【1】書式概要
この「新型コロナウイルスに関する消毒業務委託契約書」は、事業所や施設内で新型コロナウイルス感染症の陽性者が発生した際に、専門業者に消毒作業を依頼するための契約書です。特に受託者(消毒を行う業者側)に有利な条件設定となっており、改正民法に準拠した内容になっています。施設の消毒業務を第三者に委託する際の責任範囲、業務内容、料金支払い条件などを明確に定めることで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
企業オフィスやテナントビル、商業施設などでコロナ陽性者が確認された場合、迅速かつ適切な消毒対応が求められますが、その際にこの契約書を使用することで、双方の義務と権利を明確にした上で業務を進められます。特に受託者側にとっては、消毒作業の限界(完全消毒の非保証など)を予め明示できる点が実務上重要です。
【2】条文タイトル
第1条(目的)
第2条(業務指針)
第3条(定期協議)
第4条(責任者)
第5条(消毒業務の対象)
第6条(完全消毒の非保証等)
第7条(契約解除)
第8条(賠償責任)
第9条(料金)
第10条(契約期間)
第11条(守秘義務)
第12条(反社会的勢力の排除)
第13条(裁判管轄)
第14条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条項では契約の目的を明確に定めています。具体的には、委託者の施設において従業員がPCR検査で陽性となったケースを受けて、施設の消毒業務を外部業者に委託することを明示しています。実際の契約においては、PCR検査陽性だけでなく、抗原検査陽性の場合や、濃厚接触者が複数発生した場合なども含めることがあります。目的をはっきりさせておくことで、どのような状況下で契約が適用されるかが明確になります。
第2条(業務指針)
消毒業務の実施にあたっての指針を定めた条項です。受託者は最新の公的ガイドラインに従って業務を遂行することが求められます。この条項は特に重要で、コロナ対策は日々アップデートされる可能性があるため、「最新版の指針に従う」という文言が入っています。例えば、消毒方法や使用する薬剤の種類、濃度などが変更された場合も、その時点での最新指針に従うことになります。
第3条(定期協議)
委託者と受託者が定期的に協議を行うことを定めています。これは消毒業務の実施状況や効果、新たに必要となる対策などについて話し合う機会を設けるためのものです。
実務上は月1回など具体的な頻度を定めることもありますが、この雛形では柔軟に対応できるよう頻度を特定していません。特に感染状況が変化しやすい状況では、こまめな協議が重要になってきます。
第4条(責任者)
双方の責任者を明確にする条項です。消毒業務のような専門性の高い作業では、窓口となる担当者を決めておくことが重要です。実際の契約では、責任者の氏名や連絡先を記載するケースが多いでしょう。緊急時の連絡体制も含めて明確にしておくと、スムーズな業務遂行につながります。
例えば「施設管理部長の山田太郎(連絡先:090-XXXX-XXXX)」のように具体的に記載するとよいでしょう。
第5条(消毒業務の対象)
消毒業務を行う施設の特定と、その範囲を明確にしています。単に建物だけでなく、その中の什器や備品なども対象に含まれることを明示しています。実務では、特に重点的に消毒すべき場所(陽性者が使用していた座席周辺、共用部分など)や、逆に消毒対象から除外する場所(精密機器のある場所など)を具体的に列挙することもあります。
第6条(完全消毒の非保証等)
この条項は受託者保護の観点から非常に重要です。新型コロナウイルスの特性上、100%の除去を保証することは現実的に難しいため、責任範囲を明確にしています。CT値=60というのはウイルスの不活化を示す指標で、この水準まで消毒することで業務完了とみなします。また14日間の施設利用自粛を推奨することで、万が一の再発リスクに備えています。実務上は「可能な限り高い安全性を確保するが、完全な除去は保証できない」という趣旨をしっかり委託者に理解してもらうことが大切です。
第7条(契約解除)
契約を解除できる条件を列挙しています。一般的な契約不履行だけでなく、経営状態の悪化や法的手続きの申立などの場合も解除事由としています。特に消毒業務のような専門的サービスでは、提供者の信頼性が重要なため、様々な解除事由を定めているのです。例えば受託者が破産申立を受けた場合、予定通りに消毒業務を実施できるか不安があるため、委託者は契約を解除できることになります。
第8条(賠償責任)
受託者の責任で損害が生じた場合の賠償責任について定めています。ただし、賠償の具体的な内容は当事者間の協議に委ねられています。実際には、例えば「消毒作業によって什器や備品が損傷した場合」などが想定されますが、故意・過失の程度や、損害の範囲によって賠償額が変わってくるため、協議による解決を前提としています。
第9条(料金)
委託料とその支払い条件を定めています。消毒業務は一回限りのサービスであることが多いため、業務完了月の翌月末払いとなっています。
実務上は、施設の広さや消毒範囲によって料金が変動するケースが多く、また前払い金(デポジット)を求められることもあります。例えば「基本料金30万円に加え、追加で消毒が必要になった場合は1平米あたり1,000円を追加」といった料金体系も考えられます。
第10条(契約期間)
契約の期間を定めています。消毒業務は通常、一回限りのサービス提供ですが、予定日までに完了しない場合の対応も定めています。特に大規模施設や複雑な構造の建物では、予定通りに終わらないこともあるため、実際の完了日まで契約が継続するという柔軟な規定になっています。
第11条(守秘義務)
受託者の守秘義務を定めています。消毒業務を通じて知り得た委託者の機密情報(オフィスレイアウト、セキュリティ体制、社内の状況など)を外部に漏らしてはならないという内容です。この義務は契約終了後も継続するため、一時的な業務委託であっても長期的な秘密保持が求められます。例えば「当社にコロナ陽性者が出た」という情報自体も、企業イメージに関わる機密情報となり得ます。
第12条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係がないことを相互に確認する条項です。現代の契約書ではほぼ標準的に含まれる条項であり、万が一相手方が反社会的勢力と関係があることが判明した場合は、即時に契約解除できることを定めています。これは消毒業務という性質上、施設内の状況やセキュリティ体制を知られる可能性があるため、特に重要です。
第13条(裁判管轄)
紛争が生じた場合の管轄裁判所を定めています。通常は委託者の所在地を管轄する裁判所が指定されることが多いですが、当事者間の合意によって決めることができます。例えば東京に本社がある会社の大阪支店で契約を結ぶ場合でも、「東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」といった定めが可能です。
第14条(協議事項)
契約書に定めのない事項や疑義が生じた場合の対応を定めています。特に「民法をはじめとする法令等を踏まえ」という文言が入っており、改正民法の趣旨を尊重した解決を図ることを明示しています。実際の紛争解決では、この条項に基づいて当事者間で話し合いを行い、必要に応じて契約書を補足する覚書を作成することもあります。