【1】書式概要
この契約書は、企業がソフトウェアを月額や年額で提供するサブスクリプション型のビジネスモデルで使用する契約書の雛形です。近年、多くの企業がクラウドサービスやSaaSビジネスに参入する中で、継続的な利用料金を徴収しながらソフトウェアサービスを提供する際に必要となる重要な書面となっています。
改正民法に対応した内容となっており、現在の契約実務に即した条項が盛り込まれています。特にインターネット認証が必要なソフトウェアの利用許諾から、料金体系、契約期間の管理、途中解約時の取り扱いまで、実際のビジネス現場で発生する様々な場面を想定した条項構成となっています。
この文書は、ソフトウェア開発会社がクライアント企業に対してシステムを継続提供する場合、クラウド事業者が企業向けサービスを展開する場合、ITベンダーが業務用アプリケーションを定期契約で提供する場合など、幅広い業種で活用できる内容です。Word形式で提供されているため、各社の事業内容や契約条件に応じて自由に編集・カスタマイズが可能となっており、すぐに実務でご利用いただけます。
【2】条文タイトル
第1条(定義) 第2条(使用許諾) 第3条(サブスクリプション) 第4条(契約期間) 第5条(料金) 第6条(保証範囲) 第7条(契約の解除) 第8条(協議) 第9条(裁判管轄)
【3】逐条解説
第1条(定義)
この条文では契約で使用される重要な用語を明確に定めています。特に「本ソフトウェア」の範囲を、プログラム本体だけでなく関連ドキュメントや付属品まで含めて定義することで、後々のトラブルを防いでいます。また、インターネット認証が必要である点を明記することで、オフライン環境では使用できないことを利用者に事前に理解してもらう効果があります。例えば、Adobe Creative Cloudのようなクラウド型ソフトウェアでは、定期的なライセンス認証が必要になります。
第2条(使用許諾)
ソフトウェアの使用権限について定めた条項です。申込者の所属法人内でのみ使用可能とし、ライセンス数の上限を設けることで、無制限な使用を防いでいます。「管理下にある第三者」という表現により、外部委託先での使用も一定条件下で認めつつ、業務目的に限定することで私的利用を排除しています。会計ソフトを導入した企業が、経理部門だけでなく監査法人にも一時的に使用を許可するケースなどが想定されます。
第3条(サブスクリプション)
契約の申込みから成立、解約までの流れを規定しています。申込書による正式な手続きを経ることで、口約束によるトラブルを防止し、途中解約時の料金返却を行わない旨を明記することで事業者の収益安定性を確保しています。販売代理店経由の契約についても別途定めることで、複雑な販売チャネルに対応した条項となっています。例えば、年間契約のCRMシステムを6ヶ月で解約した場合でも、残り6ヶ月分の料金は返金されません。
第4条(契約期間)
ライセンス登録日の翌月1日からの1年間という明確な期間設定により、契約管理を効率化しています。継続契約についても期限内の手続きを義務付けることで、自動更新によるトラブルを防いでいます。契約終了時のソフトウェア削除義務により、不正使用を防止する効果もあります。プロジェクト管理ツールの契約が3月31日に終了した場合、4月1日以降は全てのパソコンからアンインストールする必要があります。
第5条(料金)
価格表による料金設定と変更権限を明記し、継続契約者への優遇措置も規定しています。予告なしの価格変更を可能とすることで、市場状況への迅速な対応を可能にしています。継続割引制度により、長期利用者の囲い込み効果も期待できます。デザインソフトの初年度料金が月額5,000円、2年目以降の継続料金が月額4,000円に設定されているケースなどがあります。
第6条(保証範囲)
契約期間中のソフトウェア更新権利を保証することで、利用者に安心感を提供しています。最新版だけでなく後継製品への権利も含めることで、技術革新への対応力をアピールできます。ウイルス対策ソフトで新しい脅威に対応したアップデートが随時提供される場合や、会計ソフトが税制改正に対応したバージョンアップを行う場合などが該当します。
第7条(契約の解除)
契約違反時の解除権と、解除後の措置を明確に定めています。料金返却を行わない旨を重ねて規定することで、事業者の損失を最小限に抑えています。即座のソフトウェア削除義務により、違反者による継続使用を防止する効果があります。ライセンス規約に違反して社外に無断でソフトウェアを持ち出した場合、契約解除となり既払い料金は返金されません。
第8条(協議)
契約条項で想定されていない事態や解釈の相違が生じた場合の解決方法を定めています。当事者間での話し合いによる解決を優先することで、関係性を維持しながら問題解決を図る姿勢を示しています。システム障害時の損害賠償範囲や、新機能追加時の追加料金について疑義が生じた場合の対応などが想定されます。
第9条(裁判管轄)
万が一訴訟に発展した場合の管轄裁判所を事前に決めておくことで、紛争解決の効率化を図っています。事業者の本社所在地の裁判所を指定することが一般的で、遠方の利用者との紛争時にも対応しやすくなります。東京の本社と大阪の顧客との間で契約トラブルが発生した場合、東京地方裁判所で審理されることになります。
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