【1】書式概要
この契約書は、童話や絵本などの児童向け創作物の制作を外部の作家やライターに依頼する際に使用する業務委託契約のひな形です。出版社が童話作家に新作の執筆を依頼する場合はもちろん、企業が販促用の絵本制作をフリーランスのクリエイターに発注する際、教育機関が教材用の創作物を専門家に委託する場面などで幅広く活用できます。
この書式の特徴は、著作権の取り扱いを明確に定めている点です。完成した作品の権利が依頼主に完全に移転される仕組みになっており、後々のトラブルを防げます。また、制作スケジュールや検収手続き、報酬の支払い条件なども詳細に規定されているため、双方にとって安心して取引を進められる内容となっています。
個人の作家から大手出版社まで、創作物の制作を外注する際の基本的な取り決めを網羅しており、改正民法にも対応済みです。必要な箇所に具体的な内容を記入するだけで、すぐに使える実用的な契約書として活用できます。創作業界での業務委託において、信頼関係を築きながら適正な取引を行うための必携ツールといえるでしょう。
【2】条文タイトル
第1条(目的)
第2条(委託業務)
第3条(業務遂行)
第4条(仕様)
第5条(制作スケジュール)
第6条(検収)
第7条(委託料及び支払方法)
第8条(権利の帰属)
第9条(再委託の禁止)
第10条(秘密保持)
第11条(非保証)
第12条(契約解除)
第13条(損害賠償)
第14条(反社会的勢力の排除)
第15条(協議事項)
第16条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条項は契約全体の基本的な目的を定めています。発注者が受注者に童話制作を委託し、受注者がそれを引き受けるという関係性を明確にしているのです。たとえば、出版社が新人作家に幼児向けの短編童話集を依頼する場合、この条項によって「何のための契約なのか」が明確になります。
第2条(委託業務)
具体的にどのような作業を依頼するのかを細かく規定しています。企画立案から執筆、校正まで一連の流れが含まれており、例えば「桃太郎の現代版リメイク」といった企画から、実際の文章作成、そして最終的な文章の見直しまでが業務範囲に含まれます。付随業務も含めることで、作業の抜け漏れを防いでいます。
第3条(業務遂行)
作家がどのような姿勢で作業に取り組むべきかを定めています。発注者の意向を汲み取ることはもちろん、対象年齢に適した表現を使うことも重要です。5歳向けの童話なら平仮名中心の優しい表現を、10歳向けなら少し複雑な言葉も使えるといった配慮が求められます。
第4条(仕様)
作品の具体的な仕様を記載する重要な条項です。「動物たちの友情」をテーマに、4歳から6歳を対象とした2000字程度の童話、といった具体的な指示を明記します。仕様変更の際の手続きも定めており、途中で「やっぱり3000字にしたい」という変更があっても、きちんとした手続きを踏めばトラブルになりません。
第5条(制作スケジュール)
企画書の提出から最終稿の完成まで、段階的なスケジュールを設定しています。例えば、企画書を1月末、初稿を3月末、最終稿を4月末に設定することで、作家も計画的に作業を進められます。締切を守れない場合の事前相談についても規定されているため、現実的な運用が可能です。
第6条(検収)
完成した作品を発注者がチェックする手続きを定めています。受注者が「完成しました」と提出しても、発注者が内容を確認して「ここをもう少し直してください」と修正依頼することができます。検収期間を明確にすることで、だらだらと確認作業が長引くことを防いでいます。
第7条(委託料及び支払方法)
報酬の金額と支払いタイミングを定める重要な条項です。契約時に30%、初稿提出時に30%、完成時に40%という分割払いにより、作家の資金繰りも考慮されています。10万円の報酬なら、契約時に3万円、初稿時に3万円、完成時に4万円という流れです。
第8条(権利の帰属)
最も重要な条項の一つで、完成した童話の著作権が発注者に移ることを明記しています。作家が書いた童話でも、完成後は発注者が自由に出版や映像化などを行えるようになります。著作者人格権についても制限をかけることで、後々「私の作品を勝手に改変しないで」といったトラブルを防いでいます。
第9条(再委託の禁止)
受注した作家が他の人に作業を丸投げすることを原則禁止しています。ただし、例えば方言指導や歴史考証など、専門的な部分については事前承認を得れば外部専門家への相談も可能です。再委託する場合の責任についても明確にしています。
第10条(秘密保持)
制作過程で知った情報の秘密保持を義務付けています。例えば、大手出版社の新企画の詳細や、キャラクター設定の秘密などを外部に漏らしてはいけません。契約終了後も5年間は秘密を守る義務が続くため、長期的な信頼関係を築けます。
第11条(非保証)
作家が第三者の権利を侵害しないことを約束する条項です。他の童話のキャラクターを無断で使用したり、既存の楽曲の歌詞を勝手に引用したりした場合、作家が責任を負うことになります。オリジナリティの確保と権利侵害の防止を図っています。
第12条(契約解除)
契約を途中で打ち切る場合の条件を定めています。約束を守らない、支払いができなくなる、会社が倒産するなどの重大な事態が発生した場合に、契約を解除できる仕組みです。双方にとって最後の手段として機能します。
第13条(損害賠償)
契約違反によって相手方に損害を与えた場合の責任を定めています。例えば、作家が締切を大幅に遅らせて出版スケジュールが狂った場合、その損害を賠償する義務が生じます。シンプルですが重要な条項です。
第14条(反社会的勢力の排除)
暴力団などの反社会的勢力との関係を排除する現代的な条項です。健全な取引環境を維持するため、多くの契約書に盛り込まれるようになっています。違反が判明した場合は即座に契約解除となります。
第15条(協議事項)
契約書に書かれていない事態が発生した場合や、解釈に迷う場合の対応方法を定めています。話し合いによる解決を基本とすることで、いきなり訴訟に発展することを防ぎ、良好な関係の維持を図っています。
第16条(管轄裁判所)
万が一訴訟になった場合にどこの裁判所で争うかを事前に決めておく条項です。東京地裁や大阪地裁など、双方にとって利便性の高い裁判所を指定することで、紛争解決の効率化を図っています。