【1】書式概要
この示談書は、店舗を経営する事業者と、その店舗で利用規約に違反する行為を行った顧客との間で締結する和解契約書です。飲食店、小売店、美容室、エステサロン、風俗店、キャバクラ、スナックなど、様々な店舗業態で発生しがちな顧客トラブルを円満に解決するための重要なツールとなります。
近年、SNSの普及により店舗での迷惑行為が拡散されやすくなったことで、多くの店舗経営者が顧客トラブルへの対応に頭を悩ませています。この書式は、そうした問題を抱える経営者の方々が、適切な損害賠償を求めながらも、長期的な争いを避けて事態を収束させることを可能にします。
実際の使用場面としては、迷惑行為を行った顧客に対して損害賠償を請求する際や、今後の来店禁止を約束させる際、さらには問題の拡散を防ぐための秘密保持を求める際などが挙げられます。改正民法に対応した内容となっているため、現在の情勢に即した有効な合意を形成できます。
【2】条文タイトル
第1条(違反行為の確認)
第2条(損害賠償金)
第3条(支払遅延時の処理)
第4条(証拠物の確認及び処分)
第5条(秘密保持)
第6条(再発防止)
第7条(損害賠償)
第8条(解決条項)
【3】逐条解説
第1条(違反行為の確認)の解説
この条項は示談の前提となる事実関係を明確にする重要な規定です。顧客側に違反行為があったことを認めさせることで、後々の争いの芽を摘み取ります。たとえば、飲食店で大声で騒いだり、他の客に迷惑をかけたりした場合、その事実と損害の発生を明確に認めさせる内容になっています。単に「何かあった」というあいまいな認識ではなく、具体的な日時や規約の条項まで特定することで、合意の有効性を高めています。
第2条(損害賠償金)の解説
損害賠償の金額と支払方法を定める核心的な条項です。店舗が被った実際の損害を金銭で回復することを目的としています。銀行振込による支払いを原則とし、振込手数料まで違反者負担とすることで、店舗側の負担を最小限に抑える配慮がなされています。美容室で器具を破損された場合や、小売店で商品を汚損された場合など、具体的な損害額を算定して記載することになります。
第3条(支払遅延時の処理)の解説
約束された支払いが守られなかった場合の対応を定めた条項で、年14.6パーセントという遅延損害金の利率は改正民法の規定に準拠しています。さらに重要なのは、支払い遅延があった場合に示談そのものを解除できる旨を定めている点です。これにより、支払いを怠った相手方に対して改めて損害賠償請求ができる道筋を確保しています。
第4条(証拠物の確認及び処分)の解説
違反行為に使用された物品やデータの処理について定めた実務的な条項です。たとえば、店内で無断撮影された写真や動画データがある場合、それらを確実に回収・破棄することで、後々の二次被害を防止します。物品の引き渡しと破棄を相手方の面前で行うことで、確実性を担保している点が特徴的です。
第5条(秘密保持)の解説
示談の内容や事件そのものについて、第三者への口外を禁止する条項です。SNS時代においては特に重要な規定で、違反者が事件の詳細をネット上で拡散することを防ぎます。レストランでのトラブルが炎上騒ぎに発展することを防ぐなど、店舗の評判を守るための重要な仕組みです。
第6条(再発防止)の解説
同様の違反行為の再発防止と来店禁止を約束させる条項です。問題を起こした顧客の再来店を完全に遮断することで、店舗の安全な営業環境を保護します。エステサロンで迷惑行為を行った顧客の再来店を防ぐなど、他の顧客への配慮も含んだ重要な規定となっています。
第7条(損害賠償)の解説
示談書の各条項に違反した場合の違約金について定めた条項で、第2条の損害賠償とは別の制裁措置です。秘密保持義務違反や再来店などがあった場合の違約金を定めることで、示談の実効性を高めています。実際の損害がより大きな場合には、違約金を超える部分も請求できる仕組みになっています。
第8条(解決条項)の解説
示談の成立により、当事者間の全ての争いが解決されることを確認する最終的な条項です。店舗側は示談条項が履行されることを条件として、民事・刑事の両面で一切の請求権を放棄することを明記しています。これにより、双方にとって紛争の完全な終結が図られ、将来的な蒸し返しを防ぐ効果があります。