第1条(工事の発注)
この条文では、工事の基本的な枠組みを定めています。工事名、工事場所、着工日、完了日といった、工事の「いつ、どこで、何を」を明確にする重要な部分です。
例えば、カフェの改装工事であれば「○○カフェ内装工事」といった具体的な工事名を記載し、工期についても「令和6年4月1日着工、同年5月31日完了」のように具体的な日付を入れることで、双方の認識を一致させます。工期の設定は特に重要で、営業中の店舗改装などでは、お客様への影響を最小限に抑えるため、綿密なスケジュール調整が必要になります。
第2条(請負代金)
工事代金の総額と支払い方法を定める条文です。一般的に内装工事では、契約時の手付金と工事完了時の残金支払いという2回払いが多く採用されています。改正民法の影響で、工事が途中で中止になった場合の部分履行に対する報酬請求権についても明記されており、これは従来の契約書にはなかった新しい視点です。たとえば、店舗工事で電気工事部分は完了したが、内装材の調達が困難になって工事が中止となった場合、完了した部分については適正な報酬を受け取ることができます。
第3条(注文者による承認、指示)
工事の仕様について、事前に発注者の承認を得ることを義務付けています。内装工事では、色合いや材質、デザインなど、完成後に変更が困難な要素が多いため、この条文は極めて重要です。例えば、レストランの壁紙選びで、施工後に「イメージと違う」というトラブルを避けるため、サンプルを提示して必ず書面で承認を得るといった手続きが必要になります。
第4条(下請の禁止)
元請業者が無断で工事を第三者に委託することを禁止する条文です。これは工事の品質管理と責任の所在を明確にするためのものです。ただし、完全に下請を禁止するのではなく、事前の書面承諾があれば可能としています。実際の工事現場では、電気工事や設備工事など専門性の高い部分で下請業者を使用することが一般的なため、この柔軟性のある規定は実務的です。
第5条(引渡等)
工事完成後の検査と引渡しの手続きを定めています。内装工事では見た目の仕上がりが重要な要素となるため、発注者による検査は慎重に行われます。例えば、オフィスの間仕切り工事では、寸法の精度、建具の動作確認、塗装の仕上がり具合など、様々な角度から検査が実施され、合格してはじめて引渡しが完了します。
第6条(乙の責に帰することができない事由による契約不適合)
請負業者の責任によらない理由で仕様通りにならない場合の対応を定めています。これは改正民法で新たに導入された概念で、従来の「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと変更された影響を受けています。例えば、既存建物の構造上の問題で予定していた工事ができない場合、速やかに発注者に報告し、指示を仰ぐことが義務付けられています。
第7条(検査後の改修)
検査で不合格となった場合の改修義務について定めています。改修費用の負担については、請負業者の責任による場合とそうでない場合を区別しており、公平性を保っています。改修が不可能な場合の代金減額についても規定されており、実務的な配慮がなされています。たとえば、塗装工事で色ムラが発生した場合、塗り直しが可能であれば請負業者負担で改修し、建物の構造上やり直しが困難な場合は代金を減額するといった対応が想定されます。
第8条(引渡後の修補)
引渡し後1年間の修補義務を定めています。内装工事では、時間の経過とともに問題が現れることがあるため、この保証期間の設定は重要です。ただし、請負業者の責任による場合に限定されており、通常の使用による劣化や、発注者側の不適切な使用による損傷は対象外となります。例えば、床材の接着不良による剥がれは修補対象ですが、重量物を落として生じた傷は対象外となります。
第9条(危険負担)
天災などの不可抗力による損害の取り扱いを定めています。工事期間中に地震や台風などで工事箇所が被害を受けた場合、その対処方法を当事者間の協議で決定することとしています。近年の自然災害の頻発を考慮すると、この条文の重要性は高まっています。
第10条(契約の解除)
契約違反や経営状況の悪化など、様々な事由による契約解除について詳細に規定しています。建設業界では、業者の倒産や営業停止といったリスクが存在するため、これらの事態に対応した解除事由が設けられています。例えば、工事代金の支払い遅延や、営業許可の取消処分を受けた場合などが該当します。
第11条(反社会的勢力の排除)
暴力団等の反社会的勢力との関係を排除するための条文です。建設業界では特にこの問題が重要視されており、発注者、請負者双方が反社会的勢力でないことを確約し、判明した場合は即座に契約解除できる仕組みになっています。下請業者についても同様の確認を義務付けており、業界全体でのコンプライアンス向上を図っています。
第12条(協議)
契約書に記載のない事項や解釈に疑義が生じた場合の解決方法を定めています。まずは当事者間の協議による解決を目指し、それが困難な場合は法令の規定に従うという段階的なアプローチを採用しています。実際の工事現場では、想定外の状況が発生することが多いため、この柔軟な解決手段の確保は重要です。