【1】書式概要
この契約書テンプレートは、メーカーや販売会社が自社製品のアフターサービス業務を外部の専門会社に委託する際に必要となる契約書です。改正民法に対応した最新の内容となっており、電話相談サービス、修理サービス、交換サービスなど、製品購入後の顧客サポート業務を包括的に外注する際の取り決めを明確にします。
製品を製造・販売する企業は、自社の強みを活かすために開発や営業に注力し、専門性の高いアフターサービス業務は外部委託するケースが増えています。特に電化製品やIT機器などテクニカルサポートが必要な商品を扱う企業にとって、適切なアフターサービス体制の構築は顧客満足度を大きく左右する重要な要素です。
このテンプレートを使用すれば、委託業務の範囲、サービス内容の詳細、報酬体系、秘密保持、個人情報の取り扱いなど、トラブルを未然に防ぐために必要な事項を漏れなく契約書に盛り込むことができます。例えば、修理サービスの完了目標期間や交換サービスの適用条件など、具体的な業務品質に関する合意事項も明確化されています。
また、近年重要性が増している個人情報保護やコンプライアンスに関する条項も充実しており、消費者保護の観点からも安心して利用できる内容となっています。顧客データを扱うアフターサービス業務において、情報漏洩などのリスクに対応するための条項も適切に盛り込まれています。
新たにアフターサービス業務の外部委託を検討している企業はもちろん、既存の委託契約を見直したい場合にも最適なテンプレートです。製品ごとの特性やサービス体制に合わせて必要な箇所を修正するだけで、すぐに実務で使える契約書として活用できます。顧客からの問い合わせ対応から修理・交換に至るまでの一連のサービスフローを一つの契約書でカバーできるため、複数の契約書を作成する手間も省けます。
【2】条文タイトル
第1条(目的)
第2条(定義)
第3条(委託業務)
第4条(業務実施体制)
第5条(電話相談サービス)
第6条(修理サービス)
第7条(交換サービス)
第8条(除外事項)
第9条(報酬)
第10条(再委託の禁止)
第11条(秘密保持)
第12条(個人情報の取り扱い)
第13条(知的財産権)
第14条(損害賠償)
第15条(契約期間)
第16条(解除)
第17条(反社会的勢力の排除)
第18条(契約終了後の措置)
第19条(存続条項)
第20条(協議解決)
第21条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文では契約の基本的な目的を明確に示しています。アフターサービス業務を外部委託することで、専門性を活かした顧客対応と効率的な業務運営を実現することを明記しています。
例えば、カメラメーカーが修理専門会社に修理業務を委託することで、自社はカメラ開発・製造に集中できるといった場合に適用されます。目的条項は契約全体の解釈指針となるため、業務委託の意図を明確に記載することが重要です。
第2条(定義)
契約で使用される重要な用語の定義を明確にしています。「対象製品」や「保証期間」など契約の核となる概念を明確にすることで、後の条項での解釈の齟齬を防ぎます。例えば、「電話相談サービス」の定義を明確にしておくことで、何が業務範囲に含まれるか明らかになります。パソコンメーカーの場合、本体は対象製品に含まれるがマウスやキーボードなどの付属品は含まれないという区別をここで明確にできます。
第3条(委託業務)
委託される業務の具体的な内容を定めています。電話相談、修理、交換という3つの主要サービスを明記し、業務範囲を明確化しています。また、必要な資格や技能を持つ技術者の配置義務を課すことで、サービス品質の確保を図っています。例えば、家電製品の場合、電気工事士の資格を持つ技術者が必要になるケースもあるでしょう。
第4条(業務実施体制)
受託者が整備すべき業務体制について規定しています。実施責任者の選任や報告義務などを定めることで、委託者による適切な監督を可能にします。また、委託者の立入検査権を規定することで、サービス品質の維持・向上を図ることができます。例えば、四半期ごとに実績報告会を開催するといった運用が考えられます。
第5条(電話相談サービス)
電話相談業務の具体的な実施条件を定めています。窓口数、受付時間、人員配置など、サービスレベルに関わる重要な要素を明確化しています。
例えば、スマートフォンメーカーであれば、平日だけでなく土曜日も対応することで、平日に仕事で忙しいユーザーの満足度を高められます。また、電話での解決を優先し、必要に応じて修理・交換へつなげるフローを規定しています。
第6条(修理サービス)
修理業務の実施条件を定めています。サービスセンターの設置場所や修理完了の目標期間などを明記することで、適切なサービスレベルを確保します。部品の在庫管理義務を課すことで、修理の迅速化を図る意図もあります。例えば、デジタルカメラの修理では、レンズやセンサーなど高額部品の適切な在庫確保が必要になります。
第7条(交換サービス)
修理ではなく製品交換が適切なケースとその条件を明確にしています。特に修理不能な場合や修理費用が割高になる場合の対応を規定しています。
例えば、腕時計の修理で部品代だけで新品の70%を超える場合には、顧客の同意を得て交換対応するといった運用が考えられます。交換対応には顧客の同意を得ることも明記されており、消費者保護の観点も考慮されています。
第8条(除外事項)
アフターサービスの対象外となるケースを明確にしています。保証期間外や故意による故障など、一般的なメーカー保証でも対象外となる事項を列挙しています。例えば、スマートフォンをお風呂で使用して水没させた場合や、高所から故意に落下させた場合などは対象外となります。これにより不要なトラブルを防止できます。
第9条(報酬)
業務委託の対価について具体的な金額と支払条件を規定しています。業務内容や難易度に応じた報酬体系となっており、公平な取引関係の構築に寄与します。
例えば、単純な設定確認だけで済む電話対応と、基板交換などの高度な修理技術が必要な場合では報酬額に差をつけることが一般的です。月次での報告と請求の仕組みにより、適切な業務管理が可能になります。
第10条(再委託の禁止)
受託者による無断の再委託を禁止する条項です。サービス品質の確保やセキュリティリスクの軽減を目的としています。例えば、個人情報を含む顧客データが委託者の知らない第三者に渡ることを防止する効果があります。特に修理業務などでは技術力の確保が重要なため、無断再委託によるサービス品質低下を防ぐ意味もあります。
第11条(秘密保持)
契約に関連して知り得た秘密情報の保護を規定しています。契約終了後も一定期間(5年間)秘密保持義務が継続することを明記しており、長期的な情報保護を図っています。例えば、新製品の開発情報やユーザーの利用傾向など、競争上重要な情報が漏洩するリスクを軽減します。また、秘密情報から除外される事項も明確にすることで、過度な制約を避けています。
第12条(個人情報の取り扱い)
個人情報保護に関する受託者の義務を規定しています。個人情報保護法など関連法令の遵守義務や適切な安全管理措置の実施を求めています。
例えば、顧客の氏名、住所、購入製品情報などの適切な管理が求められます。近年は個人情報漏洩に対する社会的関心が高まっており、重要性が増している条項です。
第13条(知的財産権)
業務遂行過程で生じた知的財産権の帰属を明確にしています。基本的に委託者に帰属することを定めており、後のトラブル防止に役立ちます。
例えば、修理業務の効率化のために開発された治具や手法の権利帰属が明確になります。特に製品の設計情報など重要な知的財産に関わる業務では、権利関係の明確化が重要です。
第14条(損害賠償)
契約違反による損害賠償責任について規定しています。通常生じうる損害の範囲内での賠償を原則としており、予見可能性の範囲内での責任を定めています。
例えば、修理作業中に顧客の製品を誤って破損させた場合の責任範囲が明確になります。過大な損害賠償リスクを避けつつ、適切な責任関係を構築する効果があります。
第15条(契約期間)
契約の有効期間と更新の仕組みを規定しています。基本期間を2年とし、自動更新の仕組みを導入することで、継続的な業務運営を可能にしています。
例えば、製品ライフサイクルが長い産業機器などでは、長期的・安定的なアフターサービス体制の確保が重要になります。期間満了の3ヶ月前という余裕を持った申し出期限により、円滑な契約関係の見直しが可能です。
第16条(解除)
契約を解除できる重大な事由を列挙しています。相手方に重大な契約違反や経営破綻などの事由が生じた場合、催告なしに契約解除できる権利を保全しています。例えば、受託者が個人情報を大量に漏洩させたような場合、委託者は直ちに契約を解除して被害拡大を防止できます。また、解除と損害賠償請求は別であることを明記し、権利を保全しています。
第17条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係排除を明確に規定しています。近年のコンプライアンス強化の流れを受けて、標準的に導入されている条項です。例えば、取引先が反社会的勢力と判明した場合に、直ちに関係を切ることができる根拠となります。社会的責任を果たすとともに、企業イメージの保全にも寄与します。
第18条(契約終了後の措置)
契約終了時に受託者が講じるべき措置を規定しています。資料の返還や個人情報の処理など、契約終了後のリスク管理を目的としています。例えば、修理マニュアルや顧客データなど、委託者にとって重要な情報資産を回収する根拠となります。スムーズな業務移行のためにも重要な条項です。
第19条(存続条項)
契約終了後も効力を有する条項を明記しています。秘密保持や個人情報保護など、契約終了後も継続すべき義務を明確にすることで、長期的な権利保護を図っています。
例えば、契約終了から数年後に情報漏洩が発覚した場合でも、責任追及が可能になります。特にブランド価値に直結する情報保護は、長期的な視点での管理が重要です。
第20条(協議解決)
契約に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応方法を規定しています。当事者間の誠実な協議による解決を原則とすることで、柔軟な問題解決を目指しています。
例えば、契約締結時には想定していなかった新たな技術やサービスへの対応が必要になった場合などに活用されます。関係性を重視した円満な問題解決に寄与します。
第21条(管轄裁判所)
紛争が生じた場合の管轄裁判所を定めています。一般的には委託者の所在地を管轄する裁判所が指定されることが多いです。
例えば、全国に拠点を持つ企業間の契約では、訴訟になった場合にどこで争うかを明確にしておくことで、予測可能性が高まります。紛争解決の効率化にも寄与する実務的に重要な条項です。