【1】書式概要
この契約書は、入会権を他の人に譲り渡す際に使用する書類です。入会権とは、昔から続く共同利用の権利で、山林や原野、ゴルフクラブ、別荘地などの利用権として現在でも多く存在しています。
現代では特にゴルフ会員権やリゾート会員権、別荘地の利用権として入会権が取引されることが増えており、こうした権利を売買する際には必ず契約書が必要になります。個人間での取引はもちろん、法人が保有する入会権を売却する場面でも活用できる内容となっています。
この書式は2020年4月に施行された改正民法にしっかりと対応しており、従来の「瑕疵担保責任」に代わる「契約不適合責任」の規定も盛り込まれています。また、現在の取引実務で重視される反社会的勢力の排除条項や、詳細な表明保証条項も含まれているため、安心して使用いただけます。
入会権の譲渡には通常、入会団体の承諾が必要になりますが、この契約書ではその手続きについても適切に規定されています。譲渡価格の支払い方法から、万が一のトラブル発生時の対応まで、実際の取引で起こりうる様々なケースを想定して作成されているのが特徴です。
【2】条文タイトル
第1条(入会権の譲渡)
第2条(譲渡対価)
第3条(入会団体の承諾)
第4条(表明保証)
第5条(契約不適合責任)
第6条(危険負担)
第7条(譲渡完了手続)
第8条(協力義務)
第9条(契約不適合責任)
第10条(譲渡人の地位)
第11条(損害賠償)
第12条(反社会的勢力の排除)
第13条(秘密保持)
第14条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(入会権の譲渡)
この条文は契約の核心部分で、入会権が確実に移転することを明記しています。契約締結と同時に権利が移るという即時譲渡の形式を採用しており、曖昧さを排除しています。
第2条(譲渡対価)
金銭面での取り決めを規定した条文です。現金での一括払いを原則としており、分割払いや手形決済などのリスクを避ける設計になっています。ゴルフ会員権の取引では数百万円規模になることも多く、確実な決済方法の指定が重要です。
第3条(入会団体の承諾)
入会権の譲渡には多くの場合、管理団体の同意が必要になります。この条文により、両当事者が承諾取得の義務を負うことで、後々のトラブルを防いでいます。別荘地の管理組合やゴルフクラブでは、新規入会者の審査が行われるのが一般的です。
第4条(表明保証)
売り手が買い手に対して、入会権の有効性や紛争の不存在を約束する条文です。例えば「この会員権には借金の担保が設定されていない」「管理費の滞納がない」といった事実を保証することになります。
第5条(契約不適合責任)
改正民法で新設された概念に対応した条文です。従来の「隠れた瑕疵」という表現から「隠れた不適合」に変更されており、現行制度に適合しています。
第6条(危険負担)
契約成立後から権利移転完了までの間に発生するリスクの分担を定めています。天災による入会地の被害などは買い手が負担することになり、一般的な不動産取引の慣行に沿った内容です。
第7条(譲渡完了手続)
権利移転後の事務手続きについて定めた条文で、入会団体への通知義務を明確化しています。この通知を怠ると、後日会員名簿の更新などで問題が生じる可能性があります。
第8条(協力義務)
譲渡に必要な各種手続きを両当事者が協力して行うことを定めています。名義変更書類の作成や印鑑証明書の提出など、実務的な作業での協力体制を確保しています。
第9条(契約不適合責任)
より詳細な契約不適合責任の内容を規定しており、買い手の救済方法を具体的に示しています。修補請求や代替物の引渡しなど、段階的な解決手段が用意されています。
第10条(譲渡人の地位)
契約後の売り手の協力義務を定めた条文で、買い手が権利行使する際のサポート体制を確保しています。入会団体との窓口業務などで売り手の協力が必要な場面を想定しています。
第11条(損害賠償)
契約違反時の責任関係を明確化した条文です。シンプルながら必要十分な内容で、実際の損害算定時の根拠となります。
第12条(反社会的勢力の排除)
現代の契約実務では必須とされる条項で、暴力団関係者との取引を防止しています。特にゴルフクラブや高級別荘地では、この種の審査が厳格に行われることが多く、契約書にも明記することが重要です。
第13条(秘密保持)
契約交渉過程で知り得た相手方の情報保護を定めています。個人の資産状況や法人の経営情報など、機密性の高い情報が交換されることを想定した条文です。
第14条(協議事項)
契約書に明記されていない事項や解釈に疑問が生じた場合の解決方法を定めています。いきなり法的措置に出るのではなく、まず話し合いでの解決を図る日本の商慣行に沿った内容となっています。