第1条(委託業務の内容)
第2条(制作工程及び納期)
第3条(委託料金)
第4条(修正及び変更)
第5条(制作物の確認及び検査)
第6条(知的財産権)
第7条(第三者の権利侵害)
第8条(機密保持)
第9条(再委託の禁止)
第10条(納期遅延)
第11条(契約の解除)
第12条(損害賠償)
第13条(データの保存及び返還)
第14条(不可抗力)
第15条(一般条項)
【3】逐条解説
第1条(委託業務の内容)
制作するデザインの具体的な内容を明確に定める条項です。ロゴ制作なのか、パンフレット制作なのか、ウェブサイトデザインなのかを具体的に特定し、別紙仕様書で詳細を定めることで後々の認識違いを防ぎます。例えば「A4サイズの会社案内パンフレット8ページ、カラー印刷用データ」といった具体的な仕様を記載することが重要です。
第2条(制作工程及び納期)
デザイン制作の流れと各段階での期限を設定する条項です。一般的にはラフ案提出、修正案提出、最終納品の3段階で進行し、各段階での確認期間も明記されています。例えば、ロゴ制作であれば「ラフ案3案提出→7日以内に選定→修正案提出→3日以内に最終承認→完成データ納品」といったスケジュールが設定されます。
第3条(委託料金)
制作費用の金額と支払い方法を定める条項です。着手金と完成時支払いの2回払いが一般的で、例えば50万円の制作費であれば着手金30%の15万円を契約時に、残り35万円を完成時に支払うといった設定が可能です。振込手数料の負担者も明記されており、通常は発注者負担となっています。
第4条(修正及び変更)
制作過程での修正回数と追加料金について定める条項です。無制限の修正要求を防ぐため、各段階で修正回数の上限を設けています。例えば「ラフ案段階で2回、修正案段階で1回まで無償修正可能」といった制限により、制作者の負担を適正に管理できます。
第5条(制作物の確認及び検査)
完成品の検査期間と承認手続きを定める条項です。発注者は納品後一定期間内に検査を行い、問題があれば通知する必要があります。期間内に何も連絡がなければ自動的に承認されたものとみなされるため、発注者は注意深く確認する必要があります。
第6条(知的財産権)
最も重要な著作権の帰属を定める条項です。制作物の著作権を発注者に譲渡するか、制作者が保持して使用許諾するかを明確に定めます。企業ロゴのように独占的に使用したい場合は著作権譲渡を、一般的な販促物であれば使用許諾でも十分な場合があります。
第7条(第三者の権利侵害)
制作物が他者の著作権や商標権を侵害しないことを保証する条項です。例えば、既存の有名ロゴに酷似したデザインを制作してしまった場合、制作者が損害賠償責任を負うことになります。制作者にとってはリスクの高い条項ですが、発注者の安心につながります。
第8条(機密保持)
制作過程で知り得た企業秘密や個人情報の保護を定める条項です。新商品のロゴ制作や企業の内部資料を使用したパンフレット制作など、機密性の高い案件では特に重要な条項となります。契約終了後も一定期間継続する点がポイントです。
第9条(再委託の禁止)
制作者が勝手に業務を他者に丸投げすることを禁止する条項です。発注者は特定の制作者の技術やセンスを期待して依頼するため、無断で再委託されることを防ぎます。ただし、印刷作業など一部の工程については事前承諾により可能とする場合もあります。
第10条(納期遅延)
制作者が納期に遅れた場合の違約金について定める条項です。例えば1日遅延につき制作費の1%を違約金として支払うといった設定により、納期管理の重要性を明確にします。ただし、天災などの不可抗力による遅延は免責されます。
第11条(契約の解除)
重大な契約違反があった場合の解除条件を定める条項です。支払い遅延、業務放棄、会社の経営破綻などの場合に、相手方に催告することなく即座に契約を終了できます。デザイン制作のような信頼関係が重要な業務では必要不可欠な条項です。
第12条(損害賠償)
契約違反による損害賠償の範囲と上限を定める条項です。一般的には制作費を上限として設定されており、過度な賠償リスクを避けています。ただし、故意や重大な過失がある場合はこの制限が適用されない点に注意が必要です。
第13条(データの保存及び返還)
制作データの保存期間と返還について定める条項です。制作者は完成後も一定期間データを保管し、発注者の求めに応じて提供する義務があります。また、発注者から借用した資料は速やかに返却することが定められています。
第14条(不可抗力)
地震や法改正など、双方の責任ではない事由による履行不能を定める条項です。新型コロナウイルスのような予期できない事態により制作が困難になった場合、当事者の責任が免除される重要な条項です。
第15条(一般条項)
契約全体に関する基本的な取り決めをまとめた条項です。準拠法、管轄裁判所、契約変更の方法など、実務上重要な事項が含まれています。トラブル時の解決方法も明記されており、円滑な紛争解決に役立ちます。
【4】活用アドバイス
この契約書を効果的に活用するためには、まず案件の規模や内容に応じて条項を調整することが重要です。小規模なロゴ制作であれば簡素化し、大規模なブランディングプロジェクトであれば詳細な仕様書を添付するなど、柔軟な運用を心がけましょう。
特に重要なのは第6条の著作権の帰属先を事前にしっかりと検討することです。企業のコーポレートアイデンティティに関わるデザインは著作権譲渡を、一時的な販促物は使用許諾でも十分な場合があります。また、修正回数や納期についても、制作の複雑さや緊急度に応じて現実的な設定を行うことで、双方にとって無理のない制作進行が可能になります。
契約締結前には必ず相手方と条項の内容について十分に話し合い、お互いの理解を深めておくことをお勧めします。特に初回取引の場合は、制作工程や品質基準について詳しく説明し合うことで、後々のトラブルを大幅に減らすことができます。
【5】この文書を利用するメリット
この契約書を使用することで、デザイン制作における最大のリスクである「認識の相違」を効果的に防ぐことができます。制作範囲、修正回数、納期、料金などが明文化されているため、制作開始後の「そんな話は聞いていない」といったトラブルを大幅に減らせます。
著作権の帰属が明確に定められているため、完成後に「このデザインを他の用途に使用したい」「商標登録を行いたい」といった場面でも安心です。また、第三者の権利侵害に対する保証条項により、後から著作権侵害で訴えられるリスクも軽減されます。
制作者側にとっても、業務範囲が明確になることで適正な対価を得られ、無制限の修正要求を回避できるメリットがあります。機密保持条項により企業の重要情報を扱う案件も安心して受注でき、事業拡大につながります。
さらに、Word形式で提供されているため、案件ごとに条項をカスタマイズでき、一度の購入で長期間にわたって活用できる経済性も大きな魅力です。