【1】書式概要
このテンプレートは、クラウドサービス(SaaS)提供事業者が顧客との間で締結するライセンス契約書として、実務で即活用できる完全なひな形です。改正民法に対応しており、法的リスクを最小限に抑えつつ、ビジネスを円滑に進められるよう配慮された内容となっています。
本テンプレートは、サービス提供の基本条件から知的財産権、データの取扱い、セキュリティ対策、料金体系、SLA(サービスレベル合意)まで網羅し、クラウドビジネス特有の課題に対応します。契約書本文に加え、サービス仕様書、料金表、SLAの別紙もセットになっており、カスタマイズしやすい形式で提供します。
特に、利用者データの取扱い、セキュリティ対策、障害対応など、クラウドサービス特有の重要事項について詳細な規定を設けています。また、反社会的勢力の排除や契約終了後のデータ処理についても明確に定め、トラブルを未然に防ぐ構成になっています。
クラウドサービス事業の立ち上げや契約書の見直しを検討されている事業者様に最適なテンプレートです。社内の法務リソースが限られている企業でも、このテンプレートを基に、自社のサービス内容に合わせて必要な調整を加えるだけで、専門的な契約書を短時間で作成できます。
〔条文タイトル〕
第1条(定義)
第2条(契約の成立)
第3条(ライセンスの許諾)
第4条(利用環境の整備)
第5条(サービスの提供)
第6条(利用料金)
第7条(ユーザーアカウント)
第8条(利用者の義務)
第9条(データの取扱い)
第10条(サービスレベル)
第11条(メンテナンス)
第12条(サポート)
第13条(障害対応)
第14条(免責事項)
第15条(知的財産権)
第16条(秘密保持)
第17条(個人情報保護)
第18条(契約期間)
第19条(契約解除)
第20条(反社会的勢力の排除)
第21条(契約終了後の処理)
第22条(権利義務の譲渡禁止)
第23条(存続条項)
第24条(準拠法及び管轄裁判所)
第25条(協議事項)
【2】逐条解説
第1条(定義)
本条は契約書内で使用される重要な用語の定義を明確にしています。「本サービス」「利用者データ」「ユーザーアカウント」「利用環境」「知的財産権」などの基本的な用語を定義することで、契約解釈の曖昧さを排除し、後の条項での参照を容易にしています。
第2条(契約の成立)
契約成立の要件と手続きを規定しています。利用者が契約内容に同意し申込書を提出、提供者がこれを承諾することで契約が成立するプロセスを明確化しています。また、提供者が申込みを承諾しない場合の要件も列挙し、契約関係の透明性を確保しています。
第3条(ライセンスの許諾)
提供者が利用者に付与する権利の範囲と制限を定めています。非独占的・譲渡不可能なライセンスを条件付きで許諾する内容となっており、第三者への譲渡・貸与・再許諾を禁止することでライセンス管理の厳格化を図っています。
第4条(利用環境の整備)
サービス利用に必要な環境整備の責任が利用者にあることを明確にしています。利用環境に起因する問題について提供者の免責を規定し、推奨環境の指定権限も定めることで、適切なサービス提供の基盤を確保しています。
第5条(サービスの提供)
提供者のサービス提供義務と品質基準を定めています。善管注意義務を基準としつつ、サービス機能の変更権限も確保し、重要な変更時の通知義務も規定して利用者保護とサービス改善のバランスを取っています。
第6条(利用料金)
料金体系、支払い条件、遅延損害金、料金変更手続きなど、金銭的側面を詳細に規定しています。特に年14.6%の遅延損害金や3ヶ月前の料金変更通知など、具体的な数値を示すことで明確性を高めています。
第7条(ユーザーアカウント)
アカウント管理の責任と義務を定めています。管理責任者の設置やパスワード管理など具体的な義務を課すとともに、不正使用に関する提供者の免責を明確にしています。
第8条(利用者の義務)
サービス利用における基本的な遵守事項と禁止行為を詳細に列挙しています。知的財産権侵害、不正アクセス、リバースエンジニアリングなどの禁止を明確化し、適正利用を確保する重要な条項となっています。
第9条(データの取扱い)
利用者データの所有権が利用者に帰属することを明確にしつつ、提供者による利用目的の限定、セキュリティ対策の実施義務、第三者開示の制限などを規定し、データガバナンスの基本方針を示しています。
第10条(サービスレベル)
SLA(サービスレベル合意)の基本枠組みを規定しています。サービス稼働率、障害対応時間などの品質指標と、SLA未達時の補償に関する基本的な考え方を示しています。
第11条(メンテナンス)
定期・緊急メンテナンスの実施に関する基本ルールを規定しています。メンテナンス中のサービス停止に関する免責も明確化し、安定的なサービス提供のための保守作業の法的位置づけを確保しています。
第12条(サポート)
技術サポートの提供内容、方法、時間帯を具体的に規定しています。サポート範囲を明確化することで、利用者の期待と提供者の義務のバランスを取っています。
第13条(障害対応)
障害発生時の対応プロセスと責任範囲を規定しています。速やかな復旧努力義務、重大障害時の通知・報告義務などを明確にし、障害発生時の両者の権利義務関係を整理しています。
第14条(免責事項)
提供者の責任範囲と免責される事項を明確に列挙しています。特に損害賠償の上限を月額利用料相当額とすることで、リスク管理の予見可能性を高めています。
第15条(知的財産権)
本サービスに関する知的財産権の帰属と保護を規定しています。権利が提供者または許諾者に帰属することを明確にし、利用者による権利侵害禁止を規定しています。
第16条(秘密保持)
秘密情報の取扱いと保護義務を規定しています。秘密情報の定義、除外される情報の範囲、義務の存続期間(契約終了後3年間)などを明確にし、情報管理の基本ルールを確立しています。
第17条(個人情報保護)
個人情報保護法の遵守義務と具体的な安全管理措置を規定しています。法令遵守、安全管理措置、監督義務などを明確にし、個人情報保護の基本方針を示しています。
第18条(契約期間)
契約の有効期間と自動更新の仕組みを規定しています。1年間の有効期間と30日前までの異議がない場合の自動更新の仕組みにより、継続的なサービス提供の法的基盤を確保しています。
第19条(契約解除)
契約解除の要件と手続きを規定しています。債務不履行による解除と即時解除事由を明確に区別し、解除権行使の条件を整理しています。
第20条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係遮断を明確に規定しています。表明保証と具体的な確約事項を列挙し、コンプライアンス面での基本方針を示しています。
第21条(契約終了後の処理)
契約終了時のデータ処理と継続義務を規定しています。30日間のデータ保持、提供、削除のプロセスを明確にし、契約終了後も一定の義務が存続することを規定しています。
第22条(権利義務の譲渡禁止)
契約上の権利義務の第三者への譲渡や担保提供を禁止しています。当事者間の信頼関係を基礎とする契約の性質を反映した条項です。
第23条(存続条項)
契約終了後も効力を有する条項を明示しています。免責、知的財産権、秘密保持、個人情報保護などの重要条項が契約終了後も存続することを明確にしています。
第24条(準拠法及び管轄裁判所)
紛争解決の基本ルールを定めています。日本法を準拠法とし、特定の裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所と指定しています。
第25条(協議事項)
契約に定めのない事項や解釈の疑義が生じた場合の対応方針を規定しています。誠実協議と信義誠実の原則に基づく解決を基本方針としています。