【1】書式概要
この契約書は、ソフトウェアを販売している会社が、そのユーザーサポート業務を専門の業者に委託する際に使用する重要な書面です。現代のビジネスにおいて、ソフトウェア製品の販売後のサポート体制は顧客満足度に直結する重要な要素となっています。しかし、自社でサポート体制を構築するには人材確保や教育、設備投資など多大なコストがかかります。
そこで多くの企業が採用しているのが、専門的なノウハウを持つサポート業者への業務委託です。この契約書は、そうした委託関係を明確に定めることで、双方の権利義務を明確化し、トラブルを未然に防ぐための雛型として作成されています。最新の民法改正にも対応しており、現在の法制度に準拠した内容となっています。
具体的な使用場面としては、ソフトウェア開発会社がパッケージソフトの電話サポートを外部に委託する場合、SaaS事業者がカスタマーサポートを専門業者に依頼する場合、システムインテグレーターが納品後の保守サポートを分離して委託する場合などが挙げられます。また、スタートアップ企業が限られたリソースでサポート体制を整備したい場合にも重宝されています。
この雛型はWord形式で提供されているため、お客様の具体的な事業内容に合わせて条項の追加や修正を容易に行うことができます。契約期間、委託料金、サポート時間などの詳細部分は空欄になっており、実際の取引条件に応じてカスタマイズが可能です。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(本件ソフトウェア) 第3条(本件業務の内容) 第4条(業務報告) 第5条(本件業務の体制) 第6条(対象除外) 第7条(業務委託料) 第8条(情報開示) 第9条(貸与品) 第10条(権利侵害) 第11条(知的財産権) 第12条(秘密保持) 第13条(有効期間) 第14条(解除) 第15条(協議事項) 第16条(合意管轄)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条項では契約の基本的な枠組みを定めています。委託者(甲)が受託者(乙)に対してユーザーサポート業務を依頼し、受託者がこれを引き受けるという合意の骨格を明確にしています。ここで重要なのは「委託」という性質を明確にしていることで、これにより雇用関係ではなく対等な事業者間の取引であることが示されます。
第2条(本件ソフトウェア)
サポート対象となるソフトウェアを具体的に特定する条項です。実務では製品名と管理番号を明記することで、どの製品についてサポートを行うのかを明確にします。例えば会計ソフト、在庫管理システム、顧客管理ツールなど、複数の製品を扱う場合にはそれぞれを列挙することになります。
第3条(本件業務の内容)
サポート業務の具体的な内容と条件を定める最も重要な条項の一つです。対応方法(電話、FAX、メール)、営業時間、定期報告の仕組みなどが詳細に規定されています。特に苦情対応については即座に報告する仕組みを設けており、顧客満足度の維持に配慮した内容となっています。
第4条(業務報告)
委託者が受託者の業務状況を把握するための報告制度を定めています。これにより委託者は適切な品質管理を行うことができ、必要に応じて改善指導も可能になります。報告方法も柔軟に設定されており、状況に応じて書面やデジタル形式、口頭での報告も認めています。
第5条(本件業務の体制)
受託者が適切な人員体制を維持する義務を定めています。サポート業務は継続性が重要であり、担当者の急な退職や体調不良によってサービスが停止することを防ぐための条項です。実際には複数名でのローテーション体制や代替要員の確保が求められることになります。
第6条(対象除外)
サポート範囲の限界を明確に定めることで、後のトラブルを防ぐ重要な条項です。例えばソフトウェアを改造した場合のトラブルや、推奨環境外での使用による問題については対応範囲外とすることで、受託者の負担を適切に制限しています。
第7条(業務委託料)
委託料の金額と支払方法を定める条項です。月額制とすることで予算管理がしやすくなり、翌月末払いという条件は一般的なビジネス慣行に合致しています。振込手数料を委託者負担とすることで、受託者の実際の収入が確保されます。
第8条(情報開示)
受託者が適切なサポートを行うために必要な技術情報の提供について定めています。プログラムの仕様書や操作マニュアルなどの開示により、受託者は質の高いサポートを提供できるようになります。この情報共有は契約の成功に不可欠な要素です。
第9条(貸与品)
委託者から受託者への機器等の貸与について詳細に規定しています。テスト用のパソコンやソフトウェアライセンスなどが典型例です。複製や第三者への譲渡を禁止することで知的財産権を保護し、善管注意義務により適切な管理を求めています。
第10条(権利侵害)
第三者との紛争が発生した場合の責任分担を定めています。基本的には受託者が対応しますが、委託者の指示や製品の仕様に起因する問題については委託者が責任を負うという合理的な分担になっています。これにより不当な責任の押し付けを防いでいます。
第11条(知的財産権)
業務遂行中に生まれた新しいアイデアや改良点などの知的財産権の帰属を明確にしています。委託者に帰属させることで、将来的な製品改良や他の業務への応用が可能になります。これは委託契約では一般的な取り決めです。
第12条(秘密保持)
相互の秘密情報保護について詳細に規定した重要な条項です。技術情報だけでなく営業上の秘密も対象とし、公知情報や独自開発情報は除外するなど、実務的な配慮がなされています。情報漏洩は両者にとって致命的な損害となる可能性があるため、厳格な管理が求められます。
第13条(有効期間)
契約期間と自動更新の仕組みを定めています。一定期間前に終了の意思表示がない限り自動更新されるため、継続的な取引関係の維持が図られます。この仕組みにより、毎年の契約更新手続きの負担を軽減できます。
第14条(解除)
契約解除の要件と効果を定めています。受託者の義務違反があった場合の解除権と、無断での再委託を禁止する条項が含まれています。再委託については事前承諾制とし、承諾した場合でも受託者の責任は免責されないという厳格な規定になっています。
第15条(協議事項)
契約で定めていない事項や疑義が生じた場合の解決方法を定めています。まずは当事者間での話し合いによる解決を目指すという、一般的な紛争解決の第一段階を規定しています。多くの問題はこの段階で解決可能です。
第16条(合意管轄)
協議で解決できない場合の裁判管轄を事前に定めています。特定の地方裁判所を専属管轄とすることで、紛争が生じた際の手続きを明確化し、当事者の予見可能性を高めています。これにより訴訟費用や時間の見通しも立てやすくなります。
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