【1】書式概要
「飲食代金に関する示談書」について
こちらの示談書は、飲食店でのトラブル、特に予想以上の高額請求(いわゆる「ボッタクリ」)があった際に、店舗側と交渉して合意した金額を書面化するための書類です。繁華街や観光地の飲食店で「メニューと違う金額を請求された」「予想外の高額請求をされた」といったトラブルに遭遇した際の解決手段として活用できます。
この示談書は、トラブルが発生した経緯、合意した支払金額、今後の権利関係などを明確にして、双方の理解を文書化することで、後日のトラブル防止にも役立ちます。特に旅行先や見知らぬ土地での飲食トラブルの際には心強い味方となるでしょう。
店舗側にとってのメリット
この示談書は利用客だけでなく、店舗経営者にとっても大きなメリットがあります。まず、代金トラブルが長引くと営業時間や人員の損失につながりますが、この書面で迅速に解決できます。
また、SNSなどでの風評被害リスクを軽減し、秘密保持条項により店舗の評判を守ることができます。さらに、示談書に基づく合意金額を確実に回収できるため、未払いリスクが減少します。
実際、私が知る繁華街の店舗では、外国人観光客とのトラブル解決に類似の書面を活用し、スムーズな解決と信頼回復に成功しています。地方の観光地でも増加する言語の異なるお客様とのコミュニケーション不足によるトラブルを、こうした書面で解決するケースが増えています。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(経緯)
第3条(合意金額及び支払方法)
第4条(権利義務の確認)
第5条(清算条項)
第6条(免責事項)
第7条(秘密保持)
第8条(契約の変更)
第9条(信義誠実の原則)
第10条(合意管轄)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条文は示談書の目的を明確にしています。飲食店での請求金額トラブルを双方の話し合いで解決するための合意内容を書面化するものであることを明示しています。実際に夜の歌舞伎町や六本木などの繁華街で起きがちな「サービス料が予想外に高額だった」「別途チャージが発生していた」などのトラブルを想定した内容です。店舗側にとっては、合意内容が明確になることで、後日の「言った・言わない」の水掛け論を防止できます。
第2条(経緯)
トラブルが発生した日時、場所、状況を記録する重要な条項です。例えば「2025年5月5日、『居酒屋〇〇』で飲食したところ、10万円の請求があり、予想していた3万円との間に大きな隔たりがあった」といった具体的な事実関係を記入します。店舗側にとっては、事実関係を明確にすることで、誤った情報の拡散を予防する効果があります。
第3条(合意金額及び支払方法)
交渉の結果、最終的に合意した支払金額と支払い方法を規定します。既に一部支払い済みの場合の処理や、領収書の発行についても明記されており、実務的な観点から非常に役立つ条項です。店舗側にとっては、確実な代金回収手段となり、不良債権化を防ぐ効果があります。さらに領収証の発行を明記することで会計上の透明性も確保できます。
第4条(権利義務の確認)
この条項では、示談書に定めた内容以外に権利義務関係がないことを明確にします。店舗側にとっては、後日の「あの時の料理が不味かった」などの理由による返金要求から守られる重要な条項です。実際、料理の質やサービスへの不満から事後的に返金要求をするケースもありますが、この条項でそうした展開を防止できます。
第5条(清算条項)
将来的な請求権を互いに放棄することを明記しています。店舗側にとっては、示談金額以上の代金請求はできなくなりますが、逆に言えば、この金額は確実に回収できるという安心感につながります。特に訪日観光客など、後日の連絡が困難な客層との取引では重要な意味を持ちます。
第6条(免責事項)
合意した金額を支払うことで店舗側の民事責任が免除されることを規定しています。これは店舗にとって大きなメリットです。例えば「高額請求による精神的苦痛」などの損害賠償請求から守られることになります。ただし、悪質な詐欺行為には適用されないという公正さも保たれています。
第7条(秘密保持)
示談内容を外部に漏らさないことを約束する条項です。店舗側にとっては最も重要な条項の一つで、SNSでの拡散やメディア報道などによる風評被害を防ぐ効果があります。今日のネット社会では、一度でも「ボッタクリ店」などとネット上で拡散されると、長期間にわたって営業に影響することがあるため、この条項は店舗の信用を守る重要な役割を果たします。
第8条(契約の変更)
示談内容に変更が必要となった場合の手続きを定めています。店舗側にとっては、例えば分割払いへの変更要請があった場合など、きちんとした手続きを踏むことで会計管理の混乱を防止できます。口頭での変更合意が後に「そんな話はしていない」というトラブルを防ぐ効果もあります。
第9条(信義誠実の原則)
双方が誠実に示談内容を守ることを約束する条項です。店舗側にとっては、客が示談内容を守らなかった場合に法的措置を取る根拠となります。例えば、合意した支払いがされない場合に、この条項を根拠に支払いを求めることができます。
第10条(合意管轄)
万が一示談内容で再度トラブルになった場合の裁判所を指定する条項です。店舗側にとっては、地元の裁判所を指定しておけば、遠方での訴訟対応というコストと手間を省くことができます。特に観光地の店舗では、全国各地からの来客があるため、この条項は実務上非常に重要です。
この示談書は実際に起こりがちな飲食店トラブルに対応するための実用的な書類です。客側、店舗側双方にとって、トラブルを迅速かつ公正に解決し、余計な紛争を避けるための強力なツールとなります。特に店舗側は営業継続への悪影響を最小限に抑えつつ、適正な代金回収を実現できる点で大きなメリットがあります。