第1条(目的)
この条項では契約の根本的な目的を明確に定めています。不動産投資に関する助言提供だけでなく、投資判断の代行や取引の代理・媒介まで含まれている点がポイントです。
単なる情報提供だけでなく、実務的な代行業務まで含む総合的なサービス提供を目的としていることがわかります。例えば、顧客の代わりに物件を選定し、交渉し、契約まで進めるようなケースも想定しています。
第2条(業務内容)
具体的な業務内容を8項目にわたって明示しています。市場分析から始まり、物件選定、戦略立案、法務・税務アドバイス、ポートフォリオ運用助言に加え、投資判断代行や取引代理まで含まれています。
特に「投資判断の代行」は重要な権限委譲を意味し、顧客の承認なしに投資顧問が判断できる範囲を示唆しています。例えば、事前に定めた基準に合致する物件があれば、顧客に代わって購入判断を下せるようなケースです。最後の「その他」条項により柔軟な業務追加も可能となっています。
第3条(乙の資格)
投資顧問業者の資格保有を確認する条項です。総合不動産投資顧問業の登録という専門的資格を有することを表明・保証させることで、依頼者を保護しています。また資格に変更があった場合の通知義務を定めることで、常に適格な業者によるサービス提供を担保しています。実際には、不動産特定共同事業法や金融商品取引法などの関連法規に基づく資格が該当するでしょう。
第4条(許認可等の取得)
業務遂行に必要な許認可や登録の取得・維持責任を明確にしています。費用負担も投資顧問側としている点が特徴です。許認可証の写しの提出義務や変更・取消時の通知義務により透明性を確保しています。例えば宅地建物取引業免許や投資助言・代理業の登録などが該当します。不動産取引では必要な許認可が多岐にわたるため、この条項は安全な取引には欠かせません。
第5条(業務遂行の方法)
業務遂行の基本姿勢を定めています。「誠実に遂行する」という抽象的な表現に加え、必要な資格・知識・経験を有する者を従事させる義務を課すことで、サービスの質を担保しています。実務では、一級建築士や不動産鑑定士、税理士といった専門家が適切に配置されることが想定されます。
第6条(報告義務)
定期的な報告義務を規定しています。毎月の報告を書面で行うことを義務づけることで、業務の進捗や成果を確認できる仕組みになっています。これにより依頼者は投資状況を把握し、必要に応じて方針転換などの判断ができます。例えば、市場動向の変化や新規物件情報、保有物件の運用状況などが報告内容となるでしょう。
第7条(報酬)
基本報酬の金額と支払方法を明確にしています。月額固定報酬制を採用し、税別表記になっている点に注意が必要です。支払期限と支払方法(振込)も明示されています。実務では月額10〜50万円程度が一般的ですが、管理物件の規模やサービス内容によって大きく変動します。
第8条(成功報酬)
基本報酬に加えて成功報酬制を導入しています。投資で得られた利益の一定割合を顧問に支払うことで、両者の利害を一致させる効果があります。例えば「利益の20%」などと設定することが多く、顧問側も積極的に利益向上に貢献する動機づけとなります。ただし、「利益」の定義や計算方法については別途明確にしておくべきでしょう。
第9条(契約期間)
契約の有効期間と自動更新の仕組みを定めています。基本期間は1年間とし、双方から特段の意思表示がなければ自動的に1年間延長される形式です。これにより長期的な関係構築が可能となります。解約の意思表示は期間満了の1ヶ月前までと定められており、予見可能性を確保しています。
第10条(秘密保持)
秘密情報の取扱いに関する条項です。相手方の承諾なく第三者への開示を禁止し、契約終了後も3年間の守秘義務が継続する点がポイントです。不動産投資では財務情報や投資戦略など重要な情報が多く扱われるため、この条項は不可欠です。例えば顧客の資産状況や投資意向といった情報も保護対象となります。
第11条(個人情報の取扱い)
個人情報保護法への対応を明記しています。不動産投資においては、所有者情報や賃借人情報など多くの個人情報を取り扱うため、適切な管理体制が求められます。具体的には情報の収集目的の明確化、安全管理措置の実施、第三者提供の制限などが必要となります。
第12条(権利義務の譲渡禁止)
契約上の地位や権利義務の第三者への譲渡を禁止しています。これにより、信頼関係に基づいて選定した特定の相手方との関係を保全しています。例えば顧問業者が第三者に業務を丸投げするようなケースを防止できます。また「担保に供する」ことも禁止されており、債権者への譲渡担保なども認められません。
第13条(契約の解除)
契約違反があった場合の解除条件を定めています。「相当の期間を定めて催告」が必要なため、即時解除はできない点に注意が必要です。例えば報告義務の不履行があった場合、「1週間以内に報告書を提出するように」といった催告を行い、それでも履行されない場合に解除できる仕組みです。
第14条(損害賠償)
契約違反による損害賠償責任を定めています。因果関係のある損害について賠償義務を負う一般原則を確認的に規定していますが、賠償額の上限や特別損害の取扱いについては言及がありません。実務では顧問の責任範囲を明確にし、場合によっては賠償額の上限を設けることも検討すべきでしょう。
第15条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係遮断を明記しています。自社だけでなく、役員、従業員、主要株主、取引先にまで対象を広げている点が特徴です。違反があった場合は催告なしの即時解除が可能であり、さらに損害賠償責任も発生します。不動産取引では反社会的勢力が関与するリスクが相対的に高いため、この条項は特に重要です。
第16条(合意管轄)
紛争発生時の裁判管轄を特定の裁判所に限定しています。「第一審の専属的合意管轄裁判所」と定めることで、他の裁判所に訴えを提起することを排除しています。通常は依頼者や顧問業者の本店所在地を管轄する地方裁判所が指定されることが多いです。
第17条(協議事項)
契約書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応方法を定めています。誠意をもった協議により解決することを原則としており、互いの信頼関係に基づく柔軟な対応を想定しています。例えば時代の変化に伴う新たな投資手法や、想定外の事態発生時の対応などが協議対象となるでしょう。