【1】書式概要
このソーシャルレンディング契約書テンプレートは、改正民法に完全対応した匿名組合契約の雛形です。ソーシャルレンディング事業を運営する営業者と投資家(匿名組合員)との間の権利義務関係を明確に規定し、法的リスクを最小限に抑えるよう設計されています。
本テンプレートは、商法に基づく匿名組合契約の基本構造を踏まえながら、ソーシャルレンディング特有の仕組みである「投資条件の選択」や「複数投資家による同一案件への出資」など実務的な観点を盛り込んでいます。出資金の取扱い、事業の遂行方法、利益及び損失の分配方法、配当の方法、清算手続き等について詳細に規定し、投資家保護と事業の円滑な運営の両立を図っています。
特に、リスク分担や責任財産の限定、個人情報の取扱いなど重要条項も網羅し、トラブル発生時の対応についても明確に定めています。管轄裁判所の規定も含め、実務上必要な条項を漏れなく盛り込んだ実用性の高い契約書です。
ソーシャルレンディングプラットフォームの立ち上げや既存契約書の見直しをお考えの事業者様に最適なテンプレートとなっております。必要に応じて貴社の事業モデルに合わせてカスタマイズしてご利用いただけます。
〔条文タイトル〕
第1条(本契約の性質)
第2条(事業内容等)
第3条(投資条件の選択)
第4条(契約の単位及び構成)
第5条(出資)
第6条(事業の遂行)
第7条(投資リスク)
第8条(営業者の報酬)
第9条(遅延損害金)
第10条(利益及び損失)
第11条(配当)
第12条(出資金の返還)
第13条(会計及び報告)
第14条(匿名組合員の質問・検査権)
第15条(本事業の終了・清算)
第16条(責任財産限定特約等)
第17条(譲渡)
第18条(個人情報等)
第19条(協議事項)
第20条(管轄裁判所)
【2】逐条解説
第1条(本契約の性質)
この条項では本契約が商法上の匿名組合契約であることを明確にしています。また、営業者が他の投資家とも別個の匿名組合契約を締結する可能性があることと、それらの契約は相互に独立していることを規定しています。これにより多数の投資家から資金を集めるソーシャルレンディングの基本構造を確立しています。
第2条(事業内容等)
事業の具体的内容を規定する条項です。営業者が借入希望者と金銭消費貸借契約を締結し、その貸付債権から収益を得る事業であることを明示しています。また、本事業が営業者の単独事業であり、匿名組合員は事業執行権を持たないことなど、匿名組合契約の本質的特徴を規定しています。
第3条(投資条件の選択)
匿名組合員が投資条件(開始時期、借入希望者の信用、貸付利率、返済期間等)を選択できる仕組みを規定しています。これはソーシャルレンディング特有の条項で、投資家が自分のリスク許容度に合わせた案件を選べる柔軟性を提供しています。
第4条(契約の単位及び構成)
投資条件ごとに一つの匿名組合が組成されること、契約内容の一部は共通であることを規定しています。また、同一の投資条件を選択した複数の匿名組合員が同一の匿名組合に出資することへの同意も含まれており、プラットフォームの効率的運営を可能にしています。
第5条(出資)
投資受付期間や出資方法、余剰出資金の取り扱いなど、出資に関する実務的な手続きを規定しています。特に余剰出資金の自動承継と拒絶の仕組みは、資金の効率的運用を図るソーシャルレンディング特有の規定です。
第6条(事業の遂行)
営業者による事業遂行の具体的方法を規定しています。借入希望者の探索・募集、貸付の実行、条件の柔軟性、共同貸主としての貸付、債権回収方法など、ソーシャルレンディング事業の核心部分を詳細に定めています。匿名組合員の事業関与禁止も明記されています。
第7条(投資リスク)
投資リスクに関する免責事項を規定しています。営業者は事業の結果や収益について保証しないこと、匿名組合員はリスクを負担すること(ただし出資金額を限度とする)、投資判断は匿名組合員自身の責任で行うことなどが明記されています。
第8条(営業者の報酬)
営業者が受け取る報酬の計算方法と支払時期を規定しています。貸付金残高に一定率を乗じた金額を報酬として本財産から受け取る仕組みが定められています。
第9条(遅延損害金)
契約上の支払義務の履行遅延に対する遅延損害金(年14%)について規定しています。これは匿名組合員、営業者双方に適用される条項です。
第10条(利益及び損失)
事業の損益計算方法と匿名組合員の利益分配・損失負担について規定しています。収益と費用の項目を詳細に列挙し、匿名組合員は利益の全額分配を受け損失全額を負担することを定めていますが、損失負担は出資金額を限度としています。
第11条(配当)
利益の配当方法と時期を規定しています。会計単位末日から5営業日以内に出資比率に応じて配当を行うこと、累積損失がある場合の充当方法、配当にかかる費用負担などが定められています。
第12条(出資金の返還)
出資金の返還時期と方法について規定しています。事業終了時の返還に加え、事業継続中も貸付債権の元本返済に見合う出資金の返還が適宜行われる仕組みを定めています。
第13条(会計及び報告)
会計単位の設定、会計帳簿の作成・保管、会計報告書・事業報告書の開示などについて規定しています。また、借主の匿名性確保のため、借主特定情報は報告しないことも明記されています。
第14条(匿名組合員の質問・検査権)
匿名組合員の質問権と商法上の検査権について規定しています。会計報告書等受領後の質問権と、営業年度終了時の財産状況検査権が認められています。
第15条(本事業の終了・清算)
契約終了事由と清算手続きについて規定しています。自動終了事由と解除事由を詳細に列挙し、終了後の財産処分方法、損益分配、残余財産の分配方法などが定められています。
第16条(責任財産限定特約等)
匿名組合員の債権は本事業に関する責任財産のみを引当てとし、営業者のその他の財産に対して責任追及できないことを規定しています。強制執行・保全手続きの制限や債務免除についても定められています。
第17条(譲渡)
契約上の地位や権利義務の譲渡制限について規定しています。匿名組合員は営業者の事前同意なく譲渡等できませんが、営業者は匿名組合員に不利にならない範囲で譲渡等が可能です。
第18条(個人情報等)
個人情報・企業情報の取扱いについて規定しています。営業者は法令遵守と適正な取扱い・保護に努める義務を負います。
第19条(協議事項)
契約に定めのない事項は当事者間で協議して解決することを規定しています。
第20条(管轄裁判所)
紛争発生時の管轄裁判所を規定しています。第一審の専属的合意管轄裁判所が明記されています。
この契約書は、ソーシャルレンディング事業の全体構造と当事者間の権利義務関係を体系的に規定し、法的リスクを最小限に抑えるよう設計されています。