【1】書式概要
夜の接客業において発生しがちな迷惑行為やトラブルに対応するための法的文書です。この示談書テンプレートは、キャバクラやクラブなどの接客業で働く方々を守るために、法的実効性を考慮して作成されました。
暴言、暴力、不適切な要求、ストーカー行為などの様々な迷惑行為に対して包括的に対応できる内容となっています。
本テンプレートは全20条からなり、接触禁止、接近禁止、連絡禁止などの具体的な行動制限から、プライバシー保護、肖像権の取り扱いまで詳細に規定しています。
示談金や損害賠償の項目も含まれており、精神的苦痛だけでなく実害についても適切に補償を求める内容です。また、違反時の救済措置や裁判管轄についても明記されているため、万一の際の対応も明確です。
特に第三者(保証人)を介した連帯責任の仕組みを導入することで、示談金の支払いや合意内容の遵守に実効性を持たせています。
現場の実態を考慮した実用的な条項構成で、記入欄も明確に設けられており、すぐに利用可能な形式となっています。
店舗経営者の方はもちろん、従業員を守るための店舗ポリシー作りや、実際のトラブル解決の場面で活用いただけます。安心して働ける環境づくりのための一助として、ぜひご活用ください。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(事実の確認)
第3条(謝罪)
第4条(接触の禁止)
第5条(接近禁止)
第6条(連絡の禁止)
第7条(第三者を通じた接触の禁止)
第8条(プライバシー保護)
第9条(肖像等の取扱い)
第10条(示談金)
第11条(損害賠償)
第12条(誓約事項の継続期間)
第13条(違約条項)
第14条(救済措置)
第15条(刑事告訴等について)
第16条(秘密保持)
第17条(丙の立場及び責任)
第18条(通知)
第19条(完全合意)
第20条(管轄裁判所)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条文は示談書の目的を明確にしています。「本件行為」という用語を定義し、この文書が加害者(甲)と被害者(乙)間の紛争を平和的に解決するためのものであることを明示しています。これにより、示談書全体の意図と方向性が示されます。
第2条(事実の確認)
加害者が具体的にどのような行為を行ったかを記録するための条文です。発生日時、場所、具体的な行為内容を明記することで、何についての示談なのかを明確にします。また、加害者がその行為を認め、反省していることを明示する機能もあります。
第3条(謝罪)
加害者の謝罪を明文化する条文です。単なる形式的な謝罪だけでなく、その行為が社会的に許されないものであり、被害者の人格権を侵害するものであったという認識も含まれています。これにより、謝罪の真摯さを担保しています。
第4条(接触の禁止)
加害者が今後行ってはならない行為を具体的に列挙しています。暴言や暴力といった直接的な迷惑行為から、ストーカー行為、その他被害者の生活や業務を妨げる行為まで、幅広く禁止しています。これにより、被害者の安全と平穏を保護します。
第5条(接近禁止)
被害者の生活圏への接近を具体的な距離(メートル単位)で禁止する条文です。自宅、勤務先、日常的に利用する施設それぞれについて明確な距離制限を設けることで、被害者のプライバシーと安全を確保します。
第6条(連絡の禁止)
あらゆる通信手段による連絡を禁止する条文です。電話、メール、手紙などの伝統的な通信手段だけでなく、SNSといった現代的な通信手段も具体的に列挙し、包括的に禁止しています。これにより、被害者への精神的な干渉を防ぎます。
第7条(第三者を通じた接触の禁止)
直接的な接触だけでなく、第三者を介した間接的な接触も禁止する条文です。この「第三者を通じた接触」の具体例も列挙されており、抜け道を防ぐ役割を果たしています。
第8条(プライバシー保護)
被害者のプライバシー関連情報の保護に関する条文です。「プライバシーに関する情報」の範囲を明確にすることで、個人情報だけでなく家族構成や交友関係、職業情報、さらには本件行為に関する情報まで保護します。
第9条(肖像等の取扱い)
被害者の肖像や個人情報の取り扱いに関する条文です。インターネット上での公開禁止だけでなく、加害者が保有する被害者の肖像や個人情報を破棄する義務、さらにはその破棄完了の報告義務まで規定しています。
第10条(示談金)
被害の賠償に関する金銭的な合意を定める条文です。示談金の額、支払い期限、支払い方法(振込先情報)まで具体的に規定し、振込手数料は加害者負担であることも明示しています。
第11条(損害賠償)
被害者が被った具体的な損害の内訳を明記する条文です。治療費、休業損害、その他の損害を項目別に記載することで、示談金の根拠を明確にしています。また、これらの損害賠償金が示談金に含まれることも明示しています。
第12条(誓約事項の継続期間)
示談書内の誓約事項(第4条から第9条)の効力がどれだけ続くかを定める条文です。5年間の明確な期間を設定すると同時に、その期間満了後も被害者の平穏な生活を尊重する一般的義務を規定しています。
第13条(違約条項)
加害者が誓約事項に違反した場合の制裁を定める条文です。違約金の支払い義務を明示するとともに、それが実損害の賠償請求や法的措置を妨げるものではないことも規定しています。
第14条(救済措置)
加害者が示談書の内容に違反した場合に被害者が取りうる具体的な救済措置を列挙しています。警察への届け出から刑事告訴、民事訴訟、さらにはストーカー規制法に基づく措置まで、幅広い法的手段が明示されています。
第15条(刑事告訴等について)
被害者が刑事告訴を行わない条件と、違反時に刑事告訴できる権利を規定した条文です。示談書の内容が誠実に履行されることを条件に刑事告訴を控えるという合意を明確にしています。
第16条(秘密保持)
示談書の内容と本件に関する秘密保持義務を定める条文です。秘密保持義務の期間(示談書の有効期間中および終了後も継続)も明示されており、プライバシー保護を強化しています。
第17条(丙の立場及び責任)
保証人(丙)の立場と責任を定める条文です。丙が監督者としての役割を持つこと、および加害者が金銭の支払いを怠った場合に連帯して支払い義務を負うことを明示しています。
第18条(通知)
示談書に関する連絡方法を規定する条文です。通知は書面で行うこと、および住所変更時の通知義務(14日以内)を定めることで、円滑な連絡体制を確保しています。
第19条(完全合意)
この示談書が当事者間の完全な合意を構成し、以前の口頭または書面による合意に優先することを明示する条文です。これにより、法的な安定性と明確性を確保しています。
第20条(管轄裁判所)
紛争発生時の管轄裁判所を定める条文です。特定の地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることで、万一の紛争時の手続きを明確にしています。
この示談書は、キャバクラ営業特有の問題に対応しつつも、法的実効性と具体性を重視した構成となっています。加害者の行為制限、被害者の保護、そして保証人による監督という三者の関係を明確に規定することで、実効性のある解決策を提供しています。