【1】書式概要
この契約書雛型は、WordPress を用いたホームページ制作および保守管理業務を行う際に必要となる法的枠組みを網羅した包括的な契約書です。2020年の民法改正に完全対応しており、制作会社様(甲)とクライアント様(乙)の双方の権利と義務を明確に定義しています。
雛型の特徴
本契約書雛型は、制作業務から保守業務までの一連のプロセスを詳細に規定しており、以下のような特徴があります。
包括的な契約内容
納期や契約期間、報酬の支払い方法、検収プロセス、契約不適合責任など、WordPress制作および保守に関わる重要な事項を網羅。特に改正民法で変更された「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」への移行も適切に対応しています。
権利関係の明確化
著作権、知的財産権、コンテンツの所有権など、制作物に関する権利関係を明確に規定。WordPress特有のテーマの著作権についても言及しており、将来的なトラブルを未然に防ぎます。
リスク管理
責任の範囲を明確にし、非保証事項や免責事項を具体的に列挙。特にWordPressのバージョンアップに関する責任範囲や、ホームページ公開後のトラブルについての対応も規定しています。
データセキュリティ
秘密情報の取り扱いや個人情報保護に関する条項を設け、情報漏洩リスクに対応。管理者IDの扱いについても明確に規定しています。
詳細な仕様書
別紙として添付される仕様書には、ドメイン、レンタルサーバー、WordPress導入、プラグイン導入、ページ制作、データ転送・動作確認、保守業務についての詳細な規定を含んでおり、契約の具体的内容が明確になっています。
活用方法
この雛型は、カスタマイズして利用することを前提としています。プロジェクトの規模や内容に応じて、必要な条項を追加・修正してご利用ください。特に価格や納期、具体的な制作内容については、個別案件に合わせて変更が必要です。
また、改正民法に対応しているため、最新の法的要件を満たす契約書として安心してご利用いただけます。制作会社様とクライアント様の双方にとって公平かつ明確な取り決めを行うことで、良好なビジネス関係を構築するための基盤となります。
ホームページ制作業務を行う際のリスク管理ツールとして、またクライアントとの信頼関係を築くための重要なドキュメントとして、ぜひご活用ください。
〔条文タイトル〕
第1条(業務内容)
第2条(納期及び契約期間)
第3条(報酬)
第4条(納品及び公開)
第5条(契約不適合責任)
第6条(ID管理)
第7条(非保証)
第8条(知的財産権)
第9条(コンテンツの所有権)
第10条(コンテンツの著作権)
第11条(免責)
第12条(秘密情報の取扱い)
第13条(個人情報)
第14条(契約解除)
第15条(期限の利益喪失)
第16条(契約の終了)
第17条(損害賠償)
第18条(遅延損害金)
第19条(再委託)
第20条(不可抗力)
第21条(権利義務譲渡の禁止)
第22条(合意管轄)
【2】逐条解説
冒頭部分
この契約書は「甲」(制作者側/受託者)と「乙」(依頼者側/委託者)との間でのホームページ制作および保守管理に関する契約書です。冒頭部分では、基本的な当事者の関係性と契約の対象となるサービスを定義しています。
第1条(業務内容)
本条は、契約で提供される業務の範囲を明確にするものです。具体的な業務内容は別紙の仕様書に委ねられており、仕様書の内容が契約の一部を成すことを示しています。これにより、業務内容に関する詳細な規定を本文に含めることなく、別紙で柔軟に対応できるようになっています。
第2条(納期及び契約期間)
ここでは、制作業務の納期と保守業務の契約期間を定めています。制作業務の納期を明確に設定するとともに、クライアント側の遅延による責任免除を規定。また、保守業務の契約期間は1年間とし、自動更新条項を設けることで継続的なサービス提供の基盤を整えています。
第3条(報酬)
報酬に関する規定で、制作料金と保守料金を区別して明確化しています。制作料金は一時金として契約締結時と納品完了後の分割支払いを規定。保守料金は月額制とし、ドメインやサーバー契約費用は実費、ページ更新は別途料金規定に基づくことを明確化。また、保守料金の請求・支払いサイクルを明示し、制作完了月の保守料金免除規定と振込手数料の負担を明確化しています。
第4条(納品及び公開)
納品と検収のプロセスを詳細に規定しています。仮公開の実施と通知方法、セキュリティ対策(パスワード設定)、検査期間(10日間)の設定と客観的な検査基準(仕様書との整合性)を定めています。また、修正要求のプロセスと再検査の方法、検査期間内に申し出がない場合の黙示的承認(納品完了)と正式公開についても規定しています。
第5条(契約不適合責任)
改正民法に対応した「契約不適合責任」について規定しています。納品後に仕様書との不一致が発見された場合の修正請求権、責任期間の限定(納品完了後3か月以内)を定めています。また、クライアント側の責任による不適合の場合の免責規定と、制作者側の告知義務違反の場合の例外も規定しています。
第6条(ID管理)
システム管理に必要なIDとパスワードの扱いを規定しています。契約期間中の管理者権限IDの保有と厳重管理義務、納品後も保守契約期間中は管理権限を保持すること、保守契約終了後のID引き渡し条件を明確にしています。
第7条(非保証)
制作者側がホームページの成果や効果について保証しない事項を明確化しています。売上発生の非保証、アクセス数増加の非保証、検索エンジン上位表示の非保証、プログラムの完全性の非保証、WordPressのバージョンアップに関する取り扱いと責任範囲を定めています。
第8条(知的財産権)
制作物に関する知的財産権の取り扱いを規定しています。制作者が作成した画像データ等の使用範囲の限定と、クライアントが提供する素材に関する第三者の権利侵害がないことの保証義務を定めています。
第9条(コンテンツの所有権)
制作物の所有権の移転条件を明確化しています。支払い完了をもって所有権が移転するという規定は、制作者側の債権保全の観点から重要です。
第10条(コンテンツの著作権)
著作権の帰属と利用権について詳細に規定しています。制作者が作成・購入した画像データ等の著作権は制作者に帰属し、翻案権や二次的著作物の利用権も含まれることを明確化。クライアントが提供したコンテンツの著作権はクライアントに帰属し、WordPressテーマの著作権は原作者に帰属することを確認しています。
第11条(免責)
制作者が責任を負わない事項を包括的に規定しています。クライアントの過失によるデータ毀損、クライアント提供コンテンツに起因する第三者からの訴訟、閲覧者からのクレーム、サーバー障害による一時的なアクセス不能、掲載商品・サービスの適法性、法律表記の適法性、ビジネス成果の非保証、クライアントによるWordPress操作に起因する不具合などが含まれます。
第12条(秘密情報の取扱い)
業務上知り得た秘密情報の保護と管理について詳細に規定しています。秘密情報の定義と範囲、秘密情報に該当しない例外事項、第三者への漏洩禁止と例外規定、秘密情報の管理義務、目的外使用の禁止、開示先の限定と再委託先への義務付け、契約終了後も存続する義務を明確にしています。
第13条(個人情報)
個人情報保護法に則った個人情報の取り扱いを規定しています。個人情報の第三者漏洩禁止、個人情報提供時の明示義務、最小限の提供と匿名化の努力義務、個人情報の管理義務、目的外使用の禁止、契約終了後の返還・廃棄義務、再委託時の通知・承諾義務と管理責任、契約終了後も存続する義務について詳細に定めています。
第14条(契約解除)
契約解除に関する条件と手続きを規定しています。3か月前の書面による通知での解除権と、制作業務完了前の中途解約の場合の費用負担義務を定めています。
第15条(期限の利益喪失)
相手方に一定の事由が生じた場合の即時解除権について規定しています。法的整理手続きの開始、事業縮小・変更・廃止、公租公課の滞納処分を受けた場合、その他信用悪化と認められる事実の発生などの場合に即時解除が可能です。
第16条(契約の終了)
契約終了時の処理について規定しています。債権債務の清算義務、ドメイン・サーバー契約の引継義務と費用、コンテンツの引渡し方法、編集用ファイルの引渡し義務の否定を明確にしています。
第17条(損害賠償)
契約違反による損害賠償責任について規定しています。賠償額の上限を支払報酬額とすることで、制作者側のリスクを限定しています。
第18条(遅延損害金)
報酬支払の遅延に対する遅延損害金(年率14.5%)を規定しています。
第19条(再委託)
業務の再委託権を規定しています。制作者側の柔軟な業務遂行を可能とする条項です。
第20条(不可抗力)
天災等の不可抗力による義務の不履行について免責する規定です。自然災害から政府の法改正まで幅広く不可抗力事由を列挙しています。
第21条(権利義務譲渡の禁止)
契約上の地位や権利義務の第三者への譲渡を禁止する規定です。当事者間の信頼関係に基づく契約であることを前提としています。
第22条(合意管轄)
訴訟となった場合の管轄裁判所を制作者側の本店所在地とする合意です。
仕様書
別紙仕様書では、ドメインに関する事項、レンタルサーバー契約に関する事項、制作業務の詳細(WordPress導入、プラグイン導入、ページ制作、データ転送・動作確認、ページ制作完了後の業務)、保守業務の詳細について規定しています。仕様書は契約の重要な一部を構成し、実務上の具体的な作業内容や技術的要件を明確にしています。