【1】書式概要
この契約書は、建物オーナーが不動産管理会社などにアパートやマンションを一括して貸し出し、その会社が入居者に転貸する「サブリース」という仕組みを実現するための契約書です。近年の民法改正にもきちんと対応しており、連帯保証人を付けない形式で作成されています。
不動産投資をされているオーナー様にとって、空室リスクを回避しながら安定した家賃収入を得る手段として、サブリース契約は非常に有効な選択肢となっています。また、不動産管理会社にとっても、建物を一括で借り上げることで効率的な賃貸運営が可能になります。
この契約書は、物件の詳細情報から賃料の支払い方法、契約期間、修繕責任の分担、契約解除の条件まで、サブリース契約に必要な全ての項目を網羅しています。敷金の取り扱いや転貸条件、建物の維持管理責任なども明確に定められており、後々のトラブルを未然に防ぐ内容となっています。
実際の使用場面としては、アパートやマンションのオーナーが管理会社との間で結ぶ原契約として使用されます。また、不動産管理会社が新規のサブリース事業を展開する際の基本契約書としても活用できます。Word形式で提供されているため、物件の詳細や契約条件に応じて自由に編集・カスタマイズが可能です。
【2】条文タイトル
第1条(目的物) 第2条(契約期間) 第3条(引渡日) 第4条(使用目的) 第5条(賃料) 第6条(賃料支払義務発生日) 第7条(敷金) 第8条(転貸の条件等) 第9条(乙の建物維持管理) 第10条(禁止または制限される行為) 第11条(修繕) 第12条(甲の通知義務) 第13条(契約の解除) 第14条(期間内の解約) 第15条(本物件の返還) 第16条(地位の承継) 第17条(協議) 第18条(合意管轄) 第19条(自己使用特約)
【3】逐条解説
第1条(目的物)
賃貸借の対象となる建物について、所在地、構造、面積、住戸の詳細などを明確に記載する条文です。建物名称から敷地面積、建築面積、延べ面積まで詳細に定めることで、契約対象を特定します。住戸部分については別表で間取りや戸数を記載し、駐車場や自転車置場などの附属施設の有無も明記します。例えば「○○マンション、鉄筋コンクリート造5階建30戸、駐車場20台分含む」といった具体的な記載が必要です。
第2条(契約期間)
契約の開始日と終了日を定める条文で、サブリース契約の基本的な期間を設定します。一般的に1年から5年程度の期間で設定されることが多く、双方の合意により更新も可能です。例えば「令和6年4月1日から令和11年3月31日まで」といった具体的な期日を記載します。
第3条(引渡日)
建物オーナーが管理会社に物件を引き渡す具体的な日付を定めます。この日から管理会社の占有が開始され、転貸業務も開始されます。引渡しが遅れた場合の損害賠償責任についても規定しており、例えば引渡日に引渡しができない場合、その後の転貸収入の損失などが損害として計算されます。
第4条(使用目的)
管理会社が借り受けた建物を「居住のみ」を目的として転貸することを明確に定めています。これにより、事務所や店舗などの用途での転貸を禁止し、住宅としての使用に限定しています。
第5条(賃料)
オーナーが受け取る賃料の金額、支払日、支払方法を詳細に定めます。一般的に「当月分を毎月末日まで」や「翌月分を毎月25日まで」といった支払期限が設定されます。振込先の金融機関、口座番号、口座名義まで具体的に記載し、支払い方法を明確にします。
第6条(賃料支払義務発生日)
賃料の支払い義務がいつから発生するかを定めた条文です。通常は物件の引渡日から賃料支払い義務が始まります。例えば4月1日に引渡しを受けた場合、4月1日から賃料が発生することになります。
第7条(敷金)
管理会社が預け入れる敷金の金額と取り扱いを定めています。一般的に賃料の1~3ヶ月分程度が設定されます。契約終了時の敷金返還についても規定しており、賃料滞納や修繕費用がある場合の差し引きルールも明確にしています。
第8条(転貸の条件等)
管理会社が入居者に転貸する際の条件を詳細に定めています。転貸借契約であることの開示義務、普通賃貸借契約に限定するか定期賃貸借契約も可能かなど、転貸方法について具体的な条件を設定します。
第9条(乙の建物維持管理)
管理会社が行うべき建物の維持管理業務を定めています。共用部分の清掃、設備点検、植栽管理など、サブリース業務に必要な管理業務を明確にしています。
第10条(禁止または制限される行為)
管理会社が行ってはいけない行為を定めています。賃借権の譲渡や建物の改築、増築などはオーナーの書面による承諾が必要とされています。
第11条(修繕)
修繕責任の分担を明確に定めた重要な条文です。オーナー負担の修繕と管理会社負担の修繕を区別し、電球交換や畳表の取替えなど軽微な修繕は管理会社負担とするのが一般的です。
第12条(甲の通知義務)
オーナーが物件を売却する場合や抵当権が実行される場合など、契約に影響する重要な事項について管理会社に通知する義務を定めています。
第13条(契約の解除)
契約解除の条件を定めた条文です。賃料の支払い遅延や使用目的違反など、管理会社の義務違反があった場合の解除手続きについて規定しています。
第14条(期間内の解約)
管理会社から契約を解約する場合の手続きを定めています。6ヶ月前の解約申し入れが必要とされており、急な解約による影響を最小限に抑える配慮がされています。
第15条(本物件の返還)
契約終了時の物件返還について定めています。通常の使用による損耗を除いて原状回復する義務や、空室部分の返還についても規定しています。
第16条(地位の承継)
契約終了時に、管理会社の転貸人としての地位をオーナーが承継することを定めています。入居者との契約関係や敷金の引き継ぎについても規定しています。
第17条(協議)
契約に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の解決方法を定めています。民法などの関連法令に従って誠実に協議することが求められています。
第18条(合意管轄)
契約に関する紛争が発生した場合の裁判管轄を定めています。通常は物件所在地の地方裁判所が指定されます。
第19条(自己使用特約)
特約条項として、オーナー自身が物件を使用することを認める条文です。通常の転貸目的とは異なる使用形態を認める特別な規定となっています。
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