【１】書式概要　

この書式は、企業が職場でのハラスメントを防止するために策定する社内方針書のテンプレートです。2020年に施行された改正労働施策総合推進法により、すべての企業にハラスメント防止措置が義務付けられており、この書式はその要求に応える実用的なツールとなっています。

現代の企業経営において、職場でのパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児・介護関連のハラスメントは深刻な経営リスクとなっており、適切な対応策が求められています。この方針書テンプレートは、そうした課題に直面する人事担当者や経営陣の皆様にとって、即座に活用できる実践的な解決策を提供します。

使用場面としては、新規事業立ち上げ時の社内規程整備、既存企業でのハラスメント対策見直し、労働基準監督署からの指導への対応、社内研修資料の作成基盤、就業規則の付属文書作成などが挙げられます。特に中小企業では人事部門のリソースが限られがちですが、この書式があれば専門知識がなくても適切な方針書を短時間で作成できます。

Word形式で提供されているため、会社名や具体的な相談窓口情報など、各企業の実情に合わせて自由に編集・カスタマイズが可能です。また、将来的な法改正や社内制度の変更にも柔軟に対応できる構造となっており、長期的にご活用いただけます。

【２】逐条解説

第1条（基本理念）

この条文は企業姿勢の根幹を示す重要な部分です。人権尊重と多様性受容を明記することで、現代社会が求める包括的な職場環境づくりへの意識を表明しています。例えば、性別や年齢、国籍、価値観の違いを認め合う風土づくりが、結果的にハラスメント防止につながるという考え方が背景にあります。実際の運用では、採用活動や人事評価の場面でも、この理念が一貫して適用されることが期待されます。

第2条（禁止事項）

企業の断固たる姿勢を示す宣言条項です。「許しません」という強い表現により、会社としての明確な意思を従業員に伝えています。この条文があることで、万が一ハラスメント事案が発生した際も、会社が事前に予防的措置を講じていたという証拠にもなります。日常的には、管理職研修や新入社員オリエンテーションで必ず触れるべき重要な部分といえるでしょう。

第3条（ハラスメント行為の定義）

最も実務的で重要な条文です。パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児・介護関連ハラスメント、そしてモラルハラスメントという4つの類型に分けて定義しています。特に注目すべきは「これらに限定されるものではありません」という文言で、新たなハラスメント形態にも対応できる柔軟性を保っています。例えば、近年問題となっているSNSでの誹謗中傷や、リモートワーク環境でのハラスメントなども、この包括的な定義により対応可能です。

第4条（相談体制）

実効性を担保する重要な仕組みです。相談窓口の設置だけでなく、「生じる可能性がある場合」も対象とすることで、予防的な相談も受け付ける姿勢を示しています。これにより、深刻化する前の早期対応が可能になります。実務では、相談窓口の担当者選定や外部機関との連携体制構築が重要になってきます。匿名相談の受付方法や、相談者のプライバシー保護措置なども併せて検討する必要があります。

第5条（対応措置）

発生した事案への対処方針を示す条文です。懲戒処分という厳格な対応と、被害者保護のための環境改善措置の両面を明記している点が特徴的です。実際の運用では、事実関係の調査方法、関係者への聞き取り手順、証拠保全の方法などを事前に整備しておく必要があります。また、加害者の異動や被害者の希望に応じた配置転換など、具体的な救済措置の選択肢も用意しておくことが求められます。

第6条（予防措置）

継続的な取り組みを規定する条文です。啓発・研修という予防的アプローチにより、ハラスメントが発生しにくい職場風土の醸成を目指しています。年間研修計画の策定、管理職向け特別研修の実施、ハラスメント防止月間の設定など、具体的な取り組みに発展させることができます。また、職場環境の定期的なアンケート調査や、従業員の意識調査なども、この条文に基づく予防活動として位置づけることが可能です。