【1】書式概要
この業務システム開発委託三社契約書は、発注者と2社の開発業者間でシステム開発を分担して行う際に使用する契約書雛型です。システム設計を担当する会社とプログラム制作を担当する会社が異なる場合など、開発業務を分業する必要がある際に最適な契約書フォーマットとなっています。
システム開発における役割分担や責任範囲を明確に定めているため、複数社による共同開発プロジェクトでも、責任の所在や業務範囲について争いが生じるリスクを最小限に抑えることができます。納期管理、検収基準、保守対応なども具体的に規定されており、契約後のトラブルを未然に防ぐことができます。
特に、設計とプログラミングを別会社に委託する場合や、既存システムのリニューアルで複数の専門会社の協力が必要な場合に有効です。また、著作権の帰属や反社会的勢力の排除条項など、最新の法的リスクにも対応した内容となっており、2024年改正民法に準拠した信頼性の高い契約書として安心してご利用いただけます。
システム開発の実務で使いやすいよう、業務分担表や成果物一覧も含まれており、契約締結後すぐに開発プロジェクトを開始できる実践的な雛型です。
〔条文タイトル〕
第1条(定義)
第2条(開発委託)
第3条(納期)
第4条(委託金額)
第5条(支払条件)
第6条(検収)
第7条(乙と丙の責任分担)
第8条(無償保証期間)
第9条(再委託)
第10条(指揮命令)
第11条(秘密保持)
第12条(危険負担)
第13条(保守)
第14条(権利帰属)
第15条(解除)
第16条(損害賠償額)
第17条(協議)
第18条(専属的合意管轄)
【2】逐条解説
第1条(定義)
本条では、契約書内で使用される重要な用語を明確に定義しています。「本件業務」「本件システム」「本件設計」「乙担当部分」「丙担当部分」「成果物」「本件ソフトウェア」という7つの基本用語を定めることで、契約内容の解釈に齟齬が生じないようにしています。特に、二つの開発会社(乙と丙)の担当部分を明確に区別している点が特徴的です。
第2条(開発委託)
本条は、発注者(甲)と二つの開発会社(乙と丙)との間の委託関係を規定しています。乙と丙がそれぞれ異なる部分を担当すること、さらに相互に補助や助言を行うことが明記されています。これにより、複数社による協業体制が法的に確立されます。
第3条(納期)
システム開発の重要な要素である納期について詳細に規定しています。本件設計と本件ソフトウェアでそれぞれ納期を設定し、遅延時の対応や納期変更の要件を明確にしています。特に、甲の責任による遅延や不可抗力による遅延の場合の対応も規定することで、公平性を確保しています。
第4条(委託金額)
契約金額とその変更条件を定めています。乙と丙それぞれの委託金額を明示し、仕様変更や納期変更に伴う金額変更の手続きを規定しています。また、発注者の責任による増加費用についても明確にしています。システム全体設計後の見積額が不相当な場合の再見積条項も含まれており、柔軟な対応が可能です。
第5条(支払条件)
支払いのタイミングと方法を具体的に規定しています。乙と丙で異なる支払いスケジュールを設定でき、開発の進捗に応じた段階的な支払いが可能です。契約締結時、設計完了時、検収完了時といった主要なマイルストーンでの支払いを定めています。
第6条(検収)
成果物の検査手順と基準を定めています。検査期間と検査基準を明確にし、期間内に通知がない場合は合格とみなす規定により、検収プロセスが滞るリスクを軽減しています。不合格時の対応についても具体的に規定しています。
第7条(乙と丙の責任分担)
三社契約の特徴的な条項で、二つの開発会社の責任範囲を明確に分離しています。各社は自己の担当部分についてのみ責任を負い、連帯責任を負わないことを明記することで、責任の所在を明確化しています。
第8条(無償保証期間)
検収完了後の一定期間、無償で保守サービスを提供することを規定しています。この期間中は、システムの不具合修正やアドバイスが無償で受けられます。無償保証期間経過後は有償となることも明記しています。
第9条(再委託)
開発会社が業務の一部を第三者に再委託することを認める条項です。ただし、再委託しても元の開発会社の責任は免除されないことを明確にしています。
第10条(指揮命令)
労働者派遣と開発委託の違いを明確にする重要な条項です。作業従事者への指揮命令権は各開発会社にあることを明記し、偽装請負のリスクを回避しています。
第11条(秘密保持)
契約当事者間で知り得た業務上の秘密の保護を規定しています。契約終了後も秘密保持義務が継続することを明記し、情報セキュリティを確保しています。
第12条(危険負担)
成果物の滅失や損傷が発生した場合の責任負担を定めています。納入の前後で責任の所在が変わることを明確にし、リスク管理を行っています。
第13条(保守)
無償保証期間経過後の保守サービスについて規定しています。バージョンアップ、機能追加、運用サポートなど、各種の保守サービスを別途契約できることを明示しています。
第14条(権利帰属)
知的財産権の帰属について詳細に規定しています。開発過程で生じた発明等の権利や著作権の帰属を明確にし、特に汎用的なプログラム部品については開発会社に権利が残ることを定めています。
第15条(解除)
契約解除の要件を定めています。破産、支払停止、反社会的勢力との関係など、即時解除が認められる場合と、債務不履行による解除の場合を区別して規定しています。
第16条(損害賠償額)
損害賠償の範囲を制限する条項です。間接損害や拡大損害を除外し、賠償額の上限を契約金額と同額に制限することで、過大な賠償リスクを回避しています。
第17条(協議)
契約に定めのない事項や疑義が生じた場合の解決方法を定めています。三者間の協議による解決を基本とすることで、柔軟な対応を可能にしています。
第18条(専属的合意管轄)
紛争が生じた場合の管轄裁判所を定めています。特定の裁判所を指定することで、法的紛争の解決を効率化しています。