【1】書式概要
この契約書は、旅行会社が個人事業主として活動する添乗員に業務を委託する際に必要となる書面です。近年の働き方改革や改正民法の施行により、企業と個人事業主との間で結ぶ契約書の重要性がますます高まっています。
旅行業界では、多くの添乗員がフリーランスとして複数の旅行会社と業務委託契約を結んでいます。しかし、口約束だけでは後々トラブルが発生する可能性があり、特に報酬の支払い条件や業務範囲について明確にしておく必要があります。
この契約書テンプレートは、国内旅行から海外旅行まで幅広く対応できる内容となっており、旅行会社の経営者や人事担当者、そして添乗員として独立を考えている方にとって実用的な書式です。個人情報保護法への対応や反社会的勢力の排除条項なども盛り込まれており、現代のビジネス環境に即した内容になっています。
実際の使用場面としては、新しい添乗員と契約する時、既存の口約束を書面化したい時、契約条件を見直したい時などが挙げられます。また、添乗員側も自分の権利と義務を明確にするために、このような契約書の存在は非常に重要です。
【2】逐条解説
第1条(目的)の解説
この条文は契約全体の趣旨を明らかにするものです。旅行会社と添乗員が互いの立場を理解し、スムーズに業務を進めるための基本方針を定めています。実際の現場では、添乗員が複数の旅行会社と同時に契約することも珍しくないため、それぞれの契約で求められる役割を明確にしておくことが重要になります。
第2条(業務委託)の解説
業務委託の基本的な枠組みを定める条文です。特に注目すべきは資格要件で、国内旅行では国内旅程管理主任者、海外旅行を含む場合は総合旅程管理主任者の資格が必要とされています。これらの資格は旅行業法で定められており、無資格者が添乗業務を行うことは違反行為となるため、契約書にも明記されています。
第3条(業務内容)の解説
添乗員が実際に行う業務の詳細を列挙した条文です。単なる同行だけでなく、行程管理から安全確保、緊急時対応まで多岐にわたる責任が含まれています。特に添乗日報の作成や報告書作成は、旅行会社がサービス品質を維持するために欠かせない業務です。経験の浅い添乗員でも理解できるよう、事前説明の重要性も盛り込まれています。
第4条(業務の割当)の解説
旅行会社がどのように添乗員に仕事を振り分けるかを定めた条文です。添乗員は基本的に業務を断ってはいけませんが、健康上の問題や既に入っている予定との重複については配慮されています。この条項により、旅行会社は計画的な人員配置ができ、添乗員も無理のない範囲で働くことができます。
第5条(委託料)の解説
最も関心の高い報酬に関する条文です。基本日当、時間外手当、宿泊手当が明確に区分されており、深夜労働には割増料金も設定されています。交通費や宿泊費などの実費は別途支給されるため、添乗員の負担軽減にもなっています。支払いは翌月末までと期限も明確で、振込手数料は会社負担という配慮もなされています。
第6条(業務遂行)の解説
添乗員がどのような姿勢で業務に取り組むべきかを定めた条文です。自己責任での業務遂行、関係法令の遵守、継続的な研修参加が求められています。特に研修参加の義務化は、添乗員のスキルアップと旅行会社のサービス品質向上の両方を実現する仕組みとなっています。
第7条(再委託の禁止)の解説
添乗員が勝手に他の人に仕事を代わってもらうことを禁止する条文です。添乗業務は高い専門性と責任を伴うため、原則として本人が直接行う必要があります。ただし、やむを得ない事情がある場合は事前承諾により例外が認められており、柔軟性も確保されています。
第8条(設備・機材等)の解説
業務に必要な道具や機器についての取り決めです。基本的には添乗員が自分で用意しますが、携帯電話などは会社から貸与される場合もあります。貸与品については適切な管理と返却が義務付けられており、双方の責任範囲が明確になっています。
第9条(守秘義務)の解説
添乗員が業務中に知った情報の取り扱いについて定めた条文です。旅行会社の営業秘密はもちろん、お客様の個人的な情報も含まれます。契約終了後も守秘義務は継続するため、添乗員としての職業倫理が強く求められています。書類の管理についても厳格なルールが設けられています。
第10条(個人情報保護)の解説
現代のビジネスに欠かせない個人情報保護に特化した条文です。添乗員は多くのお客様の個人情報に接するため、個人情報保護法に基づく適切な取り扱いが義務付けられています。業務終了後の情報返却や破棄についても明確に定められており、情報漏洩リスクの軽減が図られています。
第11条(損害賠償)の解説
添乗員のミスや契約違反によって損害が発生した場合の責任について定めた条文です。ただし、会社側に原因がある場合は添乗員の責任は免除されるため、一方的に不利にならないよう配慮されています。実際の現場では、お客様とのトラブルや事故対応での判断ミスなどが想定されます。
第12条(保険)の解説
業務中の事故に備えた保険について定めた条文です。会社が添乗員を被保険者とする旅行特別補償保険に加入することで、基本的な補償は確保されます。添乗員が追加で保険に入ることも認められており、より手厚い保障を求める場合の選択肢も用意されています。
第13条(権利義務の譲渡禁止)の解説
契約上の地位や権利を勝手に他人に移すことを禁止する条文です。添乗員個人の能力や信頼関係に基づく契約であるため、このような制限が設けられています。ただし、相手方の同意があれば譲渡可能であり、完全に門戸を閉ざしているわけではありません。
第14条(契約期間)の解説
契約の有効期間を1年間とし、自動更新の仕組みを定めた条文です。期間満了の1ヶ月前までに意思表示がなければ自動的に更新されるため、双方が満足している場合は手続きの負担が軽減されます。一方で、契約を終了したい場合は事前の意思表示が必要になります。
第15条(解除)の解説
契約を途中で終了させる場合の条件を定めた条文です。一般的な契約違反の場合は催告期間を設けますが、重大な違反や破産などの場合は即座に解除できるようになっています。添乗員と会社の双方に解除権が認められており、対等な関係が保たれています。
第16条(反社会的勢力の排除)の解説
近年のコンプライアンス強化を反映した条文です。暴力団関係者との取引を完全に排除することで、健全なビジネス環境の維持を図っています。旅行業界は多くの一般消費者と接する業界であるため、このような条項の重要性は特に高いといえます。
第17条(協議事項)の解説
契約書に書かれていない事柄や解釈に迷いが生じた場合の解決方法を定めた条文です。まずは当事者同士の話し合いで解決を図ることを基本とし、円満解決を目指す姿勢が示されています。長期的な信頼関係の構築には欠かせない条項といえます。
第18条(管轄裁判所)の解説
万が一裁判になった場合にどこの裁判所で争うかを事前に決めておく条文です。管轄裁判所を明確にしておくことで、紛争解決の迅速化と費用削減が期待できます。通常は会社