、契約後に相手が暴力団と関係していることが判明した場合に、速やかに関係を断ち切るための根拠となります。
第7条(損害賠償)
契約違反による損害賠償請求権と、その免責事由について定めています。特に不可抗力による免責を認める但書きがあり、予見不可能なリスクからの保護を図っています。例えば、納期遅延が台風による交通機関の麻痺が原因である場合などが該当します。
第8条(契約不適合)
改正民法に対応した条項で、従来の「瑕疵担保責任」に代わる概念です。請負人に有利な点として、通知期間を1年に限定し、かつ依頼者の材料や指図に起因する不適合についての免責規定を設けています。例えば、依頼者が指定した素材の特性による不具合については責任を負わないといった保護が図られています。
第9条(合意管轄)
紛争発生時の管轄裁判所を予め定める条項です。請負人の事務所所在地の裁判所を指定することで、訴訟対応の負担軽減につながります。地理的に近い裁判所で争うことができれば、時間的・経済的コストを抑えられるメリットがあります。
第10条(協議)
契約書に明記されていない事項や解釈の相違が生じた場合の対応方法を定めています。紛争の早期解決・円満解決を目指す姿勢を示す条項です。実務上は、まずはこの条項に基づき話し合いの場を設けることで、裁判等のコストや時間を避けることができます。