【1】書式概要
この引水地役権設定契約書は、土地所有者間で水を引くための権利(地役権)を設定する際に必要な法的文書です。この雛型は民法改正に対応しており、土地所有者が安心して引水権を設定・取得できるよう、必要な条項を漏れなく網羅しています。
契約書には所有地の詳細情報、地役権の存続期間、年間対価の支払い方法、水路の設置・維持管理責任、契約終了時の原状回復義務、地役権設定登記の手続きなど、実務上重要な事項がすべて含まれています。特に第7条の反社会的勢力排除条項は、近年の契約実務において不可欠な要素となっており、取引の安全性を高めています。
この雛型を活用すれば、専門的な法律知識がなくても、農業用水や生活用水などの引水に関する権利関係を明確にし、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。契約当事者の権利義務を明確にし、登記手続きの費用負担や紛争解決方法も規定されているため、長期間の安定した契約関係を構築できます。
不動産取引や農地管理に携わる方々、土地所有者間での水利権設定を検討されている方々にとって、実務に即した信頼性の高い契約書雛型として、安心してご利用いただけます。
〔条文タイトル〕
以下に契約書から条文数とタイトルを抜き出しました:
第1条(目的)
第2条(期間)
第3条(対価)
第4条(水路の設置)
第5条(明渡し)
第6条(登記)
第7条(反社会的勢力の排除)
第8条(協議事項)
第9条(管轄裁判所)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条項では契約の基本的な目的と対象となる土地を特定しています。「要役地」とは地役権によって利益を受ける土地(乙の土地)、「承役地」とは地役権の負担を受ける土地(甲の土地)を指します。両土地の所在地、地番、地目、面積を明記することで、契約対象を明確にしています。
第2条(期間)
地役権の存続期間を定めています。一般的に地役権は期間の定めなく設定されることもありますが、この契約書では一定期間(●●年)を設定することで、将来の見直しや再契約の機会を確保しています。
第3条(対価)
地役権設定の対価として、乙が甲に支払う年額と支払方法を規定しています。毎年12月末日までに翌年分を前払いする形式で、振込手数料は乙負担と明確にしています。これにより金銭トラブルを防止します。
第4条(水路の設置)
水路の設置費用と維持管理責任を乙に課しています。別紙図面で水路の位置・規模を特定し、工事費用から日常的な維持管理まで、すべて乙の負担としています。これは引水の利益を受けるのは乙であるため、その負担も乙が負うという公平性を確保するものです。
第5条(明渡し)
契約終了時の原状回復義務を規定しています。期間満了や契約解除の際には、乙は設置した水路等を撤去し、土地を元の状態に戻して甲に返還する義務があります。これにより甲の土地の将来的な利用が保証されます。
第6条(登記)
地役権設定登記の期限と費用負担を定めています。地役権は登記によって第三者に対する対抗力を得るため、この手続きは重要です。登記費用は甲乙折半とすることで、両者の公平な負担を実現しています。
第7条(反社会的勢力の排除)
契約当事者が反社会的勢力でないことの表明保証と、それに反した場合の契約解除権を規定しています。具体的な定義と5つの類型を示すことで、法的安定性を高めています。現代の契約実務では標準的な条項となっています。
第8条(協議事項)
契約書に明記されていない事項が生じた場合の対応方法を定めています。当事者間の協議によって解決するという原則を示すことで、予期せぬ状況にも柔軟に対応できるようにしています。
第9条(管轄裁判所)
紛争発生時の裁判管轄を特定の裁判所(●●地方裁判所)に限定しています。これにより訴訟となった場合の予測可能性を高め、当事者双方の負担を軽減します。特に当事者が離れた地域に居住している場合に重要な条項です。