【1】書式概要
この文書は、2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス法)に完全対応した通知書のテンプレートです。同法では、発注者がフリーランスに業務を依頼する際、契約締結前に必ず書面で重要事項を通知することが義務付けられており、この書式はその要件を満たすために作成されました。
実際の使用場面としては、企業がフリーランスのデザイナーにウェブサイト制作を依頼する場合、システムエンジニアにアプリ開発を委託する場合、ライターに記事作成を発注する場合など、あらゆる業務委託において必要となります。特にIT関連の業務委託では頻繁に使用されており、報酬額や支払期日、納期、著作権の取り扱いなど、トラブルになりやすいポイントを事前に明確化できます。
この書式を使用することで、法令遵守はもちろん、発注者とフリーランス双方が安心して取引を進められる環境を整備できます。Word形式で提供されているため、自社の業務内容や契約条件に合わせて簡単に編集・カスタマイズが可能です。法務部門がない中小企業やスタートアップ企業でも、専門知識がなくても適切な通知書を作成できる実用的なテンプレートとなっています。
【2】条文タイトル
- 報酬の額
- 支払期日
- 業務委託事業者・フリーランスの商号、名称
- 業務委託をした日
- フリーランスの給付・役務を受領する期日
- フリーランスの給付を受領する場所
- 給付・役務の内容を検査する場合はその検査完了日
- 給付の内容(業務内容)
- 業務の遂行に必要な経費負担
- 業務の成果物に係る権利の帰属
- 契約条件の変更
- 契約の解除
- 損害賠償
- その他、フリーランスの適正な業務の確保のために必要な事項
【3】逐条解説
第1項:報酬の額
この項目では業務に対する対価を明記します。税込み表示が一般的で、フリーランスが確定申告時に必要な情報でもあります。例えば「300,000円(税込)」のように具体的な金額を記載し、曖昧な表現は避けるべきです。
第2項:支払期日
報酬の支払いタイミングを明確化する重要な項目です。「業務完了後30日以内」など具体的な期限を設定することで、キャッシュフロー計画が立てやすくなります。フリーランスにとって最も関心の高い条項の一つです。
第3項:業務委託事業者・フリーランスの商号、名称
契約当事者を明確にする基本情報です。法人の場合は正式な商号を、個人の場合は本名を記載します。後々のトラブル防止のため、略称ではなく正確な名称を使用することが大切です。
第4項:業務委託をした日
契約成立日を示す重要な基準点となります。この日付から各種期限の計算が始まるため、双方で認識を合わせておく必要があります。通常は発注書の送付日や口頭での合意日を記載します。
第5項:フリーランスの給付・役務を受領する期日
いわゆる納期を指定する項目です。プロジェクトの規模に応じて現実的な期間を設定し、フリーランスの作業スケジュールも考慮して決定します。無理な短期間設定はクオリティ低下の原因となります。
第6項:フリーランスの給付を受領する場所
成果物の納品方法を明確化します。昨今はメールやクラウドストレージでの電子納品が主流ですが、物理的な納品が必要な場合は具体的な住所を記載します。
第7項:給付・役務の内容を検査する場合はその検査完了日
品質チェックの期間を定める項目です。「5営業日以内」など合理的な期間を設定し、検査基準についても事前に共有しておくことでスムーズな検収が可能になります。
第8項:給付の内容(業務内容)
業務の詳細を具体的に記載する核心部分です。「ウェブサイトデザイン」だけでなく、「トップページ、会社案内ページ等のAdobeXDファイル」のように成果物の形式まで明記することで認識齟齬を防げます。
第9項:業務の遂行に必要な経費負担
ソフトウェアライセンス料や交通費などの費用負担について明確化します。どちらが負担するかで実質的な報酬額が変わるため、契約前の重要な確認事項です。
第10項:業務の成果物に係る権利の帰属
著作権の取り扱いを定める重要な条項です。創作性のある成果物では著作権が発生するため、譲渡時期や範囲を明確にしておかないと後々大きなトラブルの原因となります。
第11項:契約条件の変更
プロジェクト進行中の仕様変更などに備えた条項です。書面での合意を義務付けることで、口約束による曖昧な変更を防止し、追加報酬の根拠も明確になります。
第12項:契約の解除
やむを得ない事情で契約を中止する場合の手続きを定めます。14日前通知により、双方に準備期間を与え、進捗に応じた報酬支払いで公平性を保っています。
第13項:損害賠償
過失による損害発生時の責任範囲を制限する条項です。報酬額を上限とすることで、小規模な業務委託でも安心して契約できる環境を整備しています。
第14項:その他、フリーランスの適正な業務の確保のために必要な事項
機密保持義務や働き方の自由度確保など、フリーランス保護の観点から追加される項目です。信頼関係の構築と継続的な取引関係の基盤となります。
|