【1】書式概要
この併存的債務引受契約書は、既存の債務について第三者が債務者と並んで責任を負う場面で使用される重要な契約書式です。改正民法に完全対応した最新版として、現代のビジネス環境に適した内容となっています。
併存的債務引受とは、元の債務者の債務が消滅することなく、新たに引受人も同じ債務を負担する仕組みのことです。これにより債権者は、元の債務者と引受人の両方に対して債務の履行を求めることができるようになります。
この契約書が活用される典型的な場面として、親会社が子会社の借入債務について銀行との間で引受契約を結ぶケース、事業承継時に後継者が先代の債務を引き受けるケース、M&Aにおいて買収企業が対象会社の債務を引き受けるケースなどがあります。また、個人事業主が法人化する際に個人債務を法人が引き受ける場面でも重宝されています。
従来の保証契約とは異なり、併存的債務引受では引受人は主たる債務者として扱われるため、債権者にとってより確実な債権回収が期待できます。一方で引受人にとっては重い責任を負うことになるため、契約締結時には慎重な検討が必要です。
この書式は反社会的勢力の排除条項も含んでおり、コンプライアンス要件も満たした実用性の高い内容となっています。金融機関との取引や企業間の重要な契約において、安心してご利用いただけます。
【2】条文タイトル
第1条(債務の併存的引受)
第2条(履行の方法)
第3条(履行の請求)
第4条(反社会的勢力の排除)
第5条(協議)
【3】逐条解説
第1条(債務の併存的引受)
この条文は契約の核心部分で、引受人が元の債務者と並んで債務を負担することを定めています。原契約の特定と本件債務の内容を明確に記載することで、後日の紛争を防止します。元本・利息・弁済期の具体的記載により、引受人の責任範囲が明確になります。例えば、A社がB銀行から1000万円を借り入れている場合に、親会社のC社がこの債務を併存的に引き受けることで、B銀行はA社とC社の両方に返済を求めることができるようになります。
第2条(履行の方法)
引受人の履行義務について、原契約の条項に従うことを明記した条文です。これにより、引受人は元の債務者と全く同じ条件で債務を履行する義務を負います。利息の計算方法や返済方法、期限の利益喪失事由なども原契約と同一の扱いとなります。実際の取引では、銀行融資の場合は約定書の条項、売買契約の場合は契約書の支払条件がそのまま適用されることになります。
第3条(履行の請求)
債権者の権利行使方法を定めた重要な条文です。債権者は元の債務者と引受人のいずれに対してでも、または両方に対して同時に、債務の履行を請求できます。この選択権により債権者の地位が大幅に強化されます。例えば、売掛金500万円について買主の親会社が併存的債務引受を行った場合、売主は買主が支払わなくても親会社に直接請求でき、両社に同時に請求することも可能です。
第4条(反社会的勢力の排除)
現代の契約書には不可欠となった反社条項です。暴力団等との関係を詳細に定義し、該当が判明した場合の無催告解除権を設けています。金融機関や上場企業との取引では必須の条項で、コンプライアンス体制の確立に役立ちます。5年という期間制限や準構成員、関係企業まで含めた幅広い定義により、実効性のある排除が可能となっています。
第5条(協議)
契約の解釈や履行について疑義が生じた場合の解決方法を定めています。まずは当事者間の協議による解決を促すことで、訴訟などの紛争を未然に防ぐ効果があります。実務では、返済条件の変更や期限延長などの交渉において、この条項に基づいた協議が行われることが多くあります。簡潔な条文ですが、円滑な契約関係の維持に重要な役割を果たします。