【1】書式概要
このテンプレートは、ホストクラブ経営者様とホスト従業員様の間で、ホストの体調不良や自己管理不足による就労不能が発生した際の営業損失に関する示談交渉をスムーズに進めるために作成されました。
ホスト業界では、人気ホストの突然の欠勤は顧客離れや売上減少に直結するリスクがあります。本テンプレートを活用することで、経営者側は適切な損失補償を求める根拠を明確にし、従業員側は公平な条件での示談が可能となります。
テンプレートには、事案の経緯、損害額の算定方法、示談金の支払い条件、分割払いの特約、今後の就労条件、秘密保持義務など、トラブル解決に必要な条項が網羅されています。実際の使用にあたっては、具体的な金額や期日、個人情報を記入するだけで、専門的な法律知識がなくても適切な示談書を作成できるよう設計されています。
特に「第5条(今後の就労について)」では再発防止と将来の雇用関係についても明確に定めており、単なる金銭的解決だけでなく、持続可能な雇用関係の構築にも配慮しています。
店舗経営の安定化と従業員の健康管理意識向上の両面から、未然にリスクを軽減するためのコミュニケーションツールとしても有効です。実際の使用前には顧問弁護士等の専門家による確認をお勧めします。
【2】逐条解説
前文
この部分では契約の当事者である「甲」(ホストクラブを経営する会社)と「乙」(ホスト従業員)を明確に特定しています。両者の間で示談が成立したことを確認する導入部分となります。示談書作成において、当事者を明確にすることは基本中の基本です。
第1条(経緯)
本条では事案の背景と経緯を時系列で整理しています。 1項では乙の立場(ホストとしての就労関係)を明確にしています。 2項では乙が自己管理不足により体調を崩し、医師の診断に基づき就労不能となった期間を特定します。 3項では、その結果として顧客減少と営業損失が発生したという因果関係を明記しています。 経緯を明確に記載することで、後日の解釈の違いや紛争を防止する効果があります。
第2条(損害額)
本条では損害額の確定と合意について規定しています。 1項では甲が算定した営業損失額を金額で明示しています。 2項では乙がその損害額を認めることを明記し、金額に関する合意を文書化しています。 損害額の合意は示談の核心部分であり、後日の紛争を防ぐために重要です。
第3条(示談金)
本条では実際の支払いに関する取り決めを規定しています。 1項では、乙が支払う示談金の金額を明記しています(損害額全額ではなく一部とする場合が多い)。 2項では、支払い方法、期限、振込先口座情報、手数料負担について明確にしています。 具体的な支払い条件を明記することで、履行の確実性を高めています。
第4条(分割払いの特約)
本条は任意条項で、状況に応じて使用することを想定しています。 1項では、分割払いの具体的なスケジュールと金額を明記しています。 2項は期限の利益喪失条項で、一度でも支払いが遅れた場合の厳しい制裁を規定しています。 この条項により分割払いの確実な履行を促進する効果があります。
第5条(今後の就労について)
本条では将来に向けた行動規範を定めています。 1項では乙の健康管理義務と再発防止の努力義務を規定しています。 2項では体調不良時の報告義務と甲の指示に従う義務を明記しています。 3項では再発した場合の雇用契約解除権を甲に与えています。 金銭的解決だけでなく、再発防止と将来の関係性も規定する点が特徴的です。
第6条(権利放棄)
本条は示談の本質的効果を規定しています。示談金支払いなどの条件が履行されることを条件に、甲は追加請求権を放棄することを明記しています。これにより乙は追加請求のリスクから解放されます。
第7条(秘密保持)
本条では示談内容の秘密保持義務を双方に課しています。ホスト業界の性質上、風評被害防止のために重要な条項です。法令に基づく場合は例外としている点も実務的です。
第8条(合意管轄)
万が一紛争が生じた場合の裁判管轄を東京地方裁判所と定めています。予め管轄裁判所を合意しておくことで、紛争時の手続きを円滑にする効果があります。
締結部
示談書の最後には、合意内容に相違ないことの確認と、正本を2通作成して各自保有することを明記しています。最後に日付と当事者の署名捺印欄を設けて、文書の正式性と成立時期を明確にしています。
この示談書は、ホスト業界特有の問題に対応しつつ、法的な要件を満たす実務的な内容となっています。実際の使用にあたっては個別状況に応じたカスタマイズと、法律専門家の確認をお勧めします。