【1】書式概要
この契約書は、セラピストと施設運営者の間で結ぶ業務委託の取り決めを明文化するものです。マッサージサロンやエステサロン、整体院、鍼灸院などでセラピストを業務委託として迎える際に必要となる重要な書類となります。
近年、美容・健康業界では従業員として雇用するのではなく、専門技術を持つセラピストと業務委託契約を結ぶケースが増えています。この契約形態により、施設側は人件費の固定化を避けながら優秀な人材を確保でき、セラピスト側も自由度の高い働き方を実現できます。
この契約書テンプレートは、改正民法にも対応しており、報酬の支払い方法から秘密保持、競業避止まで、実務で起こりうる様々な場面を想定した条項を網羅しています。新規開業時はもちろん、既存の口約束での取り決めを正式な契約書に変更したい場合にも活用いただけます。Word形式での提供となりますので、お客様の業態に合わせて自由に編集・カスタマイズが可能です。
施設名や報酬額、契約期間など、角括弧で囲まれた部分を入力するだけで、すぐにお使いいただける実用的な書式です。トラブル防止と円滑な業務運営のため、ぜひご活用ください。
【2】条文タイトル
第1条(契約の目的) 第2条(業務内容) 第3条(契約期間) 第4条(報酬) 第5条(業務遂行の方法) 第6条(設備・器具等) 第7条(研修・講習) 第8条(秘密保持) 第9条(競業避止) 第10条(知的財産権) 第11条(損害賠償) 第12条(契約の解除) 第13条(反社会的勢力の排除) 第14条(個人情報保護) 第15条(保険) 第16条(譲渡禁止) 第17条(契約の変更) 第18条(完全合意) 第19条(分離可能性) 第20条(準拠法) 第21条(管轄裁判所) 第22条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(契約の目的)
この条文は契約全体の方向性を示す大切な部分です。施設運営者とセラピストが、なぜこの契約を結ぶのかという根本的な理由を明確にしています。例えば「○○マッサージサロンで、リンパドレナージュの専門技術を持つセラピストにサービス提供をお願いしたい」といった具体的な目的を記載することで、後々の解釈の違いを防げます。
第2条(業務内容)
セラピストが実際に行う仕事の範囲を詳しく決めています。単にマッサージをするだけでなく、カウンセリングから片付けまで含めることで、お客様満足度の向上と施設運営の円滑化を図れます。アロマセラピーを専門とするセラピストなら「精油の選定とブレンド」、整体師なら「姿勢改善のアドバイス」など、専門性に応じた業務を追加できます。
第3条(契約期間)
契約がいつからいつまで有効なのかを明確にする重要な条項です。自動更新の仕組みを設けることで、毎年契約書を作り直す手間を省けます。例えば、新人セラピストの場合は最初の3ヶ月を試用期間として短期契約にし、その後は1年契約に変更するといった使い方も可能です。
第4条(報酬)
お金に関わる最も重要な部分です。時給制、歩合制、または両方の組み合わせなど、業界の実情に合わせて設定できます。例えば「基本時給2000円+売上の30%」といった設定にすることで、セラピストのモチベーション向上と施設の収益確保を両立できます。支払日を明確にすることで、資金繰りの予定も立てやすくなります。
第5条(業務遂行の方法)
業務委託契約の核心部分です。セラピストは従業員ではなく独立した事業者として働くことを明確にしています。ただし、お客様のサービス品質を保つため、必要に応じて相談できる体制も整えています。例えば、新しい施術メニューを導入する際は事前に相談するといった運用が考えられます。
第6条(設備・器具等)
施設の設備や道具をどう使うかのルールです。一般的には施設側が基本的な設備を用意し、セラピスト個人の特殊な道具は持参してもらうパターンが多いでしょう。例えば、ホットストーンセラピーを行う際の専用ストーンは個人持参、ベッドやタオルは施設提供といった分担ができます。
第7条(研修・講習)
技術向上のための勉強会や研修についての取り決めです。新しい施術法の講習会費用を誰が負担するかなど、事前に決めておくことでトラブルを避けられます。月1回の技術研修会を開催し、参加者には特別手当を支給するといった制度設計も可能です。
第8条(秘密保持)
お客様の個人情報や施設の営業秘密を守るための重要な条項です。特に美容・健康業界では、お客様の体の悩みや健康状態といったデリケートな情報を扱うため、厳格な管理が求められます。例えば、有名人のお客様がいる場合の情報管理などは特に注意が必要です。
第9条(競業避止)
セラピストが独立して競合店を開いたり、お客様を引き抜いたりすることを制限する条項です。ただし、職業選択の自由を過度に制限しないよう、地域や期間を合理的な範囲に設定することが大切です。例えば「半径2km以内で同業種の営業を2年間禁止」といった具体的な設定が考えられます。
第10条(知的財産権)
セラピストが考案した新しい施術法やマニュアルの権利について定めています。施設の設備や環境を使って開発されたものは施設に帰属するという考え方です。例えば、施設独自のオリジナルマッサージ技法を開発した場合、その権利は施設が持つことになります。
第11条(損害賠償)
万が一、お客様にケガをさせてしまった場合などの責任について明確にしています。基本的にはセラピスト個人の責任ですが、施設側の指示が原因の場合は施設も責任を負う仕組みになっています。実際に施術中の事故が起こった際の対応手順も併せて整備しておくと良いでしょう。
第12条(契約の解除)
契約を途中で終了させる場合の条件を定めています。お互いに改善の機会を与えた上で、それでも問題が解決しない場合の最終手段です。例えば、遅刻を繰り返すセラピストに対して、注意書を出してから1ヶ月の改善期間を設け、改善されない場合は契約解除といった段階的な対応が可能です。
第13条(反社会的勢力の排除)
健全な事業運営のために必要不可欠な条項です。美容・健康業界でも、この種の勢力との関わりを完全に排除することで、お客様に安心してサービスを受けていただける環境を作ります。
第14条(個人情報保護)
お客様の個人情報を適切に管理するための規定です。予約システムの管理やカルテの保管方法など、具体的な運用方法も含めて整備することが重要です。特に健康に関する情報は要配慮個人情報として、より厳格な管理が求められます。
第15条(保険)
施術中の事故に備えた保険加入についての条項です。セラピスト向けの賠償責任保険は年間数万円程度で加入でき、万が一の際の安心につながります。施設側でも施設賠償責任保険に加入することで、二重の安全網を構築できます。
第16条(譲渡禁止)
契約上の権利や義務を勝手に他人に移すことを禁止する条項です。例えば、セラピストが友人に仕事を代わってもらうといったことは、施設側の承諾なしにはできません。お客様の安全と信頼を守るための大切な取り決めです。
第17条(契約の変更)
契約内容を変更する際は、必ず書面で合意することを定めています。口約束での変更は後々トラブルの元になりやすいため、小さな変更でも文書に残すことが重要です。報酬の変更や業務内容の追加などは特に注意が必要です。
第18条(完全合意)
この契約書がすべての約束事を含んでいることを確認する条項です。契約書作成前の口約束や別の書類での約束は、この契約書の内容が優先されることを明確にしています。
第19条(分離可能性)
契約書の一部が無効になっても、他の部分は有効であることを定めています。例えば、競業避止の期間が長すぎて無効と判断されても、他の条項は引き続き有効であるという安全装置の役割を果たします。
第20条(準拠法)
この契約には日本の法律が適用されることを明確にしています。国際的な取引でない限り、通常は日本法が適用されますが、明記することで解釈の明確化を図れます。
第21条(管轄裁判所)
万が一、裁判になった場合の裁判所を事前に決めておく条項です。施設の所在地を管轄する裁判所を指定することが一般的で、遠方のセラピストも含めて事前に合意しておくことでトラブル解決をスムーズにできます。
第22条(協議事項)
契約書に書かれていない問題が起こった場合や、解釈に迷った場合は、お互いに話し合って解決することを約束する条項です。裁判ではなく、まずは当事者同士の話し合いで解決を図る姿勢を示しています。
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