【1】書式概要
この「建物譲渡特約付借地権設定契約書」は、借地権設定者(地主)と借地権者(土地の賃借人)の間で締結される特殊な契約書です。一般的な借地権契約と異なり、この契約では借地期間満了時に借地権者が建てた建物を地主に譲渡することを特約として含んでいます。
この契約書テンプレートは、長期にわたる土地利用を計画しながらも、将来的には土地と建物の所有権を一つにまとめたい地主と、一定期間は自分の建物を所有して使用したい借主の両方のニーズに応える理想的な選択肢です。特に借地借家法第24条に基づく正式な「建物譲渡特約付借地権設定契約」として、法的要件を満たした内容になっています。
このテンプレートが特に役立つ場面としては、親族間での土地活用、企業の社宅用地の長期貸借、事業用定期借地権として商業施設の誘致を検討している自治体や地主、将来的に土地を相続予定だが現在は第三者に活用してもらいたい所有者などが挙げられます。また、35年という標準的な契約期間を設定しており、その間の権利義務関係を明確にしています。
契約書には賃料の設定方法や改定条件、建物譲渡時の価格決定方法、増改築に関する取り決め、契約解除条件など、実務上重要な条項が網羅されています。さらに、第三者への転貸に関する規定も含まれており、借地権者が建物を他者に貸す場合の手続きについても明確に定められています。
改正民法に対応した最新の法的要件を満たしているため、現在の法制度下で安心して使用できる内容になっています。契約書の各条項は分かりやすい表現で記載されており、専門知識がなくても理解しやすい内容になっています。必要な箇所に記入するだけで、正式な契約書として使用できる便利な雛形です。
〔条文タイトル〕
第1条(目的・建物譲渡特約付借地権)
第2条(使用目的)
第3条(借地権の存続期間)
第4条(賃料)
第5条(建物譲渡特約)
第6条(禁止制限事項)
第7条(契約解除)
第8条(建物の賃貸)
第9条(賃貸借期間中の解約)
第10条(合意管轄)
第11条(協議)
【2】逐条解説
第1条(目的・建物譲渡特約付借地権)
この条項では契約の基本的な枠組みを定めています。借地権設定者(地主)が土地を貸し、借地権者がこれを借り受けるという賃貸借関係の確立と、この契約が借地借家法第24条に基づく「建物譲渡特約付借地権」であることを明確にしています。この特約付借地権は一般的な借地権と異なり、期間満了時に建物を地主に譲渡する特約が付いた特殊な権利形態です。
第2条(使用目的)
土地の使用目的を明確に限定する条項です。借地権者は契約で定められた建物を建築・所有する目的でのみ土地を使用でき、それ以外の用途での使用は禁止されています。この条項により、地主は自分の土地がどのように使われるかをコントロールでき、想定外の利用を防止できます。
第3条(借地権の存続期間)
借地権の存続期間を35年間と定めています。建物譲渡特約付借地権の場合、借地借家法により30年以上の期間設定が必要とされており、この条項はその法的要件を満たしています。明確な開始日と終了日を記載することで、契約当事者間の権利義務関係の期間が明確になります。
第4条(賃料)
賃料に関する詳細な取り決めを定めています。月額賃料、支払方法、振込先口座などの基本的な事項に加え、経済状況の変動や周辺の賃料相場に応じた賃料改定の可能性についても言及しています。この条項により、長期契約における賃料の適正化メカニズムが確保されています。
第5条(建物譲渡特約)
この契約の核心部分である建物譲渡に関する特約を定めています。借地権の期間満了時に借地権者が建てた建物を地主に譲渡する期限付売買契約の内容、価格決定方法、所有権移転の手続き、建物の保全義務などが詳細に規定されています。また増改築に関する制限や手続きも含まれており、将来の建物譲渡を見据えた管理体制を確立しています。
第6条(禁止制限事項)
借地権者に対する様々な制限事項を列挙しています。特に借地権の譲渡・転貸の制限、使用目的の制限、土地形状変更の制限などが含まれており、これらの行為を行う際には地主の書面による事前承諾が必要とされています。この条項により地主は土地の管理権を一定程度維持できます。
第7条(契約解除)
地主側からの契約解除が可能となる事由を明確に列挙しています。賃料の滞納、無断での建物増改築、借地権の無断譲渡・転貸、目的外使用、土地形状の無断変更などが該当します。これらの違反があった場合、地主は催告なしに直ちに契約を解除できる強い権利を持ちます。
第8条(建物の賃貸)
借地権者が建物を第三者に賃貸する場合の取り決めです。特に借地借家法第39条に基づく「取壊し予定の建物の賃貸借契約」とすることや、建物賃貸借の終了時期、借地権の存続期間満了前の取壊し通知など、建物賃借人の保護と地主の権利のバランスを考慮した規定となっています。
第9条(賃貸借期間中の解約)
借地権者側からの中途解約に関する規定です。建物が滅失した場合には、借地権者は契約の解約を申し入れることができ、申入れから3ヶ月後に契約が終了します。これにより、建物が存在しなくなった場合の借地権者の負担を軽減する効果があります。
第10条(合意管轄)
契約に関する紛争が生じた場合の裁判管轄を定めています。地主の住所地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることで、紛争解決の場所を明確にしています。これにより、将来的な裁判手続きにおける混乱を防止できます。
第11条(協議)
契約書に明記されていない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応方法を定めています。当事者間の誠実な協議による解決を原則とすることで、契約書の文言だけでは解決できない問題に対する柔軟な対応が可能となります。長期契約において予見できない事態への対応メカニズムとして重要な条項です。
この建物譲渡特約付借地権設定契約書は、借地借家法の規定を踏まえつつ、地主と借地権者双方の権利義務関係を明確に定めた実務的な契約書です。特に35年という長期間の土地利用と期間満了時の建物譲渡という特殊な取引を法的に保護するための重要な書類となります。