【1】書式概要
この建物賃貸借契約書は、法令による取壊し予定のある建物を賃貸する際に使用できる雛型です。都市計画法に基づく道路拡幅事業などにより、将来的に取壊しが明確に予定されている建物の賃貸借を適切に管理するために作成されています。
この契約書は、2020年の改正民法に対応した内容となっており、借地借家法に従った期限付建物賃貸借契約の要件を満たしています。特に第1条では都市計画事業による取壊し予定を明記し、第2条では通常の更新条項と併せて事業実施による契約終了条項を設けています。
本雛型は、道路拡幅事業や再開発事業など、公共事業により取壊しが予定されている建物を賃貸する場合に最適です。賃料や敷金の取り扱い、造作工事の許可手続き、原状回復義務など、賃貸借関係において重要な事項を網羅しています。また、賃料不払いや用途違反などによる解除条項、中途解約に関する条項も明確に規定されています。
店舗や事務所としての賃貸を想定した内容となっていますが、必要に応じて使用目的や条件を修正することで、様々な業種や状況に対応可能です。法令による取壊し予定があることを明確にしつつ、それまでの期間における賃貸借関係を適切に規律する契約書として、不動産オーナーや管理会社の方々に役立つ内容となっています。
〔条文タイトル〕
第1条(期限付建物賃貸借)
第2条(賃貸借期間)
第3条(使用目的)
第4条(賃料)
第5条(諸費用の負担)
第6条(造作の工事)
第7条(権利義務の譲渡禁止)
第8条(賃料増減の請求)
第9条(賃料不払解除)
第10条(即時解除)
第11条(修繕)
第12条(中途解約)
第13条(損害金)
第14条(原状回復)
第15条(敷金)
【2】逐条解説
第1条(期限付建物賃貸借)
この条項では契約の基本的性質を定めています。ここでは都市計画法に基づく事業により将来的に取壊しが予定されている建物であることを明記し、借地借家法に基づく期限付建物賃貸借契約であることを明確にしています。土地の表示、都市計画決定、事業認可、事業施行期間など具体的な事項を記載することで、取壊し予定の法的根拠を明らかにしています。
第2条(賃貸借期間)
賃貸借期間とその更新に関する規定です。基本的には1年間の契約で、特段の意思表示がなければ自動更新される通常の更新条項を設けつつ、第1条で定めた道路拡幅計画による土地買収時には契約が終了することを明記しています。これにより、期限付建物賃貸借としての性質を担保しています。
第3条(使用目的)
賃借人による建物の使用目的を限定する条項です。ここでは店舗としての使用に限定していますが、目的外使用は後の即時解除事由となる重要な制限です。
第4条(賃料)
賃料の金額と支払方法に関する規定です。毎月末日までに翌月分を支払うという支払時期と、振込手数料の負担についても明記しています。
第5条(諸費用の負担)
光熱費などの使用に関する費用と、共益費の支払いについて定めています。これにより賃借人の費用負担範囲を明確にしています。
第6条(造作の工事)
賃借人が建物に造作を施す場合の手続きを定めています。事前に設計図を示し、書面による承諾を得ることを要件としており、賃貸人の財産権保護と建物の適切な管理を図るものです。
第7条(権利義務の譲渡禁止)
賃借権の譲渡や転貸を禁止する条項です。これにより賃貸人の意図しない第三者との契約関係の発生を防止しています。
第8条(賃料増減の請求)
民法第32条(旧借地借家法第32条)に基づく賃料増減請求権を確認する条項です。経済状況の変化や周辺相場との乖離が生じた場合に賃料の見直しができることを明確にしています。
第9条(賃料不払解除)
賃料を3か月以上滞納した場合、催告なしに契約解除できる条項です。賃貸人の重要な権利保全手段となります。
第10条(即時解除)
賃料不払い以外の契約解除事由を列挙しています。用途違反、無断転貸・譲渡、破産手続開始決定、その他の契約違反があった場合に即時解除できることを規定しています。
第11条(修繕)
建物の修繕責任の分担を定めています。主要構造部分は賃貸人、小修繕は賃借人の負担とすることで、責任範囲を明確にしています。
第12条(中途解約)
当事者双方が3か月前の予告により契約を解約できる規定です。これにより、期間満了前でも一定の予告期間を設けることで契約関係からの離脱を可能にしています。
第13条(損害金)
賃貸借終了後も明渡しがない場合の損害金(賃料相当額の2倍)を定めています。これは賃借人に速やかな明渡しを促す経済的インセンティブとなります。
第14条(原状回復)
契約終了時の原状回復義務を定めています。特に期限付建物賃貸借という性質上、明渡料請求権を明示的に放棄させることで、将来的な紛争を予防しています。
第15条(敷金)
敷金の金額、無利息であること、返還時期、充当範囲等を詳細に規定しています。特に賃借人の債務不履行があった場合の充当と、賃料への充当禁止を明記しており、敷金の法的性質を明確にしています。