第1条(目的)
この条文は契約全体の基本的な枠組みを定めています。委託者(発注側の企業)と受託者(ライターやPR会社)の間で、プレスリリース作成という特定の業務について合意することを明確にしています。例えば、IT企業が新サービスのローンチに伴うプレスリリース作成をフリーランスライターに依頼する場合、この条文によって契約の基本的な性格が確定されます。
第2条(定義)
契約書内で使用される重要な用語について、その意味を明確に定義しています。「本業務」には単純な記事作成だけでなく、編集や校正作業も含まれることを明記しており、後々の解釈相違を防ぐ効果があります。「成果物」の定義も重要で、最終的に納品される記事だけでなく、関連する制作物全般を対象とすることで、取引の範囲を明確化しています。
第3条(業務委託)
委託関係の基本的な構造を規定する条文です。この条項により、雇用関係ではなく業務委託関係であることが法的に確定されます。具体的な業務内容については別途記載欄が設けられており、プレスリリースのテーマ、文字数、提出形式などの詳細を個別に定めることができます。
第4条(業務の遂行)
受託者の業務遂行における基本的な義務を定めています。善良な管理者の注意義務は、プロとしての専門的なスキルと責任感を持って業務にあたることを意味します。また、第三者への再委託を原則禁止とすることで、情報管理や品質管理の観点からリスクを最小化しています。例外的に再委託を認める場合でも、事前の書面承諾を必要とすることで、委託者の管理権を保護しています。
第5条(納品物及び納期)
成果物の具体的な内容と納期を定める実務上極めて重要な条文です。プレスリリースの場合、文字数、形式(Word形式、PDF形式など)、添付資料の有無などを詳細に記載することが一般的です。納期についても、企業の発表スケジュールに合わせて設定する必要があり、例えば新商品発表の1週間前など、具体的な日付で定めることが重要です。
第6条(検収)
納品された成果物の品質確認プロセスを規定しています。5営業日という検収期間は、プレスリリースの内容確認、事実関係のチェック、社内承認プロセスを考慮した現実的な期間設定となっています。修正要求権を明記することで、委託者の品質管理権を保護し、受託者にも修正対応義務を課しています。検収期間内に意思表示がない場合の自動承認条項は、契約の円滑な履行を促進します。
第7条(契約不適合責任)
改正民法に対応した重要な条文です。従来の瑕疵担保責任に代わって導入された契約不適合責任について詳細に規定しています。プレスリリースの場合、事実誤認、誤字脱字、指定された形式との相違などが契約不適合にあたります。履行追完請求、代金減額請求、契約解除の順序立てた救済手段を定めており、1年間の通知期間制限も設けています。
第8条(報酬及び支払方法)
報酬の金額と支払いタイミングを明確に定める条文です。検収完了後の支払いとすることで、品質確保のインセンティブを設けています。翌月末払いは一般的なビジネス慣行に沿った設定で、受託者の資金繰りにも配慮しています。振込手数料を委託者負担とすることで、受託者の実質的な収入を保護しています。
第9条(機密保持)
プレスリリース作成業務では、未発表の商品情報や企業戦略に関わる機密情報を扱うことが多いため、極めて重要な条文です。除外事由を明確に定めることで、受託者の過度な負担を避けつつ、必要な機密保持を確保しています。契約終了後3年間の存続期間は、情報の機密性の持続期間を考慮した適切な設定です。
第10条(個人情報の取扱い)
個人情報保護法に基づく規定で、プレスリリースに個人の経歴や写真などが含まれる場合に重要となります。利用目的の限定、安全管理措置の義務付け、契約終了時の返還・廃棄義務を定めることで、個人情報保護のコンプライアンス体制を構築しています。
第11条(知的財産権)
プレスリリースの著作権帰属について定める重要な条文です。原則として委託者に権利が移転することで、企業が自由に利用できることを保証しています。一方で、受託者が従前から保有していた知的財産権は留保し、必要な範囲での利用許諾を行うことで、バランスの取れた権利関係を構築しています。著作者人格権の不行使条項により、将来的な権利行使リスクも回避しています。
第12条(権利侵害の補償)
第三者の知的財産権侵害に対する受託者の保証責任を定めています。プレスリリースで他社の商標や著作物を無断使用した場合などに適用されます。受託者に解決義務と損害回避義務を課すことで、委託者のリスクを最小化しています。
第13条(解除)
契約違反や信用不安が生じた場合の解除事由を詳細に列挙しています。営業停止、差押え、破産手続きなどの客観的事実に基づく解除事由を定めることで、解除の正当性を担保しています。損害賠償請求権の保留により、解除後の救済手段も確保しています。
第14条(反社会的勢力の排除)
企業のコンプライアンス体制に必要不可欠な条文です。暴力団等との関係を詳細に定義し、表明保証と将来の確約を求めています。違反時の無催告解除権と損害賠償責任を定めることで、実効性を担保しています。
第15条(損害賠償)
契約違反時の損害賠償について基本的な枠組みを定めています。帰責事由の程度や予見可能性を考慮要素とすることで、過度な賠償責任を回避し、当事者間の協議による解決を促進しています。
第16条(不可抗力)
天災地変やハッカー攻撃など、当事者の責任によらない事由による履行障害を免責する条文です。近年のサイバー攻撃の増加を受けて、ハッカー攻撃も明示的に含めています。プレスリリースの発表タイミングは企業活動に大きく影響するため、不可抗力による遅延リスクの分担を明確化しています。
第17条(権利義務の譲渡禁止)
契約上の地位や権利義務の第三者譲渡を禁止する条文です。プレスリリース作成という信頼関係に基づく業務の性質上、当事者の変更は契約の根本的変更となるため、原則禁止としています。
第18条(協議事項)
契約書に定めのない事項や解釈の疑義が生じた場合の解決方法を定めています。まずは当事者間の誠実な協議による解決を図ることで、訴訟等の紛争を回避し、継続的な取引関係の維持を図っています。
第19条(準拠法及び管轄裁判所)
契約の準拠法を日本法と定め、紛争時の管轄裁判所を特定しています。専属的合意管轄とすることで、紛争解決の迅速化と予見可能性の向上を図っています。
第20条(契約期間)
契約の有効期間を業務完了までと定める一方で、重要な条項については契約終了後も存続させています。機密保持や知的財産権などの条項の存続により、契約終了後のリスク管理も適切に行っています。
第21条(契約の変更)
契約内容の変更には書面による変更契約を要求することで、口約束による変更トラブルを防止しています。業務内容や報酬の変更が生じやすいプレスリリース作成業務では特に重要な条文です。
第22条(完全合意)
この契約書が当事者間の完全な合意であることを確認し、従前の口頭約束等に優先することを明記しています。契約書の内容が最終的かつ確定的であることを保証する重要な条文です。