【1】書式概要
この誓約書は、探偵事務所や調査会社が依頼者から調査を受託する際に、後々のトラブルを防ぐために作成された専用の書式です。近年、統合失調症などの精神疾患による妄想や幻覚を根拠とした調査依頼が増加しており、悪質な探偵業者がこうした依頼者から法外な料金を搾取する事件が社会問題となっています。
この書式を使用することで、探偵事務所は依頼者が適切な判断能力を持って契約を締結していることを確認でき、万が一のトラブル時にも自社を守ることができます。また、依頼者にとっても契約内容を冷静に検討する機会を提供し、衝動的な契約を防止する効果があります。
実際の使用場面としては、浮気調査、素行調査、所在調査、企業信用調査、盗聴器発見調査、ストーカー対策調査など、あらゆる民間調査業務の契約時に活用できます。特に高額な調査費用が発生する可能性がある案件や、依頼内容に現実性の疑問がある場合には必須の書式といえるでしょう。
【2】条文タイトル
第1条(判断能力について)
第2条(虚偽申告の禁止)
第3条(医療機関での診断について)
第4条(第三者への相談)
第5条(調査費用の理解)
第6条(契約解除権の理解)
第7条(責任の所在)
第8条(その他)
【3】逐条解説
第1条(判断能力について)の解説
この条項は誓約書の核心部分であり、依頼者が正常な判断能力を有していることを確認させる内容です。統合失調症の急性期では現実認識が困難になることがあるため、契約時点での判断能力を明確にしておく必要があります。例えば「隣人が24時間監視している」といった妄想に基づく調査依頼の場合、この条項によって依頼者自身に冷静な判断を促すことができます。
第2条(虚偽申告の禁止)の解説
調査の前提となる事実関係の正確性を担保する条項です。妄想や幻覚に基づく「事実」を真実として申告されると、探偵事務所は無駄な調査を行うことになり、依頼者も無意味な費用を支払うことになります。具体例として「電磁波攻撃を受けている証拠を探してほしい」という依頼があった場合、この条項により依頼者に再考を促すことができます。
第3条(医療機関での診断について)の解説
過去の医療歴を確認することで、精神疾患の既往歴がある依頼者を事前に把握する条項です。ただし、プライバシーの観点から自己申告制となっています。実際には診断を受けていても隠す依頼者もいるため、完全な防止策ではありませんが、良心的な依頼者に対しては一定の抑制効果があります。
第4条(第三者への相談)の解説
依頼者が独断ではなく、周囲の意見も聞いた上で契約していることを確認する条項です。統合失調症患者の多くは孤立しがちで、妄想の内容を客観視できない状況にあります。家族や友人などの第三者の意見を求めることで、冷静な判断を促す効果があります。
第5条(調査費用の理解)の解説
調査費用の妥当性と支払能力を確認させる条項です。悪質な探偵業者は法外な料金を請求することが多いため、依頼者に費用対効果を十分検討させる意図があります。例えば月収20万円の依頼者に対して300万円の調査契約を結ばせるような事態を防ぐ効果があります。
第6条(契約解除権の理解)の解説
クーリングオフ的な権利を確保する条項です。衝動的に契約した依頼者が冷静になって契約を見直す機会を提供します。探偵業界では法定のクーリングオフ期間はありませんが、この条項により自主的にクーリングオフ期間を設定することで、依頼者保護と事業者の信頼性向上を両立させています。
第7条(責任の所在)の解説
虚偽申告による損害の責任を明確化する条項です。依頼者が意図的に虚偽の情報を提供した結果、無駄な調査費用が発生した場合の責任関係を明確にします。これにより探偵事務所は不当な損害賠償請求から身を守ることができます。
第8条(その他)の解説
調査結果に対する現実的な期待値を設定する条項です。依頼者の中には「必ず証拠が見つかる」「100%白黒つく」と考える方もいますが、調査には限界があることを理解してもらう必要があります。結果が期待と異なっても費用は発生することを事前に確認しておくことで、後のトラブルを防止できます。