【1】書式概要
この契約書は、動画編集業務を外注する際に使用する業務委託契約書のひな形です。YouTubeやSNS向けの動画コンテンツが急激に増加している現在、企業や個人事業主が動画編集者に業務を委託するケースが非常に多くなっています。
特に改正民法に対応した最新版として、契約不適合責任の概念を盛り込み、従来の瑕疵担保責任から更新された内容となっています。動画編集という特殊な業務の性質を踏まえ、編集材料の取り扱いや著作権の帰属、機密保持などデジタルコンテンツ特有の問題にも配慮した条項を含んでいます。
この書式を使用する場面としては、企業がYouTubeチャンネルの運営でフリーランスの編集者に継続的に業務を依頼する場合、個人事業主が動画制作会社に編集作業を外注する場合、また教育機関や自治体が動画コンテンツ制作で専門業者と契約を結ぶ場合などが想定されます。動画制作の現場では口約束で進めることも多いのですが、後のトラブルを避けるためにも書面での契約締結が重要になります。納期や品質基準、料金体系を明確にすることで、双方が安心して業務に取り組める環境を整えることができます。
【2】条文タイトル
第1条(目的)
第2条(委託業務)
第3条(委託料)
第4条(検品)
第5条(有効期間)
第6条(反社会的勢力の排除)
第7条(編集材料の抹消)
第8条(知的財産権の帰属)
第9条(守秘義務)
第10条(準拠法)
第11条(損害賠償責任)
第12条(合意管轄)
第13条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(目的)の解説
この条項は契約の基本的な枠組みを定めています。動画編集業務の件数と納期の原則を明記することで、双方の認識を統一します。例えば月10本の編集を依頼し、各動画は依頼から7日以内に完成させるといった具体的な取り決めを行います。納期設定は動画の長さや複雑さによって調整が必要でしょう。
第2条(委託業務)の解説
編集指示書の重要性を強調し、作業着手後の変更を制限しています。動画編集では「もう少しここをカットして」「BGMを変えて」といった追加要望が頻繁に発生しがちです。しかし無制限に変更を受け入れると作業効率が大幅に下がるため、事前の指示書作成と変更時の協議を義務付けています。
第3条(委託料)の解説
1本あたりの単価制と月締め支払いを規定しています。動画編集の相場は内容によって大きく異なりますが、YouTube動画なら1本3,000円から30,000円程度が一般的です。検品合格後の支払いとすることで、品質担保のインセンティブを与えています。
第4条(検品)の解説
品質管理の手順を明確化し、不合格時の修正義務を定めています。動画編集では音声の同期ずれやカット漏れなど細かなミスが発生しやすく、組織的な検品プロセスが必要です。修正回数に上限を設けないことで、依頼者の要求水準を満たすまで対応する姿勢を示しています。
第5条(有効期間)の解説
契約期間を明確にし、継続的な取引関係を前提とした条項です。動画制作は単発よりも継続的な関係で進めることが多いため、年間契約などの長期間設定が実用的でしょう。期間満了前に更新協議を行うことで、安定した業務関係を維持できます。
第6条(反社会的勢力の排除)の解説
コンプライアンス対応として必須の条項で、特に企業との取引では重要視されます。暴力団関係者との関わりを完全に排除し、発覚時の即座の契約解除を可能にしています。動画制作業界でも健全な取引環境の維持が求められています。
第7条(編集材料の抹消)の解説
機密保持とプライバシー保護の観点から設けられた重要な条項です。編集素材には未公開の企業情報や個人情報が含まれることが多く、業務完了後の完全削除を義務付けています。クラウドストレージからの削除も含めて徹底的な管理が必要です。
第8条(知的財産権の帰属)の解説
完成した動画の著作権が依頼者に帰属することを明確にしています。編集者の創作的な貢献があったとしても、業務委託の成果物として依頼者の権利とする取り決めです。これにより依頼者は自由に動画を活用できます。
第9条(守秘義務)の解説
契約履行中に知り得た情報の機密保持を義務付けています。動画制作では新商品の情報や企業戦略に関わる内容を扱うことが多く、情報漏洩の防止は極めて重要です。SNSでの情報発信が日常的な現代では特に注意が必要でしょう。
第10条(準拠法)の解説
契約の解釈や紛争解決に適用する法律を日本法と定めています。国際的な取引が増える中で、準拠法の明確化は紛争予防の基本となります。日本国内の業務委託であれば当然の規定といえるでしょう。
第11条(損害賠償責任)の解説
故意や過失による損害への責任を相互に負うことを定めています。動画編集では納期遅延や品質不備が発生する可能性があり、そうした場合の損害賠償の根拠を明確にしています。責任の範囲を予め取り決めることでトラブルを回避できます。
第12条(合意管轄)の解説
紛争が発生した際の裁判所を指定する条項です。当事者の所在地に近い地方裁判所を選択することで、訴訟費用や時間的負担を軽減できます。調停や仲裁といった代替的紛争解決手段の活用も検討に値するでしょう。
第13条(協議事項)の解説
契約書に記載のない事項について双方の協議で解決することを定めています。動画制作の現場では予期しない問題が発生することが多く、柔軟な対応を可能にする重要な条項です。誠実協議の精神で円満解決を図ることが期待されます。