【1】書式概要
民法改正に完全対応した借主に有利な使用貸借契約書テンプレート。不動産オーナーから友人や親族への無償貸与、会社の福利厚生としての社宅提供、空き家の有効活用など多様な場面で使える汎用モデルです。
全11条の条項で構成され、契約期間や使用目的、修繕費用の負担、原状回復義務など重要事項を明確に規定。特に借主の立場に配慮した内容となっており、賃貸借契約とは異なる使用貸借特有の注意点もカバー。法律の専門家が作成した安心の雛形で、記入例付きなので契約書作成が初めての方でも簡単に利用できます。
友人間の建物貸借や会社と従業員の間での契約にも最適。ダウンロード後すぐに編集可能なWord形式でお届けします。
〔条文タイトル〕
第1条(使用貸借契約)
第2条(契約期間)
第3条(使用目的)
第4条(乙による使用・収益)
第5条(修繕等)
第6条(使用目的の変更等)
第7条(解除)
第8条(損害賠償)
第9条(本件対象物の返還・原状回復)
第10条(合意管轄)
第11条(協議)
【2】逐条解説
前文
この部分は契約の当事者(甲・乙)が本契約を締結する意思を表明しています。使用貸借とは民法上の契約類型の一つで、貸主が借主に目的物を無償で使用させる契約です。賃貸借と異なり、対価(賃料)の支払いがない点が特徴です。
第1条(使用貸借契約)
この条項では契約の対象物を特定し、引渡日を明記します。対象物の特定は契約の有効性に関わる重要事項です。建物の場合は所在地・構造・面積などを、動産の場合は品名・型番・数量などを具体的に記載します。引渡日は借主が使用を開始できる日として明確に定めておくことで、後のトラブルを防止できます。
第2条(契約期間)
使用貸借の期間について定めています。本テンプレートでは2年間としていますが、当事者の合意により変更可能です。特徴的なのは2ヶ月前の通知で解約できる点で、これは借主保護の観点から設けられた条項です。また第2項で借主の死亡による契約終了を明記しており、これは民法598条の規定(使用貸借は借主の死亡によって終了する)を確認的に記載したものです。
第3条(使用目的)
借主が対象物をどのような目的で使用するかを明確にする条項です。使用目的を限定することで、貸主は予期せぬ使用方法による損害リスクを回避できます。目的外使用は契約違反となるため、使用目的は具体的に記載することが望ましいです。
第4条(乙による使用・収益)
第1項は民法594条(借主による使用・収益)を踏まえた条項で、借主は契約で定められた使用方法に従う義務があることを確認しています。第2項は第三者への使用収益権の譲渡禁止を定めていますが、借主の近親者については届出のみで使用可能とする特例を設けており、借主に有利な内容となっています。
第5条(修繕等)
使用貸借における費用負担について定めています。民法595条では、借主は通常の必要費を負担するとされており、本条はそれを確認的に規定しています。「通常の必要費」とは、対象物を使用・収益するために通常必要となる費用(例:電気・水道・ガス料金、日常的な清掃費用など)を指します。大規模修繕費などは含まれません。
第6条(使用目的の変更等)
借主が使用目的を変更したり、対象物の原状を変更する場合には事前に貸主の承諾が必要であることを規定しています。無断で目的外使用や改変を行った場合、契約解除事由となり得ます。ただし、本テンプレートでは「改良を行う場合を含む」と明記することで、借主が価値を高める変更も承諾の対象としており、柔軟性を持たせています。
第7条(解除)
貸主が契約を解除できる事由を列挙しています。一般的な契約不履行の場合に加え、借主の信用不安事由や反社会的勢力との関係性についても詳細に規定されています。特に反社会的勢力排除条項は、昨今の契約実務では標準的に盛り込まれる重要条項です。本条は催告なしに解除できる「無催告解除」条項ですが、解除事由を限定列挙することで借主保護を図っています。
第8条(損害賠償)
借主の契約違反等による損害賠償請求権について規定しています。借主に有利な特徴として、①貸主は損害発生を事前に通知する必要がある点、②請求は対象物返還後6ヶ月以内に限定されている点が挙げられます。これにより借主は長期間にわたって賠償請求のリスクを負わずに済みます。
第9条(本件対象物の返還・原状回復)
契約終了時の対象物返還義務と原状回復義務について定めています。第2項は民法598条の2(損傷した使用貸借の目的物の原状回復)を踏まえたもので、借主の責めに帰すことができない事由による損傷については原状回復義務が免除されることを明記しています。これは2020年の民法改正で明文化された規定であり、本テンプレートが改正民法に対応していることを示しています。
第10条(合意管轄)
契約に関する紛争が生じた場合の裁判管轄を定める条項です。特定の裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所と定めることで、訴訟手続きの明確化・効率化を図っています。管轄裁判所は通常、対象物の所在地または当事者の住所地を管轄する裁判所が選択されることが多いです。
第11条(協議)
契約書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応方法を定めています。当事者間の誠実な協議による解決を基本姿勢としており、良好な信頼関係に基づく契約運用を促進する条項です。
末尾
契約締結の証として契約書を2通作成し、各当事者が1通ずつ保有することを定めています。署名捺印または記名押印の選択肢を設けることで、実務上の柔軟性を確保しています。日付と当事者の住所・氏名・押印欄も適切に配置されています。