【1】書式概要
このテンプレートは、企業間の人材出向に関する契約を締結する際に使用できる、改正民法に準拠した出向契約書です。出向元企業(甲)と出向先企業(乙)、そして出向者(丙)の三者間の権利義務関係を明確に定義しています。
テンプレートには、当事者の定義から始まり、服務規定、出向期間、給与・賞与の取扱い、社会保険・労災保険の適用、出張旅費、出向料の支払い方法、そして業務上の災害発生時の法定外補償まで、出向契約に必要な基本条項が網羅されています。
企業の人事担当者や法務担当者が出向契約を立案する際の時間と労力を削減し、法的リスクを最小限に抑えながら適切な出向契約を締結するための基礎として活用できます。各社の状況や出向の目的に応じて、会社名や個人名、期間、金額などの空欄部分を埋め、必要に応じて条項を追加・修正することで、最適な内容にカスタマイズすることができます。
改正民法に対応していますが、個別の状況や特殊な条件がある場合は、法律の専門家によるレビューをお勧めします。また、労働関連法規の改正があった場合は、最新の法令に合わせた修正を行うことで、常に適法な状態を保つことができます。
〔条文タイトル〕
第1条(当事者)
第2条(服務)
第3条(出向期間)
第4条(給与・賞与)
第5条(社会保険)
第6条(労災保険)
第7条(出張旅費)
第8条(出向料)
第9条(法定外補償)
第10条(協議事項)
【2】逐条解説
第1条(当事者)
この条項では、契約の当事者を明確に特定します。具体的には、出向元企業(甲)、出向先企業(乙)、および出向する従業員(丙)の三者を定義しています。これにより、契約上の権利義務関係の主体が明確になり、後続の条項での責任の所在が明らかになります。
第2条(服務)
出向期間中の従業員の勤務形態を規定しています。本条の特徴は、出向者が甲の従業員としての身分を保持したまま、乙の就業規則に従い、乙の指揮命令下で業務に従事するという二重の地位を明確にしていることです。また第2項では、乙が丙の勤務状態を記録し、甲に定期的に報告する義務を定めることで、出向元企業が従業員の状況を把握できる仕組みを確保しています。
第3条(出向期間)
出向の開始日と終了日を明記することで、契約の有効期間を明確にしています。第2項では、出向期間を甲乙の協議により変更できる柔軟性を持たせており、事業環境の変化や出向の目的達成状況に応じて期間調整が可能となっています。
第4条(給与・賞与)
出向期間中の給与および賞与の支給責任を甲(出向元)が負うことを明確にしています。この規定により、出向者の収入が安定して確保され、待遇面での不安を解消する効果があります。
第5条(社会保険)
健康保険、厚生年金保険、雇用保険の資格を甲において継続することを定めています。これにより、出向によって社会保険の適用が中断されることなく、出向者の社会保障が継続的に維持されます。
第6条(労災保険)
労働者災害補償保険については、実際に勤務する乙が加入・負担し、業務上の災害責任も乙が負うことを明確にしています。第2項では、労災保険の基礎となる賃金額については甲が乙に報告する義務を定め、適切な保険給付を確保しています。
第7条(出張旅費)
出向期間中の出張旅費は、実際に業務指示を行う乙が直接支給することを規定しています。これにより、業務上の出張に関する経費処理が明確になり、二重払いや未払いのリスクを防止します。
第8条(出向料)
甲と乙の間で支払われる出向料の金額と計算方法、支払い方法を定めています。特に第2項では、出向料と甲が負担する諸経費との差額調整についても規定しており、企業間の費用負担の公平性を確保しています。第3項では具体的な支払方法として銀行振込を指定し、口座情報を明記することで取引の確実性を高めています。
第9条(法定外補償)
業務上の災害に対する法定外補償について、甲の規定により補償する一方で、費用は乙が負担することを定めています。これにより、出向者の保護を図りつつ、実際に業務を指示した乙の責任も明確にしています。
第10条(協議事項)
契約に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応方法として、甲乙が協議して誠意をもって解決することを規定しています。この条項は、予見できない問題が発生した際の解決方法を予め定めることで、将来的なトラブルを未然に防ぐ効果があります。
この契約書は、出向という複雑な労働形態における三者間(出向元、出向先、出向者)の権利義務関係を明確にし、法的リスクを軽減するための重要な文書として機能します。