【1】書式概要
この契約書は、百貨店やデパート、大型商業施設内で店舗スペースを借りて商品販売を行う際に必要となる重要な書式です。いわゆる「ケース貸し」と呼ばれる商業形態において、施設運営者と出店者の間で交わされる契約関係を明確に定めています。
近年の商業施設では、多様な専門店が一つの建物内で営業することが一般的となっており、この契約書はそうした現代的な商業環境に対応した内容となっています。特に改正民法にも対応しており、最新の制度変更を反映した安心できる書式として活用いただけます。
実際の使用場面としては、アパレルショップ、雑貨店、化粧品店、宝飾店、時計店などの専門店が百貨店内に出店する際や、食品売場での惣菜店、菓子店、茶葉店などの出店時に使用されます。また、家具店、電化製品店、スポーツ用品店、書籍店なども同様の契約形態で営業することが多く、幅広い業種での活用が可能です。
この書式はWord形式で提供されているため、パソコンで簡単に編集が可能です。会社名や店舗名、契約期間、料金設定など、個別の事情に応じて自由に修正できるため、様々な業種や規模の店舗運営に対応できます。契約条項も実務で頻繁に問題となるポイントを網羅しており、初めて商業施設に出店される方から経験豊富な事業者まで、安心してご利用いただけます。
【2】条文タイトル
第1条(ケース貸し) 第2条(契約期間) 第3条(信用保持) 第4条(対価) 第5条(設備・人件費の負担) 第6条(従業員) 第7条(包装紙) 第8条(商品の販売) 第9条(売場の変更等) 第10条(売場への立入り) 第11条(名義の使用等) 第12条(契約上の地位移転等の禁止) 第13条(反社会的勢力の排除) 第14条(中途解約) 第15条(契約解除) 第16条(契約終了) 第17条(商品の滅失等) 第18条(商品等保険金) 第19条(借地借家法の不適用) 第20条(合意管轄)
【3】逐条解説
第1条(ケース貸し)
この条項は契約の基本的な枠組みを定めています。出店者は施設運営者の監督下で、定められた売場において商品販売を行うことになります。例えば、百貨店の3階婦人服売場の一角でアクセサリーショップを営業する場合、百貨店側が提供するショーケースや照明設備を使用して販売活動を行うことになります。
第2条(契約期間)
契約の有効期間を明確に定める条項です。通常は1年から3年程度の期間で設定されることが多く、双方の合意があれば更新可能としています。季節商品を扱う店舗では短期間の契約も珍しくありません。
第3条(信用保持)
出店者の販売活動がすべて施設運営者の名義で行われることから、施設全体の信用に影響を与えないよう注意義務を課しています。接客態度や商品品質の管理が重要となります。
第4条(対価)
売上に応じた料金体系を定めています。一般的に売上高の10%から30%程度が設定されることが多く、現金販売だけでなくクレジットカード決済や商品券利用分も含まれます。振込手数料は出店者負担となっています。
第5条(設備・人件費の負担)
基本的な店舗設備は施設側が提供しますが、販売に特化した器具や人件費は出店者が負担することを明確にしています。例えば、宝飾店であれば専用の拡大鏡や計量器などは出店者が用意します。
第6条(従業員)
出店者が雇用した従業員であっても、施設全体の統一感を保つために同じ制服やバッジの着用を義務付けています。お客様から見ると施設の一部として認識されるための重要な規定です。
第7条(包装紙)
販売時の包装材料は施設側が提供する統一されたものを使用し、その費用は出店者が負担します。ブランドイメージの統一と顧客満足度の向上を図る目的があります。
第8条(商品の販売)
販売商品の範囲は施設側が定めますが、具体的な仕入れや品質管理、価格設定は出店者の責任となります。ただし、施設の方針に反する場合は変更を求められることがあります。
第9条(売場の変更等)
施設の運営方針により、従業員の配置や売場レイアウトの変更が必要となった場合、出店者は指示に従う義務があります。リニューアル工事や他テナントとの調整が必要な場合によく発生します。
第10条(売場への立入り)
セキュリティや信用保持のため、施設側職員が売場に立ち入ることがある旨を定めています。棚卸作業や清掃時間の管理などで必要となることがあります。
第11条(名義の使用等)
仕入れ時には出店者自身の名義を使用し、販売時の責任も出店者が負うことを明確にしています。これにより責任の所在を明確化し、トラブルを防止します。
第12条(契約上の地位移転等の禁止)
出店者が勝手に契約を第三者に譲渡したり、業務を他社に委託したりすることを禁止しています。施設側の承諾なしに運営者が変わることを防ぐ重要な規定です。
第13条(反社会的勢力の排除)
現代の商業契約では必須となっている条項で、暴力団等の反社会的勢力との関わりを完全に排除しています。上場企業や大手企業では特に重要視される内容です。
第14条(中途解約)
契約期間中であっても、2か月前の予告により双方の合意があれば解約可能としています。事業環境の変化に対応できる柔軟性を持たせています。
第15条(契約解除)
出店者側に重大な違反があった場合、施設側が即座に契約を解除できる条件を定めています。信用毀損行為や指示違反などが対象となります。
第16条(契約終了)
契約終了時の精算や撤去に関する手続きを定めています。未払い金がある場合は設備の持ち出しを制限し、完全な精算後に撤去することを義務付けています。
第17条(商品の滅失等)
店舗内で商品に損害が発生した場合、施設側に故意や重大な過失がない限り責任を負わないことを明確にしています。通常の管理範囲内での事故は出店者の負担となります。
第18条(商品等保険金)
施設全体にかけられた保険の保険金について、出店者は請求権を持たないことを確認しています。個別の商品保険は出店者が別途加入する必要があります。
第19条(借地借家法の不適用)
この契約は単純な賃貸借ではなく、借地借家法の適用を受けないことを相互に確認しています。これにより契約更新や立退きに関する特別な保護は適用されません。
第20条(合意管轄)
契約に関する紛争が発生した場合の裁判所を事前に定めています。通常は施設所在地の地方裁判所が指定され、迅速な解決を図ることができます。
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